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悪魔は愛の言葉を囁く
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『……やっぱり彼女より君が好きなんだ……』
たろちゃんが瞳を潤ませながら、女を見ている。私より、うんと若くて可愛い女を。
『嬉しい……! 私も……私もあなたが好き……!』
女は涙を流してたろちゃんの胸に飛び込んだ。二人を包む空気が、キラキラと輝いて見える。まるで二人がくっつくことが運命とでも言うように。
『もう離さない……』
たろちゃんはそう囁くと、女の瞳をじっと見つめた。そして近づいていく二人の唇……──
「うっわー……ねぇ、あんたの恋人、すんごい濃厚なキスしてるね」
「…………言わないで」
美穂子が隣でそう言う中、私はさっと目を伏せなるべく現実を見ないようにする。
「いくらドラマって言っても、そこんとこどうなのよ?」
そう、私たちが見ているのはテレビ画面。今日は美穂子の家で、二人してたろちゃんが主演しているドラマを観ているのだ。
今やたろちゃんは、押しも押されぬ人気俳優。
熱愛スクープが出た後、ミーハー女たちからの人気はなくなったが、むしろ彼を俳優として見てくれている人たちからは株が上がった。一人の女(しかも一般人)を一途に想っていたのがよかったらしい。
あっという間に主演俳優にまで登りつめてしまった。
今ではロケで家にいないことが多くなり、家で見るたろちゃんより画面越しに見るたろちゃんの方が多くなったくらいだ。正直、寂しい。
「……別に、このくらいなんともないし」
「さっすが彼女様は心が広いなー」
美穂子が茶化してきたけど全然笑えない。
『キスシーン』が平気だといえば嘘になる。でもこんなことくらいで怒っていたら、身がもたない。
まさか自分が芸能人と恋愛するなんて思ってもみなかったから、こういう時の心の持っていきようがわからなかった。
──嫉妬なんて吹き飛ばすくらいの、何か確かなものが欲しいなぁ……なんて。
時々、自分がどんどん貪欲になっている気がして、怖くなる。その度に心の中で、『二人でいれるだけで幸せ』と繰り返すのだ。
たろちゃんが瞳を潤ませながら、女を見ている。私より、うんと若くて可愛い女を。
『嬉しい……! 私も……私もあなたが好き……!』
女は涙を流してたろちゃんの胸に飛び込んだ。二人を包む空気が、キラキラと輝いて見える。まるで二人がくっつくことが運命とでも言うように。
『もう離さない……』
たろちゃんはそう囁くと、女の瞳をじっと見つめた。そして近づいていく二人の唇……──
「うっわー……ねぇ、あんたの恋人、すんごい濃厚なキスしてるね」
「…………言わないで」
美穂子が隣でそう言う中、私はさっと目を伏せなるべく現実を見ないようにする。
「いくらドラマって言っても、そこんとこどうなのよ?」
そう、私たちが見ているのはテレビ画面。今日は美穂子の家で、二人してたろちゃんが主演しているドラマを観ているのだ。
今やたろちゃんは、押しも押されぬ人気俳優。
熱愛スクープが出た後、ミーハー女たちからの人気はなくなったが、むしろ彼を俳優として見てくれている人たちからは株が上がった。一人の女(しかも一般人)を一途に想っていたのがよかったらしい。
あっという間に主演俳優にまで登りつめてしまった。
今ではロケで家にいないことが多くなり、家で見るたろちゃんより画面越しに見るたろちゃんの方が多くなったくらいだ。正直、寂しい。
「……別に、このくらいなんともないし」
「さっすが彼女様は心が広いなー」
美穂子が茶化してきたけど全然笑えない。
『キスシーン』が平気だといえば嘘になる。でもこんなことくらいで怒っていたら、身がもたない。
まさか自分が芸能人と恋愛するなんて思ってもみなかったから、こういう時の心の持っていきようがわからなかった。
──嫉妬なんて吹き飛ばすくらいの、何か確かなものが欲しいなぁ……なんて。
時々、自分がどんどん貪欲になっている気がして、怖くなる。その度に心の中で、『二人でいれるだけで幸せ』と繰り返すのだ。
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