Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶

文字の大きさ
5 / 59
第1章

第五話 ~自宅を訪れたリーファは俺に対して持っていた気持ちを話していった~

しおりを挟む
 第五話




「あら、緑茶とは珍しい物を飲んでるじゃない?」
「あ、ああ。先週王様から貰ったんだ。良かったらリーファも飲むか?」

 居間に彼女を案内すると、テーブルの上にあった湯呑みを見てリーファがそう声を上げた。

「そうね。頂こうかしら」
「甘いものが嫌いなミソラには出してなかったけど、実は緑茶に合うっていう『甘味(かんみ)』も有るんだよ。それも一緒に持ってくるわ」
「あら、気が利くわねベル」

 俺の言葉に頬を緩めるリーファ。
 お前が甘味に目が無いのは知ってるからな。

「緑茶を入れ直したら最中(もなか)と大福(だいふく)を持ってくるから少し待っててくれ」
「ふふふ。じゃあ楽しみにしてるわね」

 リーファはそう言うと、ミソラが座っていた椅子に座った。

 テーブルに置いてあった湯呑みを回収したあと、俺は台所へと足を運ぶ。

「確か甘味は引き出しの中に入れてたよな……」

 お湯を沸かしながらリーファに出す甘味を探していると、先程ミソラに言われた言葉が頭の中に思い出された。

『彼女が王子様からの求婚を断った本当の理由は『貴方と一緒にいたいから』よ』

「ミソラの言葉をそのまま受け止めるなら……リーファは俺の事を……あぁ!!」

 そんなことを考えていたせいか、俺は緑茶の蒸らしの時間をミスってしまった。

 ま、まぁ仕方ないかな……

 なんて思いながら俺は緑茶を入れた湯呑みと甘味を持って居間へと向かった。



「ふふふ。なにか考え事でもしてたのかしら?緑茶の蒸らしをミスったわね」
「わ、わかるのか……」

 少しだけ色目が濃い緑茶を見ながらリーファは笑う。

「ミソラに出した緑茶とは色が違うわよ。まぁ別に構わないわよ」
「そうか……まぁ多少苦味がある方が甘味が映えると思って我慢してくれ」

 俺はそう言って彼女の正面の椅子にに腰を下ろした。

「頂くわね。……あらこの最中美味しいわね。ちょっと苦味の強い緑茶との相性が最高よ」
「……それは良かったよ」

 俺の目の前で最中を美味しそうに頬張るリーファを見ながら、コイツは本当に歳を取らないなと思っていた。

 ハーフエルフはエルフとは違って『寿命』が長くはない。
 千年を生きるエルフとは違い、ハーフエルフの寿命は長くても二百年。まぁそれでも百年程度の人間に比べれば長く思えるがな。

 あとは、ハーフエルフは若く見える期間が非常に長い。

 リーファの場合。会った時の年齢から少し成長したところで見た目の変化が止まった。

 年老いてシワが刻まれていく俺とは違い、いつまでも美しい姿のリーファ。
 隣を歩く時にある種の申し訳なさを抱いていたことは事実だよな。

「なぁ、リーファ。聞いてもいいか?」
「何よ、ベル。あらたまって。まぁいいわよ、私も言いたい事があって来たからね。そっちが先に聞きなさいよ」

 考えても分からないことは本人に聞いてみるしかないな。

 俺はミソラに言われたことをリーファに尋ねた。

「十年くらい前だったよな。リーファが隣国の王子様に求婚をされたのは」
「あら?随分と懐かしい話をするわね。そうね、確かそのくらい前の話だったわよね」

 貴方が私に『俺はまだまだリーファと冒険がしたいんだ!!』
 って泣きついてきたのを覚えているわよ?

 イタズラっぽく笑いながらそんな事を言うリーファ。

「な、泣きついた訳じゃないけどな……」
「ふふふ。それで?そんな昔話を持ち出してなんだと言うのよ」

「ミソラから聞いたんだよ。あの時のリーファは、王子様に『仲間と冒険がしたいから』って理由で断ったよな?でも本当は違うって」
「…………あのばか。余計なことを言って」

 リーファが少しだけ視線を逸らしながら何かを呟いていた。
 歳のせいか。最近は本当に聞き取れない声が増えてきたよな……

「はぁ……それで、ミソラはなんて言ったのよ?」
「リーファが求婚を断った本当の理由は『俺と一緒にいたいから』だと言われたよ」

 俺がそう言うと、リーファは軽く頬を赤く染めた。

 ……鈍感な俺だってここまで反応を見せられたらわかる。

「……まぁ、間違いではないわよ」
「そうか……その、なんで俺なんだ?」

 すごく情けないことを聞いてる実感がある……
 でも仕方ないだろ!!今までこんな事なんか一度も無かったんだから……

 こんな情けないことを聞く俺に、リーファは軽く笑いながら言葉を返してきた。

「貴方は私を『リーファ』として見てくれたからよ。他の人は私を『ハーフエルフ』として見ていたわ。それが始まりよ」

「そ、そんなのは当たり前のことだろ?リーファはリーファだし。そこに種族による特性みたいなのはあるだろうけど、そんなのは些事だと思うからな。まぁいつまでも若い見た目のリーファと違って、こうして年老いていく俺が隣を歩くとある種の申し訳なさを感じることはあったけどな」
「あはは。ねぇベル。貴方の良いところは『当たり前のことを当たり前に出来ること』だと思ってるわ。優しくて誠実なところ。見た目は貴方の言うように歳と共に変わっていくわ。でも貴方の素敵な中身は変わらないわよ」

 リーファはそう言うと俺に言葉を続けた。

「見た目なんてものに囚われないで。貴方と私の関係性はそんなものでは壊れないって思ってるわよ」
「……そうか。勝手に劣等感を抱いていたのは俺の方だったんだな」

 情けない。本当に情けないな。
 リーファのことをリーファとして見てるつもりが、いつの間にか彼女を『ハーフエルフ』として見てしまっていた。

 こんなざまでは彼女が好きになってくれた俺ではなくなってしまうな。

 そんな事を思っていた俺に、リーファは少しだけ恥ずかしそうに笑いながら言ってきた。

「でもね。今日は私と貴方の『関係性』を壊しに来たのよ」
「……え?」

 緑茶を一口飲んだあと、リーファは俺の目を見ながら話をした。

「冒険者を引退する。これは誰にでもいつかは訪れるものよ。それが遅いか早いかの話。クエストで大怪我なんかをすれば、私だって明日には引退するかもしれないわ」
「まぁ、そういう仕事だからな」

 だからこそ。冒険者は給料がいいし、いつ引退してもいいように退職金や年金の積立もしっかりしている。

「貴方が引退する事も私は了承してる。でもね、私はわかってなかったのよ」
「……何をわかってなかったんた?」

 俺がそう聞くと、リーファは寂しそうな目をして言葉を返す。

「私と貴方の関係性は『冒険者仲間』でしかないってことによ」
「そ、そんなことは……」

 あるかも知れない。現に俺は冒険者を引退したら、故郷に帰って剣術道場でも開いて暮らしていこうと思っていた。
 結婚するしないは置いておいて、そこに『リーファ』の存在は無かった。

 きっと彼女は『冒険者』を続けるものだと思っていたからだ。

「貴方が『婚活をする』と聞いた時には驚いたわよ。そして、私は思ったわ『私以外の者が貴方の隣を歩くのは許せない』ってね」
「……リーファ」

「でも、私は冒険者。貴方はもう引退してしまった。立場が違えば今までの関係性では一緒には居られないわ」
「そうだな」

 まだまだ実力に陰りもないリーファ。
 五体満足の彼女が俺に合わせて冒険者を引退するなんてことはありえない。

 だとするならば、今の関係性のままだと俺と彼女の道はもう交わらない。

「だから私は貴方との関係性を壊しに来たのよ」

 リーファはそう言うと、俺に向かって言葉を放つ。

 その時の彼女の表情は、二十年間一緒に隣を歩いてきて一番の美しさだったと確信出来るものだった。


「私と結婚しなさい。ベルフォード・ラドクリフ」
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。

みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。 勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。  辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。  だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

第2の人生は、『男』が希少種の世界で

赤金武蔵
ファンタジー
 日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。  あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。  ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。  しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【鑑定不能】と捨てられた俺、実は《概念創造》スキルで万物創成!辺境で最強領主に成り上がる。

夏見ナイ
ファンタジー
伯爵家の三男リアムは【鑑定不能】スキル故に「無能」と追放され、辺境に捨てられた。だが、彼が覚醒させたのは神すら解析不能なユニークスキル《概念創造》! 認識した「概念」を現実に創造できる規格外の力で、リアムは快適な拠点、豊かな食料、忠実なゴーレムを生み出す。傷ついたエルフの少女ルナを救い、彼女と共に未開の地を開拓。やがて獣人ミリア、元貴族令嬢セレスなど訳ありの仲間が集い、小さな村は驚異的に発展していく。一方、リアムを捨てた王国や実家は衰退し、彼の力を奪おうと画策するが…? 無能と蔑まれた少年が最強スキルで理想郷を築き、自分を陥れた者たちに鉄槌を下す、爽快成り上がりファンタジー!

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

処理中です...