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第25話 長男と五女②
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過酷な訓練をしていたシエルに俺は声を掛けた。向こうはかなり驚いているようで、さっきまで疲れ果てていたのが嘘のように急いで立ち上がった。
「お、お久しぶりです」
シエルはカーテシーを取ろうとして、動きやすいパンツスタイルであることを思い出し、お辞儀に変えた。そんな仕草に思わず笑いそうになるが、俺は触れずに続けた。
「久しぶりだなシエル。母上から聞いているぞ、剣術を習い始めたんだってな」
「はい、その通りです……」
シエルは相当緊張しているのか、久しぶりに会う兄弟というよりも上官を相手にしている新米騎士のように見えてくる。いや、久しぶりに会うからこそなのだろう。かく言う俺も、シエルにどう接していいかわからずにいる。
とはいえ、シエルには聞きたいことがある。まずはそれを尋ねるとしよう。
「何故剣術を習い始めた?普通の貴族令嬢なら木刀よりティーカップを手しているものだ」
別に女性が剣術を習うことがおかしいというわけではない。実際貴族令嬢から騎士団長になった人から俺は生まれたわけだからな。しかし、シエルは今まで剣術からかけ離れた生活をしていたと聞く。それが突然剣術を習い、あんな過酷な訓練に身を落としているのだ。疑問に思わないわけがない。
俺の問いを聞いたシエルは、さっきまでの緊張が嘘のように真っ直ぐ俺を見て答えた。
「婚約者を見返すためです」
「婚約者を?」
シエルの答えに首を傾げる俺に、シエルは今に至るまでの経緯を話してくれた。デビュタントで婚約者のロドルフ・ルナルド公爵令息が話していたこと、社交パーティで衆目に晒されたこと、それを聞いたコリー先生から提案されたこと等……正直、その話を聞いてロドルフ殿に対して怒りを感じ、同時にシエルの覚悟に驚かされた。普通なら計画していることがわかった時点で婚約破棄しているだろう、いくら王命とはいえラパン伯爵家を舐めていると言っても過言ではないからな。
だが、シエルは敢えて戦う道を選んだのだ。自分が傷つくことを承知の上で……
「そうか、勇気があるんだな。シエルは」
「勇気、ですか?」
「ああ、傷つくことを知りながら茨の道を進もうと思う者は少ない。それが出来るシエルは勇気があるからだ!」
まったく、こんなに真っ直ぐで勇気のあるシエルに対して今まで興味も示さなかった自分を叱りたい気分だ。
「俺は勇気がある者は好きだ!思わず背中を押したくなる」
俺はコリー先生が置いていったであろう木刀を手にした。
「息が整ったら来い!俺が直接剣術を教える!」
「えっ!?い、いいのですか?」
「ああ!但し、俺もコリー先生同様容赦はしない!それでも教わるか?」
愚問だろうと思いながらもシエルに問い掛けた。
「……よろしくお願いします!」
そう言って、シエルは期待していた答えを投げ掛けた。
「お、お久しぶりです」
シエルはカーテシーを取ろうとして、動きやすいパンツスタイルであることを思い出し、お辞儀に変えた。そんな仕草に思わず笑いそうになるが、俺は触れずに続けた。
「久しぶりだなシエル。母上から聞いているぞ、剣術を習い始めたんだってな」
「はい、その通りです……」
シエルは相当緊張しているのか、久しぶりに会う兄弟というよりも上官を相手にしている新米騎士のように見えてくる。いや、久しぶりに会うからこそなのだろう。かく言う俺も、シエルにどう接していいかわからずにいる。
とはいえ、シエルには聞きたいことがある。まずはそれを尋ねるとしよう。
「何故剣術を習い始めた?普通の貴族令嬢なら木刀よりティーカップを手しているものだ」
別に女性が剣術を習うことがおかしいというわけではない。実際貴族令嬢から騎士団長になった人から俺は生まれたわけだからな。しかし、シエルは今まで剣術からかけ離れた生活をしていたと聞く。それが突然剣術を習い、あんな過酷な訓練に身を落としているのだ。疑問に思わないわけがない。
俺の問いを聞いたシエルは、さっきまでの緊張が嘘のように真っ直ぐ俺を見て答えた。
「婚約者を見返すためです」
「婚約者を?」
シエルの答えに首を傾げる俺に、シエルは今に至るまでの経緯を話してくれた。デビュタントで婚約者のロドルフ・ルナルド公爵令息が話していたこと、社交パーティで衆目に晒されたこと、それを聞いたコリー先生から提案されたこと等……正直、その話を聞いてロドルフ殿に対して怒りを感じ、同時にシエルの覚悟に驚かされた。普通なら計画していることがわかった時点で婚約破棄しているだろう、いくら王命とはいえラパン伯爵家を舐めていると言っても過言ではないからな。
だが、シエルは敢えて戦う道を選んだのだ。自分が傷つくことを承知の上で……
「そうか、勇気があるんだな。シエルは」
「勇気、ですか?」
「ああ、傷つくことを知りながら茨の道を進もうと思う者は少ない。それが出来るシエルは勇気があるからだ!」
まったく、こんなに真っ直ぐで勇気のあるシエルに対して今まで興味も示さなかった自分を叱りたい気分だ。
「俺は勇気がある者は好きだ!思わず背中を押したくなる」
俺はコリー先生が置いていったであろう木刀を手にした。
「息が整ったら来い!俺が直接剣術を教える!」
「えっ!?い、いいのですか?」
「ああ!但し、俺もコリー先生同様容赦はしない!それでも教わるか?」
愚問だろうと思いながらもシエルに問い掛けた。
「……よろしくお願いします!」
そう言って、シエルは期待していた答えを投げ掛けた。
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