姫様従者と王子様

花夜

文字の大きさ
19 / 30
Ⅱ:お姫様は護衛様!?

05

しおりを挟む

 ここで話は数日前に遡る。

ーーユリフィアが姿を消して半日ほど経ったフリージア王国にて。



「ユリウス様、ご報告に参りました!」

 自室で気を落ち着かせようと紅茶を飲んでいると、息も絶え絶えの衛兵が駆け込んできた。

「何か分かりましたか?」

「はい。ユリフィア姫の足取りが掴めました!どうやら、ここから東にある国境門を越えたようです」

 つまり隣国のプルメリアに逃げた、ということですか。

 和睦を結んでいる国とはいえ、無断で兵を動かしての人探し、とはいけませんね。

 我らが姫はどうやら本格的に逃げ出しているようだ。

「それは確かな情報ですか?」

「はい。そこの見張りが眠らされ、入念に幻影の魔法も掛けられていたため発見が遅くなりましたが…彼らが朝方姫様と接触したと証言しています」

「……間違いなくあの姫の仕業ですね。まったく困ったお人だ」

 思わず愚痴も溢れてしまう。

 ユリフィアのお転婆さには昔から手を焼いていた。

 それでも勉学や武学に励んでいる時はおとなしく、しかもその才能は目覚しいものがあった。

(調子に乗って姫にあれこれ技を授けたのが裏目に出たか…)

「とりあえず、数人隊でプルメリアに入り姫の足取りを引き続き探って下さい。あまり大ごとにしたくはありませんが…万が一の時はプルメリアの王に協力を願います」

「かしこまりました」

「ああ、魔法を使える者も連れて行って下さい。あの国は魔法が物を言いますから。それから姫を発見しても手は出さず、まずは報告をお願いします」

「了解致しました!」

 衛兵が一礼して去って行く。

 ユリウスは深いため息をついた。

(まったくあの姫はどこをほっつき歩いているのか…)

「……無事でいて下さい」

 いつもは鉄壁の仮面も今ばかりは頼りなく崩れていた。





 その頃、レティーシアはユリフィアの部屋を訪れていた。

 ユリウスに言われた通り、手がかりがないか探すためである。

 お城の一番奥、最上階にその部屋はあった。

 中は整理され必要最低の家具と本の山があるだけの、一国の姫の部屋としては少々味気ない空間だった。

 一通り部屋の中を探し回るが、目的や向かった先の手がかりとなる物は無かった。

 最後に机まわりをさぐる。

 一ヶ所だけ鍵のついた引き出しがあり、それはダイヤル式で数字を合わせれば開く仕組みとなっていた。

(ユリフィア様が考えそうな数字…)

 誕生日や行事の日付けなど色々試したが開く気配はない。

 ふと卓上のカレンダーに目がいった。

 12月14日に星印がついている。

 はっとしてレティーシアはダイヤルを回した。

 すると、すんなりとそれは音を立てて外れたのだった。

(ユリフィア様…)

 12月14日、それはレティーシアとユリフィアが出会った日だ。

 引き出しの中には一通の手紙が入っているだけで、他には何もない。

 封筒の表には「レティーシアへ」とあり、裏には「ユリフィア・アーシュガイン」というサインと姫のみが持つ印が記されていた。

 震える手で封を切る。

 中からは綺麗な達筆で書かれた紙と一枚の小切手が出てきた。


『レティーシアへ
 これを読んでいるということは、私の家出が成功したのでしょう。
 黙っていなくなるなんて卑怯な真似をして本当にごめんなさい。
 でももうこれ以上、貴女に迷惑をかける訳にはいきません。
 昔交わしたあの契りは今日をもって無効とします。自由に生きて…。
 小切手はユリウスに申請すれば大丈夫です。
 心ばかりのお礼と謝罪の気持ちを込めて……。                     ユリフィア』


 いつもとは異なり丁寧な言葉で書かれていたが、その字は間違いなくユリフィアのものだった。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

リトライさせていただきます!〜死に戻り令嬢はイケメン神様とタッグを組んで人生をやり直す事にした。今度こそ幸せになります!!〜

ゆずき
恋愛
公爵家の御令嬢クレハは、18歳の誕生日に何者かに殺害されてしまう。そんなクレハを救ったのは、神を自称する青年(長身イケメン)だった。 イケメン神様の力で10年前の世界に戻されてしまったクレハ。そこから運命の軌道修正を図る。犯人を返り討ちにできるくらい、強くなればいいじゃないか!! そう思ったクレハは、神様からは魔法を、クレハに一目惚れした王太子からは武術の手ほどきを受ける。クレハの強化トレーニングが始まった。 8歳の子供の姿に戻ってしまった少女と、お人好しな神様。そんな2人が主人公の異世界恋愛ファンタジー小説です。 ※メインではありませんが、ストーリーにBL的要素が含まれます。少しでもそのような描写が苦手な方はご注意下さい。

侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています

猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。 しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。 本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。 盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

地味な私では退屈だったのでしょう? 最強聖騎士団長の溺愛妃になったので、元婚約者はどうぞお好きに

有賀冬馬
恋愛
「君と一緒にいると退屈だ」――そう言って、婚約者の伯爵令息カイル様は、私を捨てた。 選んだのは、華やかで社交的な公爵令嬢。 地味で無口な私には、誰も見向きもしない……そう思っていたのに。 失意のまま辺境へ向かった私が出会ったのは、偶然にも国中の騎士の頂点に立つ、最強の聖騎士団長でした。 「君は、僕にとってかけがえのない存在だ」 彼の優しさに触れ、私の世界は色づき始める。 そして、私は彼の正妃として王都へ……

捨てられた悪役はきっと幸せになる

ariya
恋愛
ヴィヴィア・ゴーヴァン公爵夫人は少女小説に登場する悪役だった。 強欲で傲慢で嫌われ者、夫に捨てられて惨めな最期を迎えた悪役。 その悪役に転生していたことに気づいたヴィヴィアは、夫がヒロインと結ばれたら潔く退場することを考えていた。 それまでお世話になった為、貴族夫人としての仕事の一部だけでもがんばろう。 「ヴィヴィア、あなたを愛してます」 ヒロインに惹かれつつあるはずの夫・クリスは愛をヴィヴィアに捧げると言ってきて。 そもそもクリスがヴィヴィアを娶ったのは、王位継承を狙っている疑惑から逃れる為の契約結婚だったはずでは? 愛などなかったと思っていた夫婦生活に変化が訪れる。 ※この作品は、人によっては元鞘話にみえて地雷の方がいるかもしれません。また、ヒーローがヤンデレ寄りですので苦手な方はご注意ください。 ※表紙はAIです。

【書籍化】番の身代わり婚約者を辞めることにしたら、冷酷な龍神王太子の様子がおかしくなりました

降魔 鬼灯
恋愛
 コミカライズ化決定しました。 ユリアンナは王太子ルードヴィッヒの婚約者。  幼い頃は仲良しの2人だったのに、最近では全く会話がない。  月一度の砂時計で時間を計られた義務の様なお茶会もルードヴィッヒはこちらを睨みつけるだけで、なんの会話もない。    お茶会が終わったあとに義務的に届く手紙や花束。義務的に届くドレスやアクセサリー。    しまいには「ずっと番と一緒にいたい」なんて言葉も聞いてしまって。 よし分かった、もう無理、婚約破棄しよう! 誤解から婚約破棄を申し出て自制していた番を怒らせ、執着溺愛のブーメランを食らうユリアンナの運命は? 全十話。一日2回更新 完結済  コミカライズ化に伴いタイトルを『憂鬱なお茶会〜殿下、お茶会を止めて番探しをされては?え?義務?彼女は自分が殿下の番であることを知らない。溺愛まであと半年〜』から『番の身代わり婚約者を辞めることにしたら、冷酷な龍神王太子の様子がおかしくなりました』に変更しています。

処理中です...