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    クラウディア視点

 結婚式は皇族と新婦の親族、神官のみで行われる。
 この日は城が解放され、式が終わると城の正面テラスに一同が並び、皇太子夫妻が国民に披露される。
 その日の夕方には披露パーティーがひらかれるが、侯爵以上の貴族と外国からの招待客が参加できる。
 男爵であるリリアンが参加できないのを少しほっとしている自分が嫌だ。
 披露パーティーではシャンパンゴールドのドレスにカイル殿下の瞳の色のブルーダイアのネックレス。ティアラにもブルーダイアがあしらわれている。ブルーダイアはかなり貴重な宝石だ。
 カイル殿下にエスコートされ会場に入る。
 朝から式の間もずっと沈黙している。
 もうずっと前から決まっていた結婚だけれど、俺と同じで何か思うところがあるのだろう。
 ダンスが始まり向かい合うと、ようやく口をひらく。
「クラウディア…その宝石は私が選んだのだけど、どうかな?」
「たいへん貴重な宝石をありがとうございます。わたくしに似合うでしょうか?」
 他にもっと似合う人がいたのではないか。
「とても似合っている。
 君は私にとって特別な人だ。
 だから特別な物を贈りたかったのだ。」
 驚いた。
 そんな事が言えるようになったとは。
 顔を見れば優しく微笑んでいる。
「あ…ありがとうございます。」
 頬が熱くなるのがわかる。
「ウェディングドレス姿もキレイだった。
 ごめんね、緊張していて気のきいたことは言えなくて。」
 何だろう、こんなふうにカイル殿下を意識した事は無かった。
 やはりこれから迎える初夜を意識しているからか?
 …初夜。
 どうしよう。
 刻々と時間はすぎ、もうベッドの上で向かい合って座っている。
 カイル殿下が神妙な面持ちで。
「クラウディア…私は不誠実な夫だ。
 正直に言う。
 私は今でもリリアンが好きだ。
 だけど私には君が必要だ。」
 そうだ、皇太子にはザカリー侯爵家の後ろ楯が必要なのだから。
「君は知っているだろう。
 私の母は皇后とは名ばかり。
 美しかった母は隣国アステリアから皇帝である父に是非にと望まれ嫁いだが、深窓の姫だった母は帝国には馴染めず、自国から呼び寄せたもの達と離宮で過ごす日々。
 父王は父王で側妃を迎え入れては飽きたら次から次へと新しく妃を迎える。
 私は両親に省みられる事もなく、使用人達に甘やかされ育った、バカで傍若無人な子供だった。
 そんな私を正し、導いてくれたのは君だ。
 君が城に来るのを待ち遠しく思い、帰れば寂しく、次はいつ来るのかと聞いてばかりいた。
 城に泊まれば「おやすみ」と「おはよう」の挨拶が嬉しくて、私にとって君はもうずっと前から家族だったのだ。 
 私は君を愛している。
 リリアンを好きな気持ちとは違うけれど、確かに君を愛している。
 こんな私だか、これからも家族でいてくれないか?
 身勝手な願いだけれど、これからも私を支え、道を間違えれば正してくれないか?
 私は君の期待に応えるため、精一杯努力するから。
 …クラウディア?」
 
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