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02 恥ずかしい失敗
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「え? ……しゅっけつ?」
慌てて、自分の身体を見た……出血? 私、どこかから、血が出てる?
「……アドリアナ! アドリアナ・レオーネ!」
不意に耳に入って来たダミ声が、私の名前を呼んでいた。
「は、はい!」
慌てて椅子から立ち上がった私に、こほんと咳をついて先生は言った。
「レオーネ。返事するだけで、席は立たなくて良い。教室内に居る誰かに見惚れるのは君の自由だが、授業中は授業に集中するように」
教室内の生徒たちは私を見てくすくすと笑い、赤くなって黙ったまま椅子へ座った。
そうだった。次は、出席確認のある数学の授業だったんだ……完全に忘れていて、しかも、クラス全体はおろか、クラウス本人にも隠れて見ていることがバレてしまった。
うわあ……恥ずかしい……まあ、皆からするとクラウスは学園の中でも特に人気だから、お前もかって感じだろうけど……。
「……では、昨日の続きからだ。教科書を開いて……」
点呼が終わり俯いていた私はおとなしく教科書を開き、その日はとてもではないけど、クラウスを鑑賞する気にはならなかった。
◇◆◇
ヒロインは今頃メインイベント卒業式の準備に忙しいと思うけど、私はその前にある卒業試験の方がもっと大事!
これからの人生を左右すると言っても過言でもない、卒業試験。追試は一応用意されているものの、私は苦しみを長引かせたいMでもなんでもない。
出来れば、永遠に受験勉強が続くような悪夢から、一刻も早く解放されたい!
私は図書館の中で、明日の授業の予習復習を済ませていた。そうすると、家に帰ったら卒業試験の方に集中出来る。
周囲からもカリカリとペンが進む音を聞いていると、私も頑張らないとという気持ちに自然となれた。
「……ここ、良いかな?」
「あ、はい。どうぞ……っ?」
うっ……嘘でしょう! そこに居たのは、クラウス・ディケイドだった! 図書館の独特な暖色の照明の中で、彼の銀髪は金色に見えていた。眼鏡の奥の、流し目だってなんだか色っぽい。
……待って、待って。私の周囲、全然空いている席があるんだけど? なんで、確認してまで、私の隣に?
「ありがとう」
「いえ……あの、良かったら私、この席移動しましょうか……?」
にこやかにお礼を言ったクラウスに、私は遠慮がちに声を掛けた。だって、もしかしたら、ただ単にこの席にどうしても座りたかったのかもしれない。
「くっ……いや、ごめん。君って、とっても面白いね。アドリアナ・レオーネ男爵令嬢……良かったら、アドリアナと呼んでも?」
「おっ……お好きにどうぞ」
親しげなクラウスに、私は戸惑いつつも頷いた。
慌てて、自分の身体を見た……出血? 私、どこかから、血が出てる?
「……アドリアナ! アドリアナ・レオーネ!」
不意に耳に入って来たダミ声が、私の名前を呼んでいた。
「は、はい!」
慌てて椅子から立ち上がった私に、こほんと咳をついて先生は言った。
「レオーネ。返事するだけで、席は立たなくて良い。教室内に居る誰かに見惚れるのは君の自由だが、授業中は授業に集中するように」
教室内の生徒たちは私を見てくすくすと笑い、赤くなって黙ったまま椅子へ座った。
そうだった。次は、出席確認のある数学の授業だったんだ……完全に忘れていて、しかも、クラス全体はおろか、クラウス本人にも隠れて見ていることがバレてしまった。
うわあ……恥ずかしい……まあ、皆からするとクラウスは学園の中でも特に人気だから、お前もかって感じだろうけど……。
「……では、昨日の続きからだ。教科書を開いて……」
点呼が終わり俯いていた私はおとなしく教科書を開き、その日はとてもではないけど、クラウスを鑑賞する気にはならなかった。
◇◆◇
ヒロインは今頃メインイベント卒業式の準備に忙しいと思うけど、私はその前にある卒業試験の方がもっと大事!
これからの人生を左右すると言っても過言でもない、卒業試験。追試は一応用意されているものの、私は苦しみを長引かせたいMでもなんでもない。
出来れば、永遠に受験勉強が続くような悪夢から、一刻も早く解放されたい!
私は図書館の中で、明日の授業の予習復習を済ませていた。そうすると、家に帰ったら卒業試験の方に集中出来る。
周囲からもカリカリとペンが進む音を聞いていると、私も頑張らないとという気持ちに自然となれた。
「……ここ、良いかな?」
「あ、はい。どうぞ……っ?」
うっ……嘘でしょう! そこに居たのは、クラウス・ディケイドだった! 図書館の独特な暖色の照明の中で、彼の銀髪は金色に見えていた。眼鏡の奥の、流し目だってなんだか色っぽい。
……待って、待って。私の周囲、全然空いている席があるんだけど? なんで、確認してまで、私の隣に?
「ありがとう」
「いえ……あの、良かったら私、この席移動しましょうか……?」
にこやかにお礼を言ったクラウスに、私は遠慮がちに声を掛けた。だって、もしかしたら、ただ単にこの席にどうしても座りたかったのかもしれない。
「くっ……いや、ごめん。君って、とっても面白いね。アドリアナ・レオーネ男爵令嬢……良かったら、アドリアナと呼んでも?」
「おっ……お好きにどうぞ」
親しげなクラウスに、私は戸惑いつつも頷いた。
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