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02 偶然

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 そりゃあ、私だってここで明るく声を掛けて「えー! マックロイさんって、あの集合住宅に住んでるんですか!? 私もなんです! 同じ階!? すっごく偶然ですね★」と、わざとらしく近所に住んでますアピールしてしまえば、良いことだって理解している。

 男性の集まる冒険者ギルドの受付を仕事にしておいて、何言ってるんだって言われそうだけど、実際のところ私は男性と話すのがあまり得意ではない。仕事の話だと淀みなく話せるけど、異性だと思うと上手く話せないし自分本当に不器用なんです。

 マックロイさんの中ではかなりヤバい女と認識されていることを理解しつつ、こうして彼を後ろを尾けているかのようにして同じ道を進むしかない。

 マックロイさんは集合住宅の入り口で、後ろを振り返り私の姿を確認した。いかにも不審者を見るような鋭い視線を向けられた。

 ……ええ。もう、なんでも良いんです。変な女が居ると憲兵に通報されても、私は本当に貴方と同じ階に住んでいるだけの住人なんです。むしろ間接的に私の言いたいことが伝わるので、その方が良いかもしれないまで思えて来た。

 そして、集合住宅にひとつしかない階段を私は上がり始めた。

 カツンカツンとゆっくり靴音がして、部屋にある三階へと上がる。

 そして、私はこの辺で尿意が込み上げて来た。今すぐ、トイレに駆け込みたい。寒くなった日には、たまにこういう時があった。もう少しでトイレに駆け込める私の部屋のすぐ近くで、良かった。

 マックロイさんは部屋に入る前にも、チラッと後ろを確認し、私の姿を確認したようだった。

 ええ。もうヤバい女と思って頂いて、本当に大丈夫です。私もすぐに部屋に入ってトイレに行きたいんで、貴方も早く部屋に入ってください。

 私は彼がパタンと扉を閉めた瞬間に、自分の部屋へと向かって足早に急ぎ始めた。

 そして、彼の部屋の前を通り抜ける瞬間、グイッと強い力で腕を取られて、私はマックロイさんの部屋に引き込まれた。

「……え?」

 私は玄関の壁側にまで押し付けられて詰め寄られ、マックロイさんの整った顔はすぐ近くにあった。

「え? じゃねえ。俺の部屋にまで尾けて来るんだったら、一回は訪ねて来いよ」

「へ……? ええ!?」

 完全に付き纏いの迷惑ファンである認識はされていたのは、間違いなくその通りのようだった……けど、訪ねて……? 一回は訪ねて来いよ……?

「お前。一体。なんなんだよ! たまーに部屋まで尾けて来ると思ったら、何もせずに帰りやがって。何か言えよ。何か俺に言いたいことあるから、ここまで来てるんじゃねえの?」

「なななな……ない……です」
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