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Ⅱ:お姫様は護衛様!?
03
しおりを挟む対するレストは、「楽しみですね~」などと呑気に言っている。
ゴスと言えば、ここプルメリアではちょっとは名の通った傭兵団の団長である。
その腕っ節は誰もが認めるもので、こういった武術大会に参加しては優勝まではいかなくとも、毎回良い成績を残していた。
「……あの娘…ユリフィアは勝てると思うか?」
「さぁ~?普通に考えれば難しいとは思いますが…あの娘はできる人ですよ」
「どうしてそう思う?」
「あの子の瞳に強い意志が宿っていたから……ですかね」
レストはヘラヘラしているように見えて、その観察眼は素晴らしいものがあった。
(こいつも俺と同じことを考えていたのか)
ユリフィアの紫色の瞳には不思議な気持ちにさせられる。
全てを包み込み、優しく見守ってくれるような…それでいて時には鋭く、確固たる意志が宿った強い光を帯びていた。
「大丈夫!」と言った彼女からは眩しいばかりのそれを感じた。
「どちらにせよ、観ていれば分かることです」
「……そうだな」
アレクシオもそれに同意する。
その時、司会者が試合開始の合図を出し、二人は慌てて窓辺に駆け寄った。
対戦者であるゴスは余裕だと思っているのか、己に酔ったように熱弁している。
(やはり、彼女には荷が重い相手だったか…)
そう思い始めた時、目を疑う光景が広がる。
いきなりユリフィアが動き、次の瞬間にはゴスの眼前に迫っていた。
その動きは閃光のように鋭く、風のように優雅だった。
呆然としている間にゴスはその場で崩れ落ちる。
「なっ!?」
アレクシオは信じられない気持ちで一杯だった。
もしかしたら、勝てるかもしれない…いや、勝ってほしいとは思ったがまさか一瞬で決着がつくとは。
ダークホースにも程がある。
アレクシオ同様レストも驚きを隠せないでいた。
彼が感情を露わにするのは珍しい、それくらいユリフィアの行動は意表を突いたのだ。
そんなアレクシオに聞こえてくるのは彼女のあの言葉だった。
『ーー女だからってナメてかかると痛い目に合うのは…相手の方なんだから』
確かにな。
今ならそう素直に頷ける。
その後もユリフィアは順調に勝ち進んでいった。
彼女の実力には目を見張るものがあり、レベルの高い指導を受けていたと窺える。
ユリフィアは武の国フリージアから来たと言っていた。
彼の国では女性でも護身術程度には武を嗜むという。
貴族になればそこらのチンピラに勝てる程の実力をつけるのが習わしだそうだ。
もちろん、女性らしい教養を身につければそれで良いとして、積極的に武術に励むのはごく少数らしいが…。
そんな国出身だとしても彼女はトップレベルの実力者だろう。
それもそのはず、アレクシオが知る由もないが、ユリフィアはお城に閉じこもりきりだった。
やれる事と言えば、図書館の本を読み漁り、国でも特に優れた者を先生として魔術や武術を習うことぐらいだった。
教養の為、と言えば大抵の知識は授けてくれたのだ。
「…ついに決勝か。まさかここまでくるとは思わなかったな」
「ええ、本当に人は見かけによらないものですね」
次に彼女が勝てば俺と戦うのはユリフィアということになる。
(それは少し…楽しみだな)
実力者と手合わせ出来るのは光栄なことだ。
そこに性別は関係ない。
「アレクシオ様、運営からお話があるそうですが…」
部屋の入り口で待機していた紳士が控えめに声をかけた。
レストと顔を見合わせ、それから中に通してくれと伝える。
運営からの使者は慌てた様子で、決勝戦が棄権により中止になること、それにあたり繰り上げでアレクシオに出場して欲しいと頭を下げたのだった。
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