姫様従者と王子様

花夜

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Ⅰ:始まりは姫の旅

08

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「ちょ、嘘でしょ!?」

 ユリフィアは今、長い廊下を全力疾走していた。

 理由は…背後から迫る馬鹿デカイ球にある。

  廊下ここにはこの球に限らず、先ほどから数えきれないほどの罠が仕掛けられていた。

 ちょっと前は足を踏み出した途端、地面がなくなるという地帯もあったし、両壁から槍が飛び出すなんていうのもザラ(すでに数回体験済み)だった。

 そう、まるで宝探しの洞窟にありがちな罠がてんこ盛りなのだ。

 アトラクションとしてなら楽しめただろうが、しばしば本気で命の危機があり、これが決して遊びではないと知った。

「…この廊下はいつまで続くの!?」

 かれこれ15分は走っている。

 一本道に見えて、実は円形になっており、同じところをぐるぐる回っているのではないだろうか。

 ふと、その考えが頭をよぎる。

「……こうなったら……」

 やるしか無い!

「聖なる清き水よ、槍となりて敵を穿ち給え!」

 唱え終わると水の槍が三本現れ、球へと放たれる。

 土で出来た球は呆気なく崩れた。

「最初からこうすれば良かったかも…」

 ふぅ、と一息つくとどこからか子猫の鳴き声が聞こえた気がした。

「…ニャー……」

「気のせいじゃないよね」

 キョロキョロと辺りを見渡す。

 すると、前方の柱の上に猫影があった。

「いた!」

 どうしてここにとか、そんな事を思うよりも先に行動していた。

 壁の飾りを足場に上まで登りジャンプと同時に柱へと手を伸ばす。

 温かな茶毛の塊を腕にいだき、そのまま着地する。

 そっと腕の中を見ると子猫が元気よく「ニャー」と鳴いた。

「よかったぁ。ケガもなさそうだし、大丈夫かな。それにしても何であんな所にいたんだろう」

 子猫に聞いても答えがあるはずもなく…仕方がないので、その子を連れたままゴールを目指すことにしたのだった。

 しばらく歩くと数メートル先に「GOAL」と書かれた看板が見えた。

 光の溢れるアーチをくぐると広場のような開けた場所に出る。

 途端、

「予選突破おめでとうございます!」

 私を待ち構えていたのはあの受付案内のお姉さんだった。

「え??」

 突然の事に間抜けな返事をしてしまう。

(予選?)

「あれ、覚えていませんか?受付時に説明致しましたが…」

 そう言われて思い返す。

 テントでは名前と歳、それから試合の時に使用する武器を登録して…そう言えば大会についての説明もあったっけ。

 確か、今回の武術大会は国ではなく王都セレッソ主催であり、そこまで大きいものではないこと。

 それでも参加者は100人を超えるため、それを16人まで絞る予選を行い、無事通過した精鋭たちのトーナメントバトルを本戦とすること。

 その本戦で見事優勝者すれば賞金を授与されるが、スペシャルゲストとの強制バトルがあること。

 また予選は独自の方法で行うので、予選落ちでも抗議は受け付けないなどなど。

 てっきり今から予選だと思っていた。

 まさかあの廊下が試練だったとは…!

「あそこは現在、予選用に特別仕様にしているのです。脱落する事なく、ここに辿り着けた方の中からさらに、怪我の有無やクリア時間も考慮して予選通過者を決めるのですよ」

 にっこりと笑いながら説明してくれる。

「あれ?それならどうして私は予選突破決定なの??」

 その話が本当なら、これから本戦に進める者を決めるのではないか。

「…ここには一攫千金を狙う方や己の実力を見せつけたい方など、様々な理由から実に多種多様の方が集まります。そんな中、子猫を助けようとするお人好しは一握りしかいません」

 まぁ、そうだよね。

 バトルしに来ているのに、猫になんか構っていられないよね。

「そんなお人好し…いえ、その優しさも戦士には必要です。と理由から子猫を助けた方は問答無用で予選突破決定なのです」

 たまたま取った行動がまさかそこに繋がるとは…予想外なことばかりで驚きだ。

「ユリフィアさん、頑張って下さいね。本戦では猛者ばかりです。女性である貴女は不利かもしれませんが…期待しています」

 そう言ってお姉さんは去って行った。

 …とりあえず、無事本戦に出られるみたいで良かったと胸をなで下ろす。

(これからが本番、だね!)
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