10 / 85
10 朝日
しおりを挟む
推しの半裸が朝日を浴びて、とてつもない神々しさを全身から放っているのを目の当たりにして、私は思わず言葉を失ってしまった。
え。何なの神々しいとか、尊いとしか形容のしようのない、この風景。出来ればもう目の奥に、焼き付けておいてしまいたい。
芹沢くんはあまりに暑すぎるエアコンの壊れた部屋を出て、部屋に入った途端すぐに脱いでいたというのに、既に湿ってしまった黒いTシャツを身に付けたくはなかったようで現在半裸だ。そして、私と順番にお風呂に入ってから髪を拭く用の白いタオルを、首に掛けている。
私の推しの尊みが強過ぎて、正視出来ない。けど、事あるごとにチラチラ視界に入ってしまう割れた腹筋が、本当にすごい。
芹沢くん本人にきっとジムに行ってるよねと確認しなくても、身体を鍛えるためのジムには確実には定期的に通っていると思う。良い身体過ぎて、何かと意識するしかない。
もし、私の心にシャッターを押せる機能があるならば、毎秒百枚のスピードで連写して撮り続けたい。待って。でも、もしそれなら動画の方が良いかもしれない。
運悪く元気が出ない時とか私が明るくなりたい時なんかに、いつでも取り出せるようにしておきたい。
あ。そもそもそんな高機能な性能、私の心には最初から搭載されてなかった。写真か動画か悩む時間、なんだか、無駄だった。
慌てて用意したお泊りグッズが入ったトートバックの底に入っているはずの、私のスマホで芹沢くんを撮影したい……ううん。ダメダメ。
私が所属する『芹沢ガール』、彼のファンたちの不文律を思い出す。
芹沢くんは、実は写真嫌いでとても有名なのだ。私たちはそれを知っているので、決して彼にカメラのレンズを向けることはない。
そんなことをすればただ彼の傍に居ることも、許されなくなってしまうから。
芹沢くんはミスターコンの優勝者にもなったというのに、主催者が是非にとお願いしても必要枚数以上の撮影を、絶対に拒否したという剛の者だ。
私がもし、そんなコンテストの参加することになったとしたら何枚も撮って貰って、その中で一番良いものを選ぶ。出来るだけ良く見せたいので、奇跡の写真を撮れるまで何時間も粘ってしまうかもしれない。
けど、芹沢くんはそんな行き当たりばったり、一期一会の写真だったとしても、他の参加者より群を抜いて格好良かったことだけは付け加えておきたい。
万が一にもデータが消えてしまわないように、ミスターコンの運営サークルのホームページから保存した画像のコピーは、永久保存版だ。
ミスターコンに出る前から、もう既にミスター優鷹と影で呼ばれていたりしたので、もし芹沢くんが出て居なかった場合、芹沢くんが真ミスターで優勝者が偽ミスターとか呼ばれたりして、よく分からないイケメン同士の要らぬ争いを引き起こしそう。
なので、私の推しの芹沢くんが名実ともにミスターで良かった。これって全部、私の妄想でしかないけど。
私は彼のファンの一人、芹沢ガール。自称をする時もあるし、周囲だって私のことをそのように認識している。
あれだけ、いつも芹沢くん芹沢くん言っていたら、それはもう無理もない話で。もし、テレビでしか観れないはずの推しが、大学で同級生だったならとご想像頂きたい。同じ大学に居るというだけで、浮かれるしかない毎日だったのだ。
「水無瀬さん……? ね。どうする? 朝ごはん」
朝日に照らされた推しの半裸姿に惚けてキュン死寸前だったところ、隣を歩いていた芹沢くんは何回か私に話し掛けてくれていたのか。返事の帰ってこない私に、とても不思議そうだ。
え。もう、何度でも言いたい。朝日に照らされる半裸の推し、最高……私なんかに話掛けてるの絶対おかしい。勿体ない気がする。
ていうか、私たち付き合う……んだよね? これから、付き合う……んだよね?
やばい。理解不能過ぎて、過呼吸起こしそう。
え。何なの神々しいとか、尊いとしか形容のしようのない、この風景。出来ればもう目の奥に、焼き付けておいてしまいたい。
芹沢くんはあまりに暑すぎるエアコンの壊れた部屋を出て、部屋に入った途端すぐに脱いでいたというのに、既に湿ってしまった黒いTシャツを身に付けたくはなかったようで現在半裸だ。そして、私と順番にお風呂に入ってから髪を拭く用の白いタオルを、首に掛けている。
私の推しの尊みが強過ぎて、正視出来ない。けど、事あるごとにチラチラ視界に入ってしまう割れた腹筋が、本当にすごい。
芹沢くん本人にきっとジムに行ってるよねと確認しなくても、身体を鍛えるためのジムには確実には定期的に通っていると思う。良い身体過ぎて、何かと意識するしかない。
もし、私の心にシャッターを押せる機能があるならば、毎秒百枚のスピードで連写して撮り続けたい。待って。でも、もしそれなら動画の方が良いかもしれない。
運悪く元気が出ない時とか私が明るくなりたい時なんかに、いつでも取り出せるようにしておきたい。
あ。そもそもそんな高機能な性能、私の心には最初から搭載されてなかった。写真か動画か悩む時間、なんだか、無駄だった。
慌てて用意したお泊りグッズが入ったトートバックの底に入っているはずの、私のスマホで芹沢くんを撮影したい……ううん。ダメダメ。
私が所属する『芹沢ガール』、彼のファンたちの不文律を思い出す。
芹沢くんは、実は写真嫌いでとても有名なのだ。私たちはそれを知っているので、決して彼にカメラのレンズを向けることはない。
そんなことをすればただ彼の傍に居ることも、許されなくなってしまうから。
芹沢くんはミスターコンの優勝者にもなったというのに、主催者が是非にとお願いしても必要枚数以上の撮影を、絶対に拒否したという剛の者だ。
私がもし、そんなコンテストの参加することになったとしたら何枚も撮って貰って、その中で一番良いものを選ぶ。出来るだけ良く見せたいので、奇跡の写真を撮れるまで何時間も粘ってしまうかもしれない。
けど、芹沢くんはそんな行き当たりばったり、一期一会の写真だったとしても、他の参加者より群を抜いて格好良かったことだけは付け加えておきたい。
万が一にもデータが消えてしまわないように、ミスターコンの運営サークルのホームページから保存した画像のコピーは、永久保存版だ。
ミスターコンに出る前から、もう既にミスター優鷹と影で呼ばれていたりしたので、もし芹沢くんが出て居なかった場合、芹沢くんが真ミスターで優勝者が偽ミスターとか呼ばれたりして、よく分からないイケメン同士の要らぬ争いを引き起こしそう。
なので、私の推しの芹沢くんが名実ともにミスターで良かった。これって全部、私の妄想でしかないけど。
私は彼のファンの一人、芹沢ガール。自称をする時もあるし、周囲だって私のことをそのように認識している。
あれだけ、いつも芹沢くん芹沢くん言っていたら、それはもう無理もない話で。もし、テレビでしか観れないはずの推しが、大学で同級生だったならとご想像頂きたい。同じ大学に居るというだけで、浮かれるしかない毎日だったのだ。
「水無瀬さん……? ね。どうする? 朝ごはん」
朝日に照らされた推しの半裸姿に惚けてキュン死寸前だったところ、隣を歩いていた芹沢くんは何回か私に話し掛けてくれていたのか。返事の帰ってこない私に、とても不思議そうだ。
え。もう、何度でも言いたい。朝日に照らされる半裸の推し、最高……私なんかに話掛けてるの絶対おかしい。勿体ない気がする。
ていうか、私たち付き合う……んだよね? これから、付き合う……んだよね?
やばい。理解不能過ぎて、過呼吸起こしそう。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
273
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる