姫様従者と王子様

花夜

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Ⅰ:始まりは姫の旅

07

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 呆れ声で言えば、ドヤァと効果音の付きそうな顔でレストは断言する。

「もちろんです!でも、本気で自覚はして下さいよ?貴方はこのプルメリア王国の王子なのですから…って聞いていますか?一応王子であるアレクシオ様!」

「一応って何だ、一応って!」

「言葉通りですよ」

 アレクシオが憤慨しても我関せずとばかりに躱し、

「あっ!」

 突然大きな声を出した。

「何だ!?」

「すっかり忘れていましたが、そろそろ準備しないといけませんね」

「…準備?」

「もうお忘れですか?この国の王子は馬鹿なんですか?」

「…………」

(なぁ、俺はこいつを殴ってもいいよな?)

 今さら主だから敬え!とまでは言わないが、それにしてもこの態度は酷いだろう。

 再びため息を吐き、諦めたように言葉の先を促した。

「例のーー武術大会での特別ゲストとして王子も参加するのでしょう?しかも優勝者と直接対決、という一大イベントもあります」

「…そういえば、そうだったな」

 ここプルメリアでは各街でのイベントやお祭りの際には、王族自らが視察し、場合によっては参加するなど積極的に民との交流を図っている。

 元は現国王であるクロスの娯楽だったのだが、いつの間にか正式な恒例行事となっていた。

「まったく、そんな大事なことはきちんと覚えておいて下さいよ」

 母親よろしくな小言を続けられ、アレクシオのこめかみがピクリと動く。

「……お前はあれか、俺の母の代わりか?」

「はい、そのつもりですが?」

「違うだろ!お前は俺の従者じゃないのか!?っていうか否定しろよっ!!」

「そうですか。では、違います」

 アレクシオにつっこまれあっさりと言いなおす。

 完全にレストにおちょくられていた。

「はぁー」

(そうだった。こいつはこんな奴だった…)

 何度目だろう深いため息を吐き、アレクシオはレストに背を向ける。

「お前とのやり取りは疲れるから、大会の様子でも観てくる」

「やっとですか。ああ、でも今はまだ入れないと思いますよ?」

「は?」

「現在は予選中。コロッセオの中を特別仕様にしているらしいので、出場者以外立ち入り禁止なのです」

 あれだけ俺を焚き付けて置いて?

 今は入れない、だと!?

 …何の冗談だ!!

「そもそも、本戦での優勝者と戦う王子の出番は午後になりますね」

「…つまり、まだまだ時間はあるってことだよな?さっきまでのやり取りは何だったんだ!?」

「強いて言えば…茶番、ですかね」

(今、本気で殺意沸いたぞ…)

 コロコロと笑うレストに、殴りかかりたい衝動を抑え、時間潰しの為に街へと足を向けた。

 予選が終わって本戦が始まれば観客席から覗けるだろう。

 それまではーーレストと離れ、1人静かにティータイムにする!

 そう心に決め、飄々としたおのが従者を撒こうと人混みを走り抜けるアレクシオだった。




       ⚔          ⚔          ⚔




 ユリフィアは受付が終わるとすぐにコロッセオの中へと通された。

「ここの長い廊下を最後まで進んで下さい。健闘を祈ります」

 受付案内のお姉さんに笑顔でそう言われ、よく理解出来ないまま眼前の道に目を向けた。

 背後の重たい扉は閉じられ、もう後には引けないと悟る。

「とりあえず、ここを進めばいいんだよね」

 お気楽なユリフィアは深くは考えず、先の見えない廊下へと足を踏みだしたーー。

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