姫様従者と王子様

花夜

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Ⅱ:お姫様は護衛様!?

05

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 ここで話は数日前に遡る。

ーーユリフィアが姿を消して半日ほど経ったフリージア王国にて。



「ユリウス様、ご報告に参りました!」

 自室で気を落ち着かせようと紅茶を飲んでいると、息も絶え絶えの衛兵が駆け込んできた。

「何か分かりましたか?」

「はい。ユリフィア姫の足取りが掴めました!どうやら、ここから東にある国境門を越えたようです」

 つまり隣国のプルメリアに逃げた、ということですか。

 和睦を結んでいる国とはいえ、無断で兵を動かしての人探し、とはいけませんね。

 我らが姫はどうやら本格的に逃げ出しているようだ。

「それは確かな情報ですか?」

「はい。そこの見張りが眠らされ、入念に幻影の魔法も掛けられていたため発見が遅くなりましたが…彼らが朝方姫様と接触したと証言しています」

「……間違いなくあの姫の仕業ですね。まったく困ったお人だ」

 思わず愚痴も溢れてしまう。

 ユリフィアのお転婆さには昔から手を焼いていた。

 それでも勉学や武学に励んでいる時はおとなしく、しかもその才能は目覚しいものがあった。

(調子に乗って姫にあれこれ技を授けたのが裏目に出たか…)

「とりあえず、数人隊でプルメリアに入り姫の足取りを引き続き探って下さい。あまり大ごとにしたくはありませんが…万が一の時はプルメリアの王に協力を願います」

「かしこまりました」

「ああ、魔法を使える者も連れて行って下さい。あの国は魔法が物を言いますから。それから姫を発見しても手は出さず、まずは報告をお願いします」

「了解致しました!」

 衛兵が一礼して去って行く。

 ユリウスは深いため息をついた。

(まったくあの姫はどこをほっつき歩いているのか…)

「……無事でいて下さい」

 いつもは鉄壁の仮面も今ばかりは頼りなく崩れていた。





 その頃、レティーシアはユリフィアの部屋を訪れていた。

 ユリウスに言われた通り、手がかりがないか探すためである。

 お城の一番奥、最上階にその部屋はあった。

 中は整理され必要最低の家具と本の山があるだけの、一国の姫の部屋としては少々味気ない空間だった。

 一通り部屋の中を探し回るが、目的や向かった先の手がかりとなる物は無かった。

 最後に机まわりをさぐる。

 一ヶ所だけ鍵のついた引き出しがあり、それはダイヤル式で数字を合わせれば開く仕組みとなっていた。

(ユリフィア様が考えそうな数字…)

 誕生日や行事の日付けなど色々試したが開く気配はない。

 ふと卓上のカレンダーに目がいった。

 12月14日に星印がついている。

 はっとしてレティーシアはダイヤルを回した。

 すると、すんなりとそれは音を立てて外れたのだった。

(ユリフィア様…)

 12月14日、それはレティーシアとユリフィアが出会った日だ。

 引き出しの中には一通の手紙が入っているだけで、他には何もない。

 封筒の表には「レティーシアへ」とあり、裏には「ユリフィア・アーシュガイン」というサインと姫のみが持つ印が記されていた。

 震える手で封を切る。

 中からは綺麗な達筆で書かれた紙と一枚の小切手が出てきた。


『レティーシアへ
 これを読んでいるということは、私の家出が成功したのでしょう。
 黙っていなくなるなんて卑怯な真似をして本当にごめんなさい。
 でももうこれ以上、貴女に迷惑をかける訳にはいきません。
 昔交わしたあの契りは今日をもって無効とします。自由に生きて…。
 小切手はユリウスに申請すれば大丈夫です。
 心ばかりのお礼と謝罪の気持ちを込めて……。                     ユリフィア』


 いつもとは異なり丁寧な言葉で書かれていたが、その字は間違いなくユリフィアのものだった。

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