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第1章
第五話 ~自宅を訪れたリーファは俺に対して持っていた気持ちを話していった~
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第五話
「あら、緑茶とは珍しい物を飲んでるじゃない?」
「あ、ああ。先週王様から貰ったんだ。良かったらリーファも飲むか?」
居間に彼女を案内すると、テーブルの上にあった湯呑みを見てリーファがそう声を上げた。
「そうね。頂こうかしら」
「甘いものが嫌いなミソラには出してなかったけど、実は緑茶に合うっていう『甘味(かんみ)』も有るんだよ。それも一緒に持ってくるわ」
「あら、気が利くわねベル」
俺の言葉に頬を緩めるリーファ。
お前が甘味に目が無いのは知ってるからな。
「緑茶を入れ直したら最中(もなか)と大福(だいふく)を持ってくるから少し待っててくれ」
「ふふふ。じゃあ楽しみにしてるわね」
リーファはそう言うと、ミソラが座っていた椅子に座った。
テーブルに置いてあった湯呑みを回収したあと、俺は台所へと足を運ぶ。
「確か甘味は引き出しの中に入れてたよな……」
お湯を沸かしながらリーファに出す甘味を探していると、先程ミソラに言われた言葉が頭の中に思い出された。
『彼女が王子様からの求婚を断った本当の理由は『貴方と一緒にいたいから』よ』
「ミソラの言葉をそのまま受け止めるなら……リーファは俺の事を……あぁ!!」
そんなことを考えていたせいか、俺は緑茶の蒸らしの時間をミスってしまった。
ま、まぁ仕方ないかな……
なんて思いながら俺は緑茶を入れた湯呑みと甘味を持って居間へと向かった。
「ふふふ。なにか考え事でもしてたのかしら?緑茶の蒸らしをミスったわね」
「わ、わかるのか……」
少しだけ色目が濃い緑茶を見ながらリーファは笑う。
「ミソラに出した緑茶とは色が違うわよ。まぁ別に構わないわよ」
「そうか……まぁ多少苦味がある方が甘味が映えると思って我慢してくれ」
俺はそう言って彼女の正面の椅子にに腰を下ろした。
「頂くわね。……あらこの最中美味しいわね。ちょっと苦味の強い緑茶との相性が最高よ」
「……それは良かったよ」
俺の目の前で最中を美味しそうに頬張るリーファを見ながら、コイツは本当に歳を取らないなと思っていた。
ハーフエルフはエルフとは違って『寿命』が長くはない。
千年を生きるエルフとは違い、ハーフエルフの寿命は長くても二百年。まぁそれでも百年程度の人間に比べれば長く思えるがな。
あとは、ハーフエルフは若く見える期間が非常に長い。
リーファの場合。会った時の年齢から少し成長したところで見た目の変化が止まった。
年老いてシワが刻まれていく俺とは違い、いつまでも美しい姿のリーファ。
隣を歩く時にある種の申し訳なさを抱いていたことは事実だよな。
「なぁ、リーファ。聞いてもいいか?」
「何よ、ベル。あらたまって。まぁいいわよ、私も言いたい事があって来たからね。そっちが先に聞きなさいよ」
考えても分からないことは本人に聞いてみるしかないな。
俺はミソラに言われたことをリーファに尋ねた。
「十年くらい前だったよな。リーファが隣国の王子様に求婚をされたのは」
「あら?随分と懐かしい話をするわね。そうね、確かそのくらい前の話だったわよね」
貴方が私に『俺はまだまだリーファと冒険がしたいんだ!!』
って泣きついてきたのを覚えているわよ?
イタズラっぽく笑いながらそんな事を言うリーファ。
「な、泣きついた訳じゃないけどな……」
「ふふふ。それで?そんな昔話を持ち出してなんだと言うのよ」
「ミソラから聞いたんだよ。あの時のリーファは、王子様に『仲間と冒険がしたいから』って理由で断ったよな?でも本当は違うって」
「…………あのばか。余計なことを言って」
リーファが少しだけ視線を逸らしながら何かを呟いていた。
歳のせいか。最近は本当に聞き取れない声が増えてきたよな……
「はぁ……それで、ミソラはなんて言ったのよ?」
「リーファが求婚を断った本当の理由は『俺と一緒にいたいから』だと言われたよ」
俺がそう言うと、リーファは軽く頬を赤く染めた。
……鈍感な俺だってここまで反応を見せられたらわかる。
「……まぁ、間違いではないわよ」
「そうか……その、なんで俺なんだ?」
すごく情けないことを聞いてる実感がある……
でも仕方ないだろ!!今までこんな事なんか一度も無かったんだから……
こんな情けないことを聞く俺に、リーファは軽く笑いながら言葉を返してきた。
「貴方は私を『リーファ』として見てくれたからよ。他の人は私を『ハーフエルフ』として見ていたわ。それが始まりよ」
「そ、そんなのは当たり前のことだろ?リーファはリーファだし。そこに種族による特性みたいなのはあるだろうけど、そんなのは些事だと思うからな。まぁいつまでも若い見た目のリーファと違って、こうして年老いていく俺が隣を歩くとある種の申し訳なさを感じることはあったけどな」
「あはは。ねぇベル。貴方の良いところは『当たり前のことを当たり前に出来ること』だと思ってるわ。優しくて誠実なところ。見た目は貴方の言うように歳と共に変わっていくわ。でも貴方の素敵な中身は変わらないわよ」
リーファはそう言うと俺に言葉を続けた。
「見た目なんてものに囚われないで。貴方と私の関係性はそんなものでは壊れないって思ってるわよ」
「……そうか。勝手に劣等感を抱いていたのは俺の方だったんだな」
情けない。本当に情けないな。
リーファのことをリーファとして見てるつもりが、いつの間にか彼女を『ハーフエルフ』として見てしまっていた。
こんなざまでは彼女が好きになってくれた俺ではなくなってしまうな。
そんな事を思っていた俺に、リーファは少しだけ恥ずかしそうに笑いながら言ってきた。
「でもね。今日は私と貴方の『関係性』を壊しに来たのよ」
「……え?」
緑茶を一口飲んだあと、リーファは俺の目を見ながら話をした。
「冒険者を引退する。これは誰にでもいつかは訪れるものよ。それが遅いか早いかの話。クエストで大怪我なんかをすれば、私だって明日には引退するかもしれないわ」
「まぁ、そういう仕事だからな」
だからこそ。冒険者は給料がいいし、いつ引退してもいいように退職金や年金の積立もしっかりしている。
「貴方が引退する事も私は了承してる。でもね、私はわかってなかったのよ」
「……何をわかってなかったんた?」
俺がそう聞くと、リーファは寂しそうな目をして言葉を返す。
「私と貴方の関係性は『冒険者仲間』でしかないってことによ」
「そ、そんなことは……」
あるかも知れない。現に俺は冒険者を引退したら、故郷に帰って剣術道場でも開いて暮らしていこうと思っていた。
結婚するしないは置いておいて、そこに『リーファ』の存在は無かった。
きっと彼女は『冒険者』を続けるものだと思っていたからだ。
「貴方が『婚活をする』と聞いた時には驚いたわよ。そして、私は思ったわ『私以外の者が貴方の隣を歩くのは許せない』ってね」
「……リーファ」
「でも、私は冒険者。貴方はもう引退してしまった。立場が違えば今までの関係性では一緒には居られないわ」
「そうだな」
まだまだ実力に陰りもないリーファ。
五体満足の彼女が俺に合わせて冒険者を引退するなんてことはありえない。
だとするならば、今の関係性のままだと俺と彼女の道はもう交わらない。
「だから私は貴方との関係性を壊しに来たのよ」
リーファはそう言うと、俺に向かって言葉を放つ。
その時の彼女の表情は、二十年間一緒に隣を歩いてきて一番の美しさだったと確信出来るものだった。
「私と結婚しなさい。ベルフォード・ラドクリフ」
「あら、緑茶とは珍しい物を飲んでるじゃない?」
「あ、ああ。先週王様から貰ったんだ。良かったらリーファも飲むか?」
居間に彼女を案内すると、テーブルの上にあった湯呑みを見てリーファがそう声を上げた。
「そうね。頂こうかしら」
「甘いものが嫌いなミソラには出してなかったけど、実は緑茶に合うっていう『甘味(かんみ)』も有るんだよ。それも一緒に持ってくるわ」
「あら、気が利くわねベル」
俺の言葉に頬を緩めるリーファ。
お前が甘味に目が無いのは知ってるからな。
「緑茶を入れ直したら最中(もなか)と大福(だいふく)を持ってくるから少し待っててくれ」
「ふふふ。じゃあ楽しみにしてるわね」
リーファはそう言うと、ミソラが座っていた椅子に座った。
テーブルに置いてあった湯呑みを回収したあと、俺は台所へと足を運ぶ。
「確か甘味は引き出しの中に入れてたよな……」
お湯を沸かしながらリーファに出す甘味を探していると、先程ミソラに言われた言葉が頭の中に思い出された。
『彼女が王子様からの求婚を断った本当の理由は『貴方と一緒にいたいから』よ』
「ミソラの言葉をそのまま受け止めるなら……リーファは俺の事を……あぁ!!」
そんなことを考えていたせいか、俺は緑茶の蒸らしの時間をミスってしまった。
ま、まぁ仕方ないかな……
なんて思いながら俺は緑茶を入れた湯呑みと甘味を持って居間へと向かった。
「ふふふ。なにか考え事でもしてたのかしら?緑茶の蒸らしをミスったわね」
「わ、わかるのか……」
少しだけ色目が濃い緑茶を見ながらリーファは笑う。
「ミソラに出した緑茶とは色が違うわよ。まぁ別に構わないわよ」
「そうか……まぁ多少苦味がある方が甘味が映えると思って我慢してくれ」
俺はそう言って彼女の正面の椅子にに腰を下ろした。
「頂くわね。……あらこの最中美味しいわね。ちょっと苦味の強い緑茶との相性が最高よ」
「……それは良かったよ」
俺の目の前で最中を美味しそうに頬張るリーファを見ながら、コイツは本当に歳を取らないなと思っていた。
ハーフエルフはエルフとは違って『寿命』が長くはない。
千年を生きるエルフとは違い、ハーフエルフの寿命は長くても二百年。まぁそれでも百年程度の人間に比べれば長く思えるがな。
あとは、ハーフエルフは若く見える期間が非常に長い。
リーファの場合。会った時の年齢から少し成長したところで見た目の変化が止まった。
年老いてシワが刻まれていく俺とは違い、いつまでも美しい姿のリーファ。
隣を歩く時にある種の申し訳なさを抱いていたことは事実だよな。
「なぁ、リーファ。聞いてもいいか?」
「何よ、ベル。あらたまって。まぁいいわよ、私も言いたい事があって来たからね。そっちが先に聞きなさいよ」
考えても分からないことは本人に聞いてみるしかないな。
俺はミソラに言われたことをリーファに尋ねた。
「十年くらい前だったよな。リーファが隣国の王子様に求婚をされたのは」
「あら?随分と懐かしい話をするわね。そうね、確かそのくらい前の話だったわよね」
貴方が私に『俺はまだまだリーファと冒険がしたいんだ!!』
って泣きついてきたのを覚えているわよ?
イタズラっぽく笑いながらそんな事を言うリーファ。
「な、泣きついた訳じゃないけどな……」
「ふふふ。それで?そんな昔話を持ち出してなんだと言うのよ」
「ミソラから聞いたんだよ。あの時のリーファは、王子様に『仲間と冒険がしたいから』って理由で断ったよな?でも本当は違うって」
「…………あのばか。余計なことを言って」
リーファが少しだけ視線を逸らしながら何かを呟いていた。
歳のせいか。最近は本当に聞き取れない声が増えてきたよな……
「はぁ……それで、ミソラはなんて言ったのよ?」
「リーファが求婚を断った本当の理由は『俺と一緒にいたいから』だと言われたよ」
俺がそう言うと、リーファは軽く頬を赤く染めた。
……鈍感な俺だってここまで反応を見せられたらわかる。
「……まぁ、間違いではないわよ」
「そうか……その、なんで俺なんだ?」
すごく情けないことを聞いてる実感がある……
でも仕方ないだろ!!今までこんな事なんか一度も無かったんだから……
こんな情けないことを聞く俺に、リーファは軽く笑いながら言葉を返してきた。
「貴方は私を『リーファ』として見てくれたからよ。他の人は私を『ハーフエルフ』として見ていたわ。それが始まりよ」
「そ、そんなのは当たり前のことだろ?リーファはリーファだし。そこに種族による特性みたいなのはあるだろうけど、そんなのは些事だと思うからな。まぁいつまでも若い見た目のリーファと違って、こうして年老いていく俺が隣を歩くとある種の申し訳なさを感じることはあったけどな」
「あはは。ねぇベル。貴方の良いところは『当たり前のことを当たり前に出来ること』だと思ってるわ。優しくて誠実なところ。見た目は貴方の言うように歳と共に変わっていくわ。でも貴方の素敵な中身は変わらないわよ」
リーファはそう言うと俺に言葉を続けた。
「見た目なんてものに囚われないで。貴方と私の関係性はそんなものでは壊れないって思ってるわよ」
「……そうか。勝手に劣等感を抱いていたのは俺の方だったんだな」
情けない。本当に情けないな。
リーファのことをリーファとして見てるつもりが、いつの間にか彼女を『ハーフエルフ』として見てしまっていた。
こんなざまでは彼女が好きになってくれた俺ではなくなってしまうな。
そんな事を思っていた俺に、リーファは少しだけ恥ずかしそうに笑いながら言ってきた。
「でもね。今日は私と貴方の『関係性』を壊しに来たのよ」
「……え?」
緑茶を一口飲んだあと、リーファは俺の目を見ながら話をした。
「冒険者を引退する。これは誰にでもいつかは訪れるものよ。それが遅いか早いかの話。クエストで大怪我なんかをすれば、私だって明日には引退するかもしれないわ」
「まぁ、そういう仕事だからな」
だからこそ。冒険者は給料がいいし、いつ引退してもいいように退職金や年金の積立もしっかりしている。
「貴方が引退する事も私は了承してる。でもね、私はわかってなかったのよ」
「……何をわかってなかったんた?」
俺がそう聞くと、リーファは寂しそうな目をして言葉を返す。
「私と貴方の関係性は『冒険者仲間』でしかないってことによ」
「そ、そんなことは……」
あるかも知れない。現に俺は冒険者を引退したら、故郷に帰って剣術道場でも開いて暮らしていこうと思っていた。
結婚するしないは置いておいて、そこに『リーファ』の存在は無かった。
きっと彼女は『冒険者』を続けるものだと思っていたからだ。
「貴方が『婚活をする』と聞いた時には驚いたわよ。そして、私は思ったわ『私以外の者が貴方の隣を歩くのは許せない』ってね」
「……リーファ」
「でも、私は冒険者。貴方はもう引退してしまった。立場が違えば今までの関係性では一緒には居られないわ」
「そうだな」
まだまだ実力に陰りもないリーファ。
五体満足の彼女が俺に合わせて冒険者を引退するなんてことはありえない。
だとするならば、今の関係性のままだと俺と彼女の道はもう交わらない。
「だから私は貴方との関係性を壊しに来たのよ」
リーファはそう言うと、俺に向かって言葉を放つ。
その時の彼女の表情は、二十年間一緒に隣を歩いてきて一番の美しさだったと確信出来るものだった。
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