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1章 モブ令嬢と精霊の出会い
4話 私は主人公にはなれないので
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今から8年後のゲーム本編の時代。リティナは魔法使いの師匠から、妖精王復活の予兆があると教えられる。それを阻止するべく師匠は、彼女へ課題を出す。それはルートが異なろうと、達成しなければならない必須事項だ。さもなければバッドエンド一直線であり、トゥルーエンドもハッピーエンドも見られない。
リティナの課題は、災厄を迎え撃つ為に各地に眠る精霊王の遺物を4つ回収することだ。
《火の腕》《風の体》《水の頭》《土の足》
もっと恰好良い名前が付けられているが、こっちの方が分かり易いので省略。
4つの遺物が揃う時、精霊王が復活をする。
そして、リティナは精霊王の加護によって新たなる力を覚醒し、攻略候補と共にラスボスの妖精王を倒してエンディングへと向かう。
ちなみに、リュカオンの片親は、侵略しようとしていた妖精の残党ではない。人間同様に、妖精にも温厚な人種や性格の人々がいる。戦いを好まない妖精、人間との共存を望む妖精、様々だ。ゲーム中では、リュカオンの様な混血種や妖精達も協力し、敵対する妖精達と戦う事になる。
私の課題は、8年後の戦火の中で自分なりに何が出来るのか。
主人公リティナになれないと悟り、悩んでいる。
魔法使いや魔術師にはなれない。魔力を扱えるものには魔術師と魔法使いの二種が存在する。人によって作られた術式を扱えるのが魔術師。妖精や幻獣に近く、世界の法に触れ、生物の軸を超えた現象を起こすことが出来るのが魔法使いだ。家系図を見せてもらったところレンリオス家は魔力を有しているが、3代前から宿し始めたので魔術師の一族には劣る。私自身、修行をすればある程度は有せる見込みはあるが、培われて来た歴史の差に負けるのが目に見えている。
魔物討伐の道は、お父様とお母様が心配するだろう。イグルド兄様が、そちらの道に行くと豪語している所を目の辺りにしている為に言い出せない。ただ、剣の稽古はある程度は身に着けておく必要はある。
遺物集めは絶対に出来ない。何故なら姫がこの世を去った後は、歴代の王室に仕える魔法使いによって厳重に封印が施されているからだ。それは、次期魔法使いであるリティナにしか解けない。その場所への案内人になれる可能性はあるが、遺物を狙う反対勢力に狙われそうで恐ろしい。
一番役に立てる可能性があるのは、薬や物資の部門だろう。8年後の世界では戦争だけでなく、妖精の引き起こした病気が蔓延している。主人公が特効薬を見つけ出すまでの間に多くの犠牲を生んでしまう。
家族や使用人達も、死んでしまうかもしれない。
「よし。やる事一つ目決定!」
椅子から立ち上がった私は、他の本を探したいとリュカオンに言おうとしたが、図書室にその姿が見当たらない。
「お嬢様」
周囲を見渡していると、リュカオンがやって来る。傍らには、ふんわりとした癖のある亜麻色の髪の温厚そうな女性が佇んでいる。
「お母様!」
私は母〈サリィ〉に駆け寄り、抱き着く。
「お身体はもう大丈夫ですか?」
お母様は二日前に熱を出した為、寝室で休んでいた。お父様が急遽帰って来た理由であり、お母様が彼を見送りに行けなかった原因だ。
両親は私と兄よりも先に別れを済ませているのだろう。
「熱は下がったから、もう大丈夫」
お母様は私の頭を優しく撫でてくれる。お母様の丸くルビーの様に赤い瞳に、私の顔が映っているのが見えた。
「泣いているのではないかと、心配したわ」
「わたし、泣き虫じゃないです!」
「あら、ごめんなさい」
頬を膨らませてみると、お母様は微笑みながら謝罪する。
柔らかな温もりと、ほんのりと漂う花の香。お母様の大好きな白くて可愛らしいメリアの花の香りだ。
「お母様。本の読み聞かせをしていただけますか……?」
予定を急遽変更し、私はお母様に甘える事にした。お父様の埋め合わせではないけれど、絶好の機会だ。
「もちろん。どんな本を読もうかしら?」
私はお母様と手を繋ぎ、図書室の本を見て回る。
リティナの課題は、災厄を迎え撃つ為に各地に眠る精霊王の遺物を4つ回収することだ。
《火の腕》《風の体》《水の頭》《土の足》
もっと恰好良い名前が付けられているが、こっちの方が分かり易いので省略。
4つの遺物が揃う時、精霊王が復活をする。
そして、リティナは精霊王の加護によって新たなる力を覚醒し、攻略候補と共にラスボスの妖精王を倒してエンディングへと向かう。
ちなみに、リュカオンの片親は、侵略しようとしていた妖精の残党ではない。人間同様に、妖精にも温厚な人種や性格の人々がいる。戦いを好まない妖精、人間との共存を望む妖精、様々だ。ゲーム中では、リュカオンの様な混血種や妖精達も協力し、敵対する妖精達と戦う事になる。
私の課題は、8年後の戦火の中で自分なりに何が出来るのか。
主人公リティナになれないと悟り、悩んでいる。
魔法使いや魔術師にはなれない。魔力を扱えるものには魔術師と魔法使いの二種が存在する。人によって作られた術式を扱えるのが魔術師。妖精や幻獣に近く、世界の法に触れ、生物の軸を超えた現象を起こすことが出来るのが魔法使いだ。家系図を見せてもらったところレンリオス家は魔力を有しているが、3代前から宿し始めたので魔術師の一族には劣る。私自身、修行をすればある程度は有せる見込みはあるが、培われて来た歴史の差に負けるのが目に見えている。
魔物討伐の道は、お父様とお母様が心配するだろう。イグルド兄様が、そちらの道に行くと豪語している所を目の辺りにしている為に言い出せない。ただ、剣の稽古はある程度は身に着けておく必要はある。
遺物集めは絶対に出来ない。何故なら姫がこの世を去った後は、歴代の王室に仕える魔法使いによって厳重に封印が施されているからだ。それは、次期魔法使いであるリティナにしか解けない。その場所への案内人になれる可能性はあるが、遺物を狙う反対勢力に狙われそうで恐ろしい。
一番役に立てる可能性があるのは、薬や物資の部門だろう。8年後の世界では戦争だけでなく、妖精の引き起こした病気が蔓延している。主人公が特効薬を見つけ出すまでの間に多くの犠牲を生んでしまう。
家族や使用人達も、死んでしまうかもしれない。
「よし。やる事一つ目決定!」
椅子から立ち上がった私は、他の本を探したいとリュカオンに言おうとしたが、図書室にその姿が見当たらない。
「お嬢様」
周囲を見渡していると、リュカオンがやって来る。傍らには、ふんわりとした癖のある亜麻色の髪の温厚そうな女性が佇んでいる。
「お母様!」
私は母〈サリィ〉に駆け寄り、抱き着く。
「お身体はもう大丈夫ですか?」
お母様は二日前に熱を出した為、寝室で休んでいた。お父様が急遽帰って来た理由であり、お母様が彼を見送りに行けなかった原因だ。
両親は私と兄よりも先に別れを済ませているのだろう。
「熱は下がったから、もう大丈夫」
お母様は私の頭を優しく撫でてくれる。お母様の丸くルビーの様に赤い瞳に、私の顔が映っているのが見えた。
「泣いているのではないかと、心配したわ」
「わたし、泣き虫じゃないです!」
「あら、ごめんなさい」
頬を膨らませてみると、お母様は微笑みながら謝罪する。
柔らかな温もりと、ほんのりと漂う花の香。お母様の大好きな白くて可愛らしいメリアの花の香りだ。
「お母様。本の読み聞かせをしていただけますか……?」
予定を急遽変更し、私はお母様に甘える事にした。お父様の埋め合わせではないけれど、絶好の機会だ。
「もちろん。どんな本を読もうかしら?」
私はお母様と手を繋ぎ、図書室の本を見て回る。
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