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「ご主人様、聖女様がいらっしゃいました。来客中だとお断りしたのですが…。」
困り顔で部屋を訪れたのは執事のウォルシュさん。先代公爵から仕えてくれている、年は50代前半くらいかな?ロマンスグレーのイケオジ様だ。
貴族は他家を訪問する時はまず先触れを出し、承諾を得てからが常識らしいが、聖女は毎回アポなし。いわく、
「わたくしが善意でしている事…お気になさらないで。」
いや、こっちは遠回しに来ないでって言ってるんだけど。
「公爵家からしたらわたくしは所詮平民ですもの…客間など通していただけるはずもございませんわ…いいんですの…外でお待ちいたしますわ…うっ…う。」
「聖女様…お痛わしい…。」
と、侍女(?)共々さめざめと涙する寸劇が繰り広げられるのだと。
「アレクシオン様!お待たせいたしましたわ。お辛かったでしょう?わたくしが参りましたわ。」
勢いよくドアを開けて聖女登場。
…いや、待ってないし、誰も案内してないよね?もう部屋覚えたから勝手に入ってきたのかな?家の侍女達が後ろであたふたしてる。
「相変わらず無礼な振舞いですこと。」
アレクサンドリアさん…回りの空気が凍ってます。先ほどまでの人懐っこい妹ちゃんとは打って変わった冷たい顔。さすが悪役令嬢。
「まあ…アレクサンドリア様…いえ、ローサン伯爵夫人とお呼びすべきかしら?わたくし、来客中とは存じ上げなくて…。」
言ったよね?
「元は平民とはいえ今は聖女の身…伯爵家より位は上のはずですのに…まだわたくしを見下すのですのね…ううっ。」
うわー皆イラついてるわー。
「おあいにく様、この度晴れて出戻った私はあなたより高位の公爵令嬢ですの。おほほほほっ!」
…アレクサンドリアさん。
「まあ…どんな粗相をなさって?」
「ハッ!白々しい!あの人が死んだ原因、物質運搬の後方支援部隊所属だった夫が前線に送られた理由を知らないとでも思ってらっしゃるの?」
「亡くなられたの?…もしかして…そんな!誤解ですわ。…わたくし、「ローサン伯爵は正義感の強い立派な方です。」って…会議でちょっとお話しただけですのよ。よかれと思ってお褒めしただけですのに…。」
つまり、聖女の一言でアレクサンドリアの夫は前線に送られ、帰らぬ人となったのか。
戦だから命を落とすこともあるだろうけど、そんないきさつがあったなんて。
「ともあれ尊い犠牲ですわ。ご冥福をお祈りいたします。」
両手を胸の前で組み微笑みを浮かべ祈る。
「くっ…。」
アレクサンドリアは拳を強く握りしめてこみ上げる怒りに耐えていた。
困り顔で部屋を訪れたのは執事のウォルシュさん。先代公爵から仕えてくれている、年は50代前半くらいかな?ロマンスグレーのイケオジ様だ。
貴族は他家を訪問する時はまず先触れを出し、承諾を得てからが常識らしいが、聖女は毎回アポなし。いわく、
「わたくしが善意でしている事…お気になさらないで。」
いや、こっちは遠回しに来ないでって言ってるんだけど。
「公爵家からしたらわたくしは所詮平民ですもの…客間など通していただけるはずもございませんわ…いいんですの…外でお待ちいたしますわ…うっ…う。」
「聖女様…お痛わしい…。」
と、侍女(?)共々さめざめと涙する寸劇が繰り広げられるのだと。
「アレクシオン様!お待たせいたしましたわ。お辛かったでしょう?わたくしが参りましたわ。」
勢いよくドアを開けて聖女登場。
…いや、待ってないし、誰も案内してないよね?もう部屋覚えたから勝手に入ってきたのかな?家の侍女達が後ろであたふたしてる。
「相変わらず無礼な振舞いですこと。」
アレクサンドリアさん…回りの空気が凍ってます。先ほどまでの人懐っこい妹ちゃんとは打って変わった冷たい顔。さすが悪役令嬢。
「まあ…アレクサンドリア様…いえ、ローサン伯爵夫人とお呼びすべきかしら?わたくし、来客中とは存じ上げなくて…。」
言ったよね?
「元は平民とはいえ今は聖女の身…伯爵家より位は上のはずですのに…まだわたくしを見下すのですのね…ううっ。」
うわー皆イラついてるわー。
「おあいにく様、この度晴れて出戻った私はあなたより高位の公爵令嬢ですの。おほほほほっ!」
…アレクサンドリアさん。
「まあ…どんな粗相をなさって?」
「ハッ!白々しい!あの人が死んだ原因、物質運搬の後方支援部隊所属だった夫が前線に送られた理由を知らないとでも思ってらっしゃるの?」
「亡くなられたの?…もしかして…そんな!誤解ですわ。…わたくし、「ローサン伯爵は正義感の強い立派な方です。」って…会議でちょっとお話しただけですのよ。よかれと思ってお褒めしただけですのに…。」
つまり、聖女の一言でアレクサンドリアの夫は前線に送られ、帰らぬ人となったのか。
戦だから命を落とすこともあるだろうけど、そんないきさつがあったなんて。
「ともあれ尊い犠牲ですわ。ご冥福をお祈りいたします。」
両手を胸の前で組み微笑みを浮かべ祈る。
「くっ…。」
アレクサンドリアは拳を強く握りしめてこみ上げる怒りに耐えていた。
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