121 / 152
第一部
慰める
しおりを挟む
「透子、これ美味しいよ」
そう言いながらこの別荘の管理人さん(私は姿を見た事がないんだけど)が作ってくれた夕飯の中の春巻きをお皿に取ってくれる。
「春くんありがとう」
私が微笑みながらお礼をいうと春くんは満足そうに頷いた。テキパキと食べた物を片付けつつ柄が可愛い赤のセーターを腕まくりして私に食べ物を取ってくれる。凛太さんは私が話しかけたら喋るけれど、いつもクッションをしてくれている役の雄吾さんがいないせいか居心地は悪そうだ。
デザートを食べ終えてお茶を飲んでいる時に意を決して切り出した。
「ね、春くん」
「何? 透子」
「どうして春くんは凛太さんにそんなに態度が悪いの? 前に仲良くして欲しいって言ったと思う……相性があるのはもちろんわかっているけど、努力はして欲しい」
いい加減この妙な雰囲気に限界に来ていた私ははっきり言った。理由もわからない事で我慢するのはあんまり好きじゃない。
「……透子」
途方に暮れたように耳をシュンとさせる可愛い春くんに若干絆されそうになった私は心を鬼にして言った。
「凛太さんに喧嘩吹っかけるのは、もうやめて欲しい。年齢は一番若いけれど私の夫の一人なんだからきちんとして欲しい」
春くんは口を尖らせて席を立った。
「ごめん……俺、先に部屋に戻ってる」
「春くんっ……」
私が呼びかけたのにも関わらず春くんは行ってしまう。残された二人はすこしの間沈黙して、凛太さんが言った。
「透子さん、すみません。その、春が突っかかってくるのは僕も悪いんです」
「凛太さん?」
「多分、紅蓮の里での事だと思います……春の問題ですし、僕はこれ以上は言えません。透子さんに怒られたくないので」
ちょっと笑って私を見ると凛太さんは肩を竦めた。
「凛太さん……でも私……」
「行って来てください。僕の順番は……明日なので、明日ゆっくり話しましょう」
私はそれに頷いてから、一度扉の方に向かったんだけど、思い直して凛太さんの隣に立った。凛太さんは端正な顔を不思議そうにすると首を傾げる。
「凛太さん、嫌な思いをさせてごめんなさい」
私はそっと頬にキスをした。その後の顔は見ずに逃げるように扉に向かった。
トントン、と大きな扉を叩く。
「春くん、透子です。開けて」
数秒待ったら春くんが扉を開けてくれた。やっぱりなんだか納得行かない顔をしてむくれているみたいだ。その顔を見上げながら頬を両手で包んだ。
「透子……」
「わかってるよ。春くんが理由もなくそんな事する人じゃないってちゃんとわかっている……私には話せない?」
私を悲しそうに見下ろしてからううん、と首を振った。
「……とにかく入って、ここで話したくない」
その言葉に頷いて部屋に入ると春くんはベッドに座って隣をポンポンと叩いた。素直にその横に腰掛ける。
「……透子、この前に俺が紅蓮の里を居づらくなったのは言ったよね?」
私は春くんの両手に手を乗せながら頷いた。じっと大きな栗色の目が私を見つめている。
「紅蓮の里の社交の場で俺のことをやたらと攻撃して来た奴が居てさ……そいつと凛太は仲良かったんだ。俺もわざわざ攻撃してくる奴のこといちいち覚える程暇じゃないけどさ、あいつと会った時、思い出した……凛太は俺に直接は何も言ってはないけど、そいつと一緒に居たから……思い出すんだ。思い出したくないくらい酷いことも言われたからね」
「春くん」
私はその両手をぎゅっと握った。すこしでも苦しみを小さく出来たら良いのに。
「春くん、ごめんね。事情もわからずに頭ごなしに言い過ぎた……凛太さんにも事情聞いてみるから」
「透子、透子」
じっと私の目を見て、そして顔を近づけてキスを落とした。あやすように触れるキス。きっと言いたかったけど、言えなかったことなんだろうな。
「春くん。大丈夫だよ。不安にならないで。春くんも凛太さんも私の夫で大事で大好きな人なの。出来たらもっと早く事情を聞きたかったけど、そんなことで関係が壊れたりしないよ」
「……俺、傷ついたよ。透子」
「ごめんね」
「うん。じゃあ、今日はいっぱいなぐさめてくれる?」
そう言うと大きな目を細めてにっと笑った。
そう言いながらこの別荘の管理人さん(私は姿を見た事がないんだけど)が作ってくれた夕飯の中の春巻きをお皿に取ってくれる。
「春くんありがとう」
私が微笑みながらお礼をいうと春くんは満足そうに頷いた。テキパキと食べた物を片付けつつ柄が可愛い赤のセーターを腕まくりして私に食べ物を取ってくれる。凛太さんは私が話しかけたら喋るけれど、いつもクッションをしてくれている役の雄吾さんがいないせいか居心地は悪そうだ。
デザートを食べ終えてお茶を飲んでいる時に意を決して切り出した。
「ね、春くん」
「何? 透子」
「どうして春くんは凛太さんにそんなに態度が悪いの? 前に仲良くして欲しいって言ったと思う……相性があるのはもちろんわかっているけど、努力はして欲しい」
いい加減この妙な雰囲気に限界に来ていた私ははっきり言った。理由もわからない事で我慢するのはあんまり好きじゃない。
「……透子」
途方に暮れたように耳をシュンとさせる可愛い春くんに若干絆されそうになった私は心を鬼にして言った。
「凛太さんに喧嘩吹っかけるのは、もうやめて欲しい。年齢は一番若いけれど私の夫の一人なんだからきちんとして欲しい」
春くんは口を尖らせて席を立った。
「ごめん……俺、先に部屋に戻ってる」
「春くんっ……」
私が呼びかけたのにも関わらず春くんは行ってしまう。残された二人はすこしの間沈黙して、凛太さんが言った。
「透子さん、すみません。その、春が突っかかってくるのは僕も悪いんです」
「凛太さん?」
「多分、紅蓮の里での事だと思います……春の問題ですし、僕はこれ以上は言えません。透子さんに怒られたくないので」
ちょっと笑って私を見ると凛太さんは肩を竦めた。
「凛太さん……でも私……」
「行って来てください。僕の順番は……明日なので、明日ゆっくり話しましょう」
私はそれに頷いてから、一度扉の方に向かったんだけど、思い直して凛太さんの隣に立った。凛太さんは端正な顔を不思議そうにすると首を傾げる。
「凛太さん、嫌な思いをさせてごめんなさい」
私はそっと頬にキスをした。その後の顔は見ずに逃げるように扉に向かった。
トントン、と大きな扉を叩く。
「春くん、透子です。開けて」
数秒待ったら春くんが扉を開けてくれた。やっぱりなんだか納得行かない顔をしてむくれているみたいだ。その顔を見上げながら頬を両手で包んだ。
「透子……」
「わかってるよ。春くんが理由もなくそんな事する人じゃないってちゃんとわかっている……私には話せない?」
私を悲しそうに見下ろしてからううん、と首を振った。
「……とにかく入って、ここで話したくない」
その言葉に頷いて部屋に入ると春くんはベッドに座って隣をポンポンと叩いた。素直にその横に腰掛ける。
「……透子、この前に俺が紅蓮の里を居づらくなったのは言ったよね?」
私は春くんの両手に手を乗せながら頷いた。じっと大きな栗色の目が私を見つめている。
「紅蓮の里の社交の場で俺のことをやたらと攻撃して来た奴が居てさ……そいつと凛太は仲良かったんだ。俺もわざわざ攻撃してくる奴のこといちいち覚える程暇じゃないけどさ、あいつと会った時、思い出した……凛太は俺に直接は何も言ってはないけど、そいつと一緒に居たから……思い出すんだ。思い出したくないくらい酷いことも言われたからね」
「春くん」
私はその両手をぎゅっと握った。すこしでも苦しみを小さく出来たら良いのに。
「春くん、ごめんね。事情もわからずに頭ごなしに言い過ぎた……凛太さんにも事情聞いてみるから」
「透子、透子」
じっと私の目を見て、そして顔を近づけてキスを落とした。あやすように触れるキス。きっと言いたかったけど、言えなかったことなんだろうな。
「春くん。大丈夫だよ。不安にならないで。春くんも凛太さんも私の夫で大事で大好きな人なの。出来たらもっと早く事情を聞きたかったけど、そんなことで関係が壊れたりしないよ」
「……俺、傷ついたよ。透子」
「ごめんね」
「うん。じゃあ、今日はいっぱいなぐさめてくれる?」
そう言うと大きな目を細めてにっと笑った。
60
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
残念女子高生、実は伝説の白猫族でした。
具なっしー
恋愛
高校2年生!葉山空が一妻多夫制の男女比が20:1の世界に召喚される話。そしてなんやかんやあって自分が伝説の存在だったことが判明して…て!そんなことしるかぁ!残念女子高生がイケメンに甘やかされながらマイペースにだらだら生きてついでに世界を救っちゃう話。シリアス嫌いです。
※表紙はAI画像です
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハーレム異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーレムです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜
具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです
転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!?
肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!?
その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。
そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。
前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、
「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。
「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」
己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、
結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──!
「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」
でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……!
アホの子が無自覚に世界を救う、
価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!
私が美女??美醜逆転世界に転移した私
鍋
恋愛
私の名前は如月美夕。
27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。
私は都内で独り暮らし。
風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。
転移した世界は美醜逆転??
こんな地味な丸顔が絶世の美女。
私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。
このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。
※ゆるゆるな設定です
※ご都合主義
※感想欄はほとんど公開してます。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜
具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」
居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。
幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。
そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。
しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。
そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。
盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。
※表紙はAIです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる