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プロローグ
膠着状態?いいえ・・・
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「カイ。悪いが、やはり君を通すことは出来ない。決まりは決まりだ。禁忌に触れようとしている君を、見過ごすことなんて出来るはずがない」
声はやや震えていたが、しっかりとした目つきでハルトはカイを睨みつけ、そう言った。
そしてまた半歩踏み出す。
「やっぱりな。公務員気質のハルト様は許してくれねぇと思ってたよ」
お道化た口調でカイが言い、半歩にじり寄る。
「カイ。今なら僕が何とかとりなして、罰を最小限に留めるようにしてみせる。だから、もうやめて投降してくれ」
「無理だね。俺が犯した罪を考えれば、聖騎士一人の力でどうにかできる範疇なんてとっくに超えてるんだよ」
カイはこの封魔殿を強襲するために、様々な工作を行っていた。
王宮、王都の貴族街、騎士団本部、教会本部といったサンクレアの重要施設を、時限性の爆炎魔法を発動させる護符を使い、同時に攻撃されたように見せかけたのだ。護符に込められた爆炎魔法は時限性ではあるものの、人の気配を探知すると作動を止めるように作られているので、恐らく人的被害はないはずだが、それでも非常に危険なものであるには違いないし、護符が発動し爆発した今となってはそれを証明する手段もない。
何より人的被害がなくとも、重要施設への攻撃・・・テロイズムはただちに極刑と決まっている。
あくまで封魔殿から目を遠ざけるための工作であったが、それでも効果は抜群であり、王都は一瞬で混乱に陥った。それに乗じて封魔殿の襲撃を成功させるつもりだったが、最後の最後で勘の良いハルトに気付かれてしまったのは、カイにとっては忌々しいイレギュラーだ。
「それにな、イリスがいない世界で俺はダラダラと生きていくつもりなんてないのさ。イリスがいるかいないか、俺が気に掛けるのはそれだけさ」
じり・・・と、カイが半歩間合いを詰める。
カイとハルトのお互いの距離は5メートルほど。
会話をしているが、二人とも既に戦闘状態に突入している。
どちらかが隙を見せれば、即座に斬りかかりに入る・・・そんな状態だった。
カイは話こそしているが、本気でハルトを説得しようとは考えていない。カイの真の狙いはあくまで他にあった。
「なぁハルト。俺もイリスも、これまで散々命をかけてサンクレアのため、民のため、ひいては人類のために命を賭けて戦ってきたよな?そして実際にイリスはそのために命を落とそうとしている」
「・・・」
「なのにさ、イリスはそれが報われるどころか最後までラビス教の教えに殉じて、わざわざ助かる手法を捨てなければいけないと来てる。これっておかしくないか?」
「・・・っ!」
ハルトが奥歯を噛みしめた。
「何が何でも命を拾おうとするのはそんなにいけないことか?愛する人の命を救いたい、一緒にいたいと願うのは悪しきものか?お前に止められなければならないほどのことか?」
「僕は・・・」
何かを言おうとしたハルトの口が止まる。
カイは内心ほくそ笑んでいる。いいぞ、いい感じに揺さぶってやれていると。
膠着状態になっていると見えるところであるが、実際はカイの有利に事は進んでいた。
声はやや震えていたが、しっかりとした目つきでハルトはカイを睨みつけ、そう言った。
そしてまた半歩踏み出す。
「やっぱりな。公務員気質のハルト様は許してくれねぇと思ってたよ」
お道化た口調でカイが言い、半歩にじり寄る。
「カイ。今なら僕が何とかとりなして、罰を最小限に留めるようにしてみせる。だから、もうやめて投降してくれ」
「無理だね。俺が犯した罪を考えれば、聖騎士一人の力でどうにかできる範疇なんてとっくに超えてるんだよ」
カイはこの封魔殿を強襲するために、様々な工作を行っていた。
王宮、王都の貴族街、騎士団本部、教会本部といったサンクレアの重要施設を、時限性の爆炎魔法を発動させる護符を使い、同時に攻撃されたように見せかけたのだ。護符に込められた爆炎魔法は時限性ではあるものの、人の気配を探知すると作動を止めるように作られているので、恐らく人的被害はないはずだが、それでも非常に危険なものであるには違いないし、護符が発動し爆発した今となってはそれを証明する手段もない。
何より人的被害がなくとも、重要施設への攻撃・・・テロイズムはただちに極刑と決まっている。
あくまで封魔殿から目を遠ざけるための工作であったが、それでも効果は抜群であり、王都は一瞬で混乱に陥った。それに乗じて封魔殿の襲撃を成功させるつもりだったが、最後の最後で勘の良いハルトに気付かれてしまったのは、カイにとっては忌々しいイレギュラーだ。
「それにな、イリスがいない世界で俺はダラダラと生きていくつもりなんてないのさ。イリスがいるかいないか、俺が気に掛けるのはそれだけさ」
じり・・・と、カイが半歩間合いを詰める。
カイとハルトのお互いの距離は5メートルほど。
会話をしているが、二人とも既に戦闘状態に突入している。
どちらかが隙を見せれば、即座に斬りかかりに入る・・・そんな状態だった。
カイは話こそしているが、本気でハルトを説得しようとは考えていない。カイの真の狙いはあくまで他にあった。
「なぁハルト。俺もイリスも、これまで散々命をかけてサンクレアのため、民のため、ひいては人類のために命を賭けて戦ってきたよな?そして実際にイリスはそのために命を落とそうとしている」
「・・・」
「なのにさ、イリスはそれが報われるどころか最後までラビス教の教えに殉じて、わざわざ助かる手法を捨てなければいけないと来てる。これっておかしくないか?」
「・・・っ!」
ハルトが奥歯を噛みしめた。
「何が何でも命を拾おうとするのはそんなにいけないことか?愛する人の命を救いたい、一緒にいたいと願うのは悪しきものか?お前に止められなければならないほどのことか?」
「僕は・・・」
何かを言おうとしたハルトの口が止まる。
カイは内心ほくそ笑んでいる。いいぞ、いい感じに揺さぶってやれていると。
膠着状態になっていると見えるところであるが、実際はカイの有利に事は進んでいた。
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