上 下
93 / 192
天文28年

第四十八話 決戦!猿式蹴鞠 その一

しおりを挟む
「ここ嵐山の桂川にかかる渡月橋。
 その名の由来は鎌倉時代に亀山上皇が橋の上を通った時に月が渡ったのを眺めた事に由来したと言われています。
 その渡月橋に程近いここ特設会場におきまして、史上初!世紀の対決試合がまさに行われようとしています。

 さてこの試合の実況は私、愛染隊隊長の木下あさひ、解説は元美濃国の守護、土岐とき頼芸よりのりでお送りします。
 土岐さん、本日はよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」

 という訳で、お市です。
 今川の嫁、糸さんの提案する守護者カーバンクル猿式蹴鞠は、京に程近い嵐山の桂川ほとりに会場を作って行われる事になった。
 人同士の対決は京でも盛んだが守護者を使っての試合は初めて、それも今川vs織田という事もあって、周囲には多くの立ち見を含む見物客、更には橋の上や川に屋形船を浮かべての観戦者まで出る大賑わいとなった。

「ちなみに愛染隊長の旭さんが試合参加者でなく実況というのは、やはり喋りが実況向きと思われたからですか?」
「それもですけど、単純に守護者との相性です。
 今回は公平をきすため、選手全員が同じ規格の旧型守護者に乗るのですが」

「ですが?」

「コレ完全に手動による操縦なんですよ。わたしは普段守護猫の自動操縦に頼りっきりなので」
「ああそうなんですね、それは残念でした」

「逆に土岐さんが解説なのも意外ですが」
「はは……守護の座を追い出されてから時間だけはあったので猿式蹴鞠について随分研究しましてね、今では戦国武将一の知識持ちなんて言われる程ですよ」

「ほうほう、それは心強い。
 では土岐さん、簡単に決まりの説明をお願いできますか?」
「了解です木下さん。
 試合時間は前半後半に分かれて、各六分の一刻(約20分)。
 計測には専用の蝋燭を使い、消え切ったら試合終了です。
 球を奪い合い、とにかく相手のゴールに多く球を入れた方が勝ちになります。

 試合は双方五名づつですが、わざとぶつかるなど、何かの反則で黄色い札が出され、黄色札三枚か、大きな反則で退場、残り人数が二名になった時点で負けになります」
「ほうほう」
「ただし相手に得点されるか、小型蝋燭一本(約二分)が燃え尽きるまで耐えれば選手の補充が可能で、その他選手交代は交代陣地に人を置いておけばいつでも可能です。
 大まかな決まりはこんなところでしょうか。あとはその都度試合内で説明します」
「なるほど、土岐さん分かりやすい解説ありがとうございます。

 さあ試合開始の前に、先発選手の紹介です!」


 
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

陣代『諏訪勝頼』――御旗盾無、御照覧あれ!――

歴史・時代 / 完結 24h.ポイント:63pt お気に入り:11

真面目系眼鏡女子は、軽薄騎士の求愛から逃げ出したい。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,031pt お気に入り:241

吼えよ! 権六

歴史・時代 / 連載中 24h.ポイント:796pt お気に入り:3

名言

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:298pt お気に入り:2

冷徹執事は、つれない侍女を溺愛し続ける。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:213pt お気に入り:177

妻が家出したので、子育てしながらカフェを始めることにした

ライト文芸 / 完結 24h.ポイント:56pt お気に入り:6

処理中です...