姫様従者と王子様

花夜

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Ⅲ:姫と従者と王子様

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「…よし、じゃあいくぞ」

「は~い」

「まずは名前と歳、出身国を言ってくれ」

 アレクシオが資料を見ながら私に訊ねた。

 私たちは今、いわゆる面接のようなものをしていた。

 すでにアレクシオの護衛に決まったとは言え、主がその護衛相手のことを知らないのはおかしい、との事からこれは始まった。

 王族のコネクションを使えば一発なのだろうが、そこはあえて他問自答式にしたらしい。

(そもそもレストさんにやらせればいいのに…アレクって律儀だなぁ)

 そう思いながら私は素直に「ユリフィア・アーシュガイン」と答えようとして慌てて閉じた。

 アーシュガイン家なんて一つしかない。

 王族ってことは何があっても隠し通さなきゃ!

「えっと、ユリフィア・フロスト、16歳。出身はフリージア王国のシアレンスだよ」

 うん、名前以外は嘘ついていない!

「確か出会った日もフリージアの出身と言っていたな。剣の腕がたつのもまぁ分かるが…魔法も得意なんだな」

「やることがなくて勉強ばかりしていたから。ああ、でも、お母様がプルメリアの出身ってことも少し関係があるかも…」

 私の言葉にアレクシオははっとしたように家族は?と続けた。

「行く宛がないと言っていたが…ちゃんと両親に城で働くと伝えたのか?」

 ユリフィアは首を振り、少し悲しそうに目を伏せこう言った。

「お父様とお母様は私が幼い頃に亡くなったの…」

「そうか…すまない」

「え?どうしたの?」

 いきなりの謝罪に困惑する。

「その、嫌な事を思い出させて…」

 アレクシオの声が尻すぼみになっていく。

(そのことね)

 ユリフィアはあまり気にしていなかったが、彼は心配してくれたらしい。

「そんなこと気にしなくていいよ。過去の話だから」

 幼かったこともあり、両親の事はあまり記憶にない。

 ただいつも笑顔で優しくて、温かくて、安心できたのは覚えている。

「そんなこと、って言うなよ」

 心配して損したとでも言うようにアレクシオはため息をついた。

けれど、ユリフィアが一瞬見せた憂いの顔が頭に焼き付いて離れなかった。

 ちらりと彼女を見ると、いつもの笑顔に戻っている。

 ……こいつの切り替えの早さには驚かされさるな。

「ね、ね、アレク。もう終わり?」

 子犬のような視線を向けるユリフィアに、アレクシオは頬を緩めた。

「次いくぞ」

「は~い」

 ユリフィアの元気な声が響く。

 ここ数日でアレクシオは無愛想だけど、根は優しいと知った。

 あまり彼に心配をかけたくはない。

「じゃあ、誕生日とスリーサイズは?」

「12月15日生まれで、バストはーーって何を言わせようとしているの!?」

 真面目にスリーサイズまで答えそうになって、ハタと気づく。

 アレクシオがイタズラっぽく笑っていることに。

「さすがに引っかからないか。ユリフィアならポロっと言うかとも思ったが」

「もう、言うわけないでしょ!聞いてどうするつもりだったの?」

「そりゃもちろん、あんな事やこんな事とかに使うとか?」

「どんなことよ!!」

 赤面しながらユリフィアは叫んだ。

 対する王子は笑っている。

 そんな他愛のないやり取りをしているだけなのに、私は幸せを感じていた。

 あのまま城に閉じ籠っていれば、きっとこんな楽しい日々は送れなかっただろう。

 そう思うと、あの時抜け出してよかったと実感した。

「アレク、次は真面目な質問でお願いね」

「はいはい。じゃあ次な」

「は~い」

 その日はアレクシオとユリフィアの明るい声が廊下に響いていた。



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