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第一部
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着替えた私が水着姿で現れた時、二人ともしんとして無言になってすごく恥ずかしくなってしまった。上半身裸で下着姿の春くんは大きな栗色の目をまんまるにしたまま、私を見つめているし、凛太さんに至ってはデッキチェアに腰掛けたまま微動だにしない。端正な顔も相待ってまるで人形みたいだ。
「あの、何か言って……ください」
私が恥ずかしそうに言うと、二人は我に帰ったようにはっと息を飲んで、やっと動いてくれた。
「えっと、透子、それって誰が選んだの?」
春くんが指差しながら珍しくどもりながら声を出す。
「あの、子竜さんの秘書の綾翔さん……」
「綾翔!? うわ。今度会社行ったらお土産あげよう。あいつ本当に良い仕事するよね」
天に祈りを捧げるように手を合わせる春くんに私はくすくすと笑った。
「大げさだよ」
「大げさ!? 俺はもう、季節外れの女神が舞い降りたんだと思った。写真撮って良い? 良いよね?」
勝手に決めた春くんに私は笑って頷いた。スマホを部屋に取りに行ってくると走り出す。次に私はやっぱり顔を赤くしてこちらを見ている凛太さんに、微笑んだ。
「凛太さん、どうですか?」
「……すごく、可愛いです。最初に見た時天使かと思いました」
凛太さんは口元を手で隠しながら言った。私も何だか照れてしまう。
「女神とか、天使とか、今まで言われたことないです。照れますね……」
「透子さんは……その、僕にとっては……」
言いにくそうに凛太さんが何を言おうとして私が首を傾げた瞬間、春くんが帰ってきた。
「透子! 撮ろう! もう、画質一番良くしたから、永久保存版で!」
声に振り返ったらカメラを向けて即シャッターの音がして、驚いた私に向かって可愛い笑顔で笑った。
ポーズに注文をつけられつつ、もう容量が無くなったとかで肩を落とした春くんの撮影会が終わったら、プールでひとしきり遊ぶ。
私は春くんと遊びながら、時々凛太さんを見ていたんだけど、じっと椅子に座ったまま私のことを見ていた。手持ち無沙汰だと思うのに、雄吾さんみたいに部屋で何かしていた方が良いんじゃないかな。
スポーツが何でも出来ちゃう春くんが本気の泳ぎをしている間に私は休憩することにして、大きなタオルを棚から取って羽織ると凛太さんの隣に腰掛けた。
「えっと、暇じゃないですか?」
「……僕は透子さんを見ているだけで、満足なので」
凛太さんは何ていうか、色使いが派手な春くんとは違う感じでこなれた風にオシャレだ。今日の水色のセーターも胸元はすこし開いていて綺麗な鎖骨が見えている。
「……やっぱり水はあまり得意じゃないです?」
「抵抗はありますね。お風呂は好きですけど」
「ふふっ、じゃあ温泉は?」
「好きですね。……今度行きます?」
凛太さんの顔が近づいて私は膝を抱えて俯いた。
「……凛太さんのお休みが取れたら」
「約束ですよ?」
確認するように人差し指で私の頬を押した。
「今度出るドラマも決まったんじゃないですか?」
人気俳優である凛太さんはすごーく忙しいはずだ。たまにオフもあるけれど、本を読んでいる私の横で台本を覚えている時も多い。今回の旅行だってかなり無理をしてくれていると思う。
「……大丈夫です。僕の最優先は透子さんなので」
「そう言ってもらえるのは嬉しいですけど、あまり無理しないでくださいね」
「はい、ここでいちゃいちゃしない」
水滴をポタポタ落としながら、間に入ってきた。凛太さんを真面目な顔でじっと見た後、私の方を向いてにこっと微笑む。
「春くん」
「春、お前はプールで遊べるだろ」
「それが? 凛太も泳いだら何の問題もないだろ」
バチバチと火花が散る。もう。なんでこんなことで喧嘩になるんだろ。私はさっと立ち上がると、二人に向かって言った。
「そろそろ夕食だから、私もう着替えてくる、こんなことで喧嘩しないでね」
「透子」
表情がくるくる変わる春くんはしゅんと頭の上の大きなお耳が寝ている。凛太さんはむっとした顔のままだ。
「春くん、凛太さんを挑発しないの。また喧嘩するなら、夜は一人で寝るから」
そうやって二人に言い放つと、私はくるりと背を向けた。このくらい強く言わなきゃきっと聞いてもらえないんだよね。
なんでこの二人、こんなに仲が悪いんだろう?
「あの、何か言って……ください」
私が恥ずかしそうに言うと、二人は我に帰ったようにはっと息を飲んで、やっと動いてくれた。
「えっと、透子、それって誰が選んだの?」
春くんが指差しながら珍しくどもりながら声を出す。
「あの、子竜さんの秘書の綾翔さん……」
「綾翔!? うわ。今度会社行ったらお土産あげよう。あいつ本当に良い仕事するよね」
天に祈りを捧げるように手を合わせる春くんに私はくすくすと笑った。
「大げさだよ」
「大げさ!? 俺はもう、季節外れの女神が舞い降りたんだと思った。写真撮って良い? 良いよね?」
勝手に決めた春くんに私は笑って頷いた。スマホを部屋に取りに行ってくると走り出す。次に私はやっぱり顔を赤くしてこちらを見ている凛太さんに、微笑んだ。
「凛太さん、どうですか?」
「……すごく、可愛いです。最初に見た時天使かと思いました」
凛太さんは口元を手で隠しながら言った。私も何だか照れてしまう。
「女神とか、天使とか、今まで言われたことないです。照れますね……」
「透子さんは……その、僕にとっては……」
言いにくそうに凛太さんが何を言おうとして私が首を傾げた瞬間、春くんが帰ってきた。
「透子! 撮ろう! もう、画質一番良くしたから、永久保存版で!」
声に振り返ったらカメラを向けて即シャッターの音がして、驚いた私に向かって可愛い笑顔で笑った。
ポーズに注文をつけられつつ、もう容量が無くなったとかで肩を落とした春くんの撮影会が終わったら、プールでひとしきり遊ぶ。
私は春くんと遊びながら、時々凛太さんを見ていたんだけど、じっと椅子に座ったまま私のことを見ていた。手持ち無沙汰だと思うのに、雄吾さんみたいに部屋で何かしていた方が良いんじゃないかな。
スポーツが何でも出来ちゃう春くんが本気の泳ぎをしている間に私は休憩することにして、大きなタオルを棚から取って羽織ると凛太さんの隣に腰掛けた。
「えっと、暇じゃないですか?」
「……僕は透子さんを見ているだけで、満足なので」
凛太さんは何ていうか、色使いが派手な春くんとは違う感じでこなれた風にオシャレだ。今日の水色のセーターも胸元はすこし開いていて綺麗な鎖骨が見えている。
「……やっぱり水はあまり得意じゃないです?」
「抵抗はありますね。お風呂は好きですけど」
「ふふっ、じゃあ温泉は?」
「好きですね。……今度行きます?」
凛太さんの顔が近づいて私は膝を抱えて俯いた。
「……凛太さんのお休みが取れたら」
「約束ですよ?」
確認するように人差し指で私の頬を押した。
「今度出るドラマも決まったんじゃないですか?」
人気俳優である凛太さんはすごーく忙しいはずだ。たまにオフもあるけれど、本を読んでいる私の横で台本を覚えている時も多い。今回の旅行だってかなり無理をしてくれていると思う。
「……大丈夫です。僕の最優先は透子さんなので」
「そう言ってもらえるのは嬉しいですけど、あまり無理しないでくださいね」
「はい、ここでいちゃいちゃしない」
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「春くん」
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「透子」
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「春くん、凛太さんを挑発しないの。また喧嘩するなら、夜は一人で寝るから」
そうやって二人に言い放つと、私はくるりと背を向けた。このくらい強く言わなきゃきっと聞いてもらえないんだよね。
なんでこの二人、こんなに仲が悪いんだろう?
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