Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶

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第1章

最終話 決戦・魔獣大氾濫から王都を救え その⑦

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 最終話  その⑦



 エリックside 後編


「守護の太刀 月天流 四の型 満月の閃 雷(いかづち)」
「上級魔法 風の牙」

 俺とリーファさんは二手に分かれてレイスとゴーストの群れを殲滅していきました。

 魔獣のランクはそう高くないものの、こう数が多いとなかなかに面倒だと思ってしまう。

「なかなか面倒ですね、リーファさん。俺がヘイトを取って引き寄せますので超上級の魔法で一気に殲滅していきますか?」
「そうね。ちまちま倒しててもキリが無いわ。少し長めの詠唱に入るわね」

 リーファさんはそう言うと、少し離れた位置で杖を構えて詠唱に入る。

「さて、それじゃあ行こうかクラウ・ソラス」
『はい!!ご主人様!!』

 俺はレイスとゴースト、そしてスライムの群れの中に飛び込む。
 そしてクラウ・ソラスを地面に突き立てる。

「守護の太刀 月天流 六の型 月華の檻 大地(だいち)」

 月華の檻は対象を纏めて閉じ込める技だ。
 それに地属性魔法を込めることによって効果範囲を飛躍的に向上させる。

 半径百メートル程の土の檻に魔獣を閉じ込めたところでリーファさんの詠唱が終わったようだ。

「エリック!!逃げなさい!!」
「了解です、リーファさん」

 檻の中から風魔法と組み合わせて跳躍をして抜け出すと、リーファさんの超上級魔法が堕ちてきた。

「超上級魔法 堕ちる太陽」

 リーファさんの使う最上級の炎魔法によって俺が閉じ込めた魔獣は根こそぎ消滅していった。

「ふぅ……これでほとんどの魔獣は殲滅出来たかしら?
「そうですね。あとはポイズンスライムが少しとかだったかと」

 リーファさんと俺がそんな話をしているときです。

 俺たちからそう離れてない場所に『転移』の魔法陣が描かれました。

「転移の魔法陣!?一体誰よ、こんな高度な魔法を使うのは!!」
「魔力の質からして『魔族』のものと推測されます!!それもかなりの高レベルです!!」

 そして、魔法陣が光り輝くとそこから『一人』の魔族が姿を現しました。

『んーーーー??せっかくスタンピードを起こしてあげたのに大した成果が無いから見に来たけどイレギュラーがあったみたいだねぇ』

 深紅の髪の毛を腰まで伸ばした『女性型』の魔族。
 魔獣の上位に位置する人型の魔の者。

 人類にとっての敵。この魔族一体で国が一つ滅びるレベルの脅威だ。
 討伐ランクは低く見積ってもSSSレベル。
 Sが何個あっても足りないレベルだ……

「どうしますか、リーファさん」
「逃げましょう。と言いたいところだけど無理そうね」

 Sランク冒険者が万全の状態でパーティを組んで初めて『戦いになる』
 そんなレベルの相手に、消耗した状態のSランク冒険者二人で戦うのは無謀もいいところだと思ってしまう。

 だが……

『あはは!!私知ってるよ!!えっとね!!君が聖剣士って呼ばれてる人で、隣の人は千の魔法使いだよね!!私は物知りなのだ!!』

 無邪気な表情でこちらを指さす魔族。
 どう考えても逃げられるような相手じゃない。

『スタンピードで王国を襲う!!ってのは失敗みたいだからねー。このままだと私がお姉ちゃんに怒られちゃうからね!!君たち二人を殺して帳尻を合わせようかな!!』
「リーファさん!!来ます!!」
「エリック!!時間を稼ぎなさい!!超上級魔法の闇ノ縛鎖を使うわ!!」

 超上級魔法 闇ノ縛鎖はリーファさんが放てる最強の束縛魔法だ。如何に魔族と言えどそれからは逃げられない。
 だが、その分詠唱時間も長い。その時間を稼ぐのは俺の仕事だ!!

「行くぞクラウ・ソラス!!全力だ!!」
『了解です!!ご主人様!!いっぱい虐めてください!!』

 俺はクラウ・ソラスを天に構えて魔法を詠唱する。

「極光よ!!宿れ!!」

 瞬間。クラウ・ソラスが眩い光に包まれる。
 だが、これで終わりでは無い。

「まだまだ!!守護の太刀 月天流 終の型 狂月の夜!!」

 限界を超えた力を引き立つ終の型。聖剣クラウ・ソラスに魔族が弱点とする光属性の魔法を宿らせる。
 ここまでやってようやく『時間稼ぎ』が出来るレベルだ。

「行くぞ魔族!!殲滅してやる!!」
『私は魔族なんて名前じゃないぞ!!ルシアって名前があるんだ!!許さないぞーー!!!!』

 ルシアと名乗った魔族は、俺に向けて手を向ける。
 そして、詠唱も無しで魔法を放った。

 そう。これが魔族が驚異とされる一因。無詠唱魔法だ。

 闇属性 上級魔法 漆黒の魔弾が俺に迫り来る。

 だが、こんなものは驚異では無い。

 俺はその魔弾をクラウ・ソラスで切り裂くと、そのまま上段に剣を振りかぶり、魔族に斬りかかる。

「はぁぁぁああああああああ!!!!!!」
『ぎゃーーー!!!!』

 俺が振り下ろしたクラウ・ソラス 魔族の右腕を斬り飛ばした。
 魔族の甲高い叫び声が辺りに木霊した。

『痛いよー痛いよー……もー酷いことするなー。女の子にこんなことするなんてー嫌われちゃうよー?』

 魔族はそう言うと、俺が斬り飛ばした右腕を掴んで切り口に押し当てる。

『この身体を作るのも大変なんだからさー壊さないでよねー』
「この身体を作る……どう言う意味だ」

 俺が思わず呟いたセリフに、魔族はニマニマと笑いながら答える。

『えへへー?知りたいかー?だったら教えてあげるよ。私は優しいからね』

 魔族はそう言うと、胸を張って話を始める。

 これは時間稼ぎのチャンスだ。
 なるべくこいつに気持ちよく話をさせてやろう。

『この身体はねー私が作った『素体』って呼んでるやつなのだ!!魔界に本体があっても、この素体を使うことで人間界でも行動が出来る優れものなのだ!!』
「なんでそんなものを使うんだ?本体が人間界に来れば良いじゃないか」

 俺がそう言うと、魔族はやれやれと手を広げながら返事をする。

『私たち魔族にとって人間界の『空気』は身体に害でね。あまり長居は出来ないんだよねー。だから私は人間界でも魔族が『ある程度』力を振るえる素体を作りあげたのだ!!凄いだろー?』

 この魔族は『ある程度力が振るえる』と話をした。
 つまり、この魔族の『本気』はこんなものでは無い。ということか……

「ありがとう、ルシア。君の話はとても参考になったよ。感謝する」
『おー?聖剣士くんからの感謝の言葉に私は興奮を隠しきれないよ!!濡れちゃうね!!』

 魔族はそう言うと、両手を前に出して魔力を収束させる。

『こいつは私から君に上げるご褒美だよ!!ありがたく受け取れーー!!!!』
「女性からのプレゼントは基本的には断らないけど、手作りだけは断ってるんだ。何が入ってるかわからないからね」
『あはは!!モテる男は大変だな!!……ってなにーー!!!???』

 恐らく超上級の闇属性魔法、オワルセカイを唱えようとしていた魔族だったが、その身体に漆黒の鎖が幾重にも絡みつく。

「待たせたわね、エリック」
「あと少し遅かったらヤバかったですね」
「貴方が魔族と会話をしてくれたお陰で助かったわ」

 俺がリーファさんとそんな会話をしていると、魔族は鎖から抜け出そうと身を捩っている。
 だが、リーファさんの魔法からは逃げられないようだ。

『くそー!!!!この程度の魔法なんて本体なら余裕でひきちぎれるのにーー!!!!悔しいのだ!!』
「じゃあな、ルシア。お前のお陰で魔族のことが色々知れて良かったよ」
『ちぇー……まぁ良いか。この程度の実力ならいつでも狩れるしね。今回は顔見せ程度の予定だったしね!!』

 魔族はそう言うと、俺を見てニヤリと笑う。

『バイバイ聖剣士!!次やる時はもう少し強くなったなね?』
「……余計なお世話だ」

 俺はそう言って、クラウ・ソラスを上段から振り下ろし、魔族の身体を両断した。


「……ふぅ。お疲れ様エリック」
「こちらこそ助かりましたよリーファさん」

 俺はそう言うと、終の型を使った反動で膝を着いた。

「……これだけの強さがありながら、まだ全然本気じゃ無い。魔族は驚異ですね」
「そうね。まぁでもとりあえずは安心ね」

 リーファさんはそう言うと、俺が両断した魔族の素体を回収袋にしまいこんだ。

「これは持ち帰って研究に回しましょう」
「そうですね」

 俺はそう言ったあと、西の門へと視線を送る。
 あの魔族は『姉』が居る。と言っていた。

 もしかしたら、あの魔族の姉は……

「気を付けてください、ベルフォード師匠……」

 俺の意識はそこで途絶えてしまった。
 終の型の反動は……本当に辛い……

 これの後も普通に動ける師匠は化け物だ……
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