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08 私の部屋

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 恐るべし。惚れ薬。これを売った罪は、麻薬より深いかもしれない。魔女は本当に、反省して。

 人の心を操るなんて、いけないことだ。とはいえ、あの色っぽい未亡人は、悪いことだとわかりつつやりそうなのが、本当にタチが悪い。

 団長も自分を取り戻しただろうし、もう安心だと息をついた時は、束の間。

「ななな、何してるんですか! 団長!! 窓から不法侵入、現行犯ですよ!!」

 窓から大きな黒い人影があったと思ったら、帰ったと思ったはずの団長だった!

 警備兵呼ばなきゃって、この人王都の治安維持を、受け持つ騎士団の団長だったわー!!

 つまり、一番犯罪犯しちゃいけない人!!

 私は慌てて窓を開けて、団長の手を引いてからカーテンを閉めた。ああ。誰も見ていませんように。

「ななな、何やってるんですか!! 不法侵入で即逮捕案件ですよ!!」

「俺が釈放の書類にサインしたら、それで終わりだ。書類も燃やしてしまえば、何の問題もない」

「え……完全に越権行為じゃないですか……?」

 流石にそれはやり過ぎではないかと私が首を傾げれば、団長は肩を竦めて首を横に振った。

「そんな訳ないだろ。俺の役職思い出せ」

「王都騎士団の団長です」

「つまり、現行犯であれば、裁判所に引き渡す前に俺の法律が適用される。ローラの家に侵入したことは、不問にしよう」

「不問って……ここって、私の家なんですけど……」

「しかし、狭いな……」

 戸惑う私の部屋を見回して団長が言ったので、だらだらし過ぎて汚い部屋を少しでも片付けようという気力もなかった。

「はいはい。すみませんね。働き始めの新人なんてこんなものですよ。文句言うなら、給料上げてください」

 思いもよらぬ上司の来訪に私はお茶でも入れますかとキッチンに行きかけたところで片腕を掴まれて、驚いて背の高い団長の顔を見上げた。

「だんちょう……?」

「お前。今日、無断欠勤だぞ。いつまで休むつもりだ」

「え?! すみません!! 引きこもっていると、時間の感覚なくしちゃって……」

 なんということでしょう。私。既に上書きするだけの役目を終えて、職場に復帰しなきゃいけなかった!

 自分の責任だし……と、私の様子見に来てくれたルドルフ団長、めっちゃ優しい。しかも、犯罪者にするところだった。本当にごめんなさい。

「おい。なんで、玄関を開けなかった」

「ここは、私の部屋なんで……開けないのは私の勝手です。え? というか、ルドルフ団長……今、私のこと好きじゃないですよね?」

 私は団長の飲んだ惚れ薬の効果って、もしかしてまだ継続してない? と普通に思っただけだ。

 だから、そうじゃないだろうと確認する意味で、自分ではしごく当たり前の流れで聞いた。
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