8 / 9
はち
しおりを挟む本人から告げられた年齢に、まじまじと顔を覗き込む。リューナの知っている神歴と、ライの言う神歴は別物なのだろうか。
「不老長寿なの?」
「ここの時間の流れが違うって言ってるだろう。それだけが理由でもないが、まぁとにかく、俺はそれだけ生きてる。暇を持て余すのもわかるだろう?」
途方もない時間に想像が追いつかない。目の前の男は、どれだけ一人で朝を迎えたんだろう。
「わかるわけがない。こちとら日々生きることに必死で、それでも二〇年も生きてない小娘なので、暇つぶしに呪いかけるような思考は理解ができない」
「契約だって言ったろう。それを呪いって……本質捉えてきてるじゃねぇか」
なかなかに筋がいいぞ。そう言ってにやりと笑う表情は、うん、やっぱりどこかジェットに似ている。
「それで? おたくが乗ってきたゲームだ。勝算はおありで?」
「それが全く。胸のあざに違和感があるだけで、手がかりも何もないもの。これでも考えたんだけど、知らないことしかないのよね。ということで、教えを乞いたいんだけど」
これ、とライの手元にある本を指差す。
「これ、読めるようになりたいの。教えて欲しい」
「好きに過ごしていいって言っただろう。どれでも読んだらいい」
「さっき入ってきたときから本棚の背表紙が見えてるけど、私の読める文字じゃないみたいで。他所の言語なの?」
これでも一応、博識だった両親から教育は受けている。村でも珍しく、読み書きができる部類に属していたのだ。同世代との関わりが少なかっただけで、最低限よりも知識はあると自負していたが。
「この国の言葉であることは変わりないが。そうだな、ほとんど伝わってないなら古語くらいにはなってるかもしれないな。その辺りはピス、お前の方が詳しくないか?」
「外だと、その本が読める人間の方が珍しいよー。もうずっと前に禁書にされてるはずだもん。こんな綺麗な状態であったら、中央の教会の奥とかに保管されてそう」
ま、本自体がほとんど現存してもないんだろうけどね! と、明るく言い放つピステルはすごく得意げだった。
「まだ古代語まではいってないけど、人間の世代交代って早いから。価値観も時代ごとに推移していくし。そんな中でライってば、進んで取り残されいくんだから変人よねー」
なんでもないことのように、ふわふわと漂いながらさらりと話す。
「だそうだ。俺が変人なのは否定しないが、文字自体理解できてるなら、すぐに読めるようにはなるだろう。内容は教えてやるから、まずは読み方を……ピス、教えてやれ」
「それはいいけど、なんでライが教えないのよ」
「俺の読んでる本がそいつの現代語とズレてるって今知ったんだぞ。逆も然りだ、教えようがないだろう」
「私の勤勉さが仇になるだなんて!」
そう、か。会話は違和感なくできてるから問題ないけど、読める文字が違えば通訳が必要になってくるのか。でも、ずっと間に入ってもらうのも心苦しい。となると。
「ピステル、私からもお願い。なるべく早く覚えるように努力するから!」
教えを乞う側である自分が覚える方が早い。
それに、今話していてまた気になることもできた。確かめるためにも、ピステルに他にも話がしたい。
この通り! と拝み倒すように頭を下げる。少しオーバーかな。
「だからいいよって! そんなにしなくても教えるって!」
忙しなくパタパタと上下しながら、ピステルは快諾してくれた。
それじゃあ、専門的じゃなくて読みやすそうな本から攻略していこうか。と、それとあれとどれと……と本棚からいくら抜きだすように指示される。
「ライも、外で使われてる現代文のお勉強する?」
「そのうちな。今はいいから、そいつにまずは教えてやってくれ」
ゲームを進めるにも土台づくりからだろ。
そう言われて、図書室から追い出された。
0
あなたにおすすめの小説
「やはり鍛えることは、大切だな」
イチイ アキラ
恋愛
「こんなブスと結婚なんていやだ!」
その日、一つのお見合いがあった。
ヤロール伯爵家の三男、ライアンと。
クラレンス辺境伯家の跡取り娘、リューゼットの。
そして互いに挨拶を交わすその場にて。
ライアンが開幕早々、ぶちかましたのであった。
けれども……――。
「そうか。私も貴様のような生っ白くてか弱そうな、女みたいな顔の屑はごめんだ。気が合うな」
転生者と忘れられた約束
悠十
恋愛
シュゼットは前世の記憶を持って生まれた転生者である。
シュゼットは前世の最後の瞬間に、幼馴染の少年と約束した。
「もし来世があるのなら、お嫁さんにしてね……」
そして、その記憶を持ってシュゼットは転生した。
しかし、約束した筈の少年には、既に恋人が居て……。
【完結】断罪された占星術師は、処刑前夜に星を詠む
佐倉穂波
恋愛
星は、嘘をつかない。嘘をついていたのは——わたし自身だった。
王宮の卜部に勤める十七歳の占星術師リュシア・アストレアは、ある日、王太子妃候補の婚儀に「凶」の星を読んだ。星が告げるままに報告したに過ぎなかったのに、翌朝には牢に入れられていた。罪状は「占星術を用いて王家を惑わせ、王太子暗殺を画策した」こと。
言いがかりだ。
しかし、証明する術がない。
処刑は五日後の朝と告げられ、リュシアは窓もない石の牢に閉じ込められた。
そこで彼女は気づいてしまう。占いが外れ続けていた本当の理由に。
道具も星図もない暗闇の中で、生まれて初めて、星の声を正しく聞いた。
瞼の裏に広がる夜空が、告げる。
【王太子が、明後日の夜に殺される】
処刑前夜に視た予言を、誰が信じるというのか。それでも、若き宰相クラウス・ベルシュタインは深夜の牢へ足を運び、断罪された少女の言葉に耳を傾けた。
二人の出会いは、運命をどう変えていくのかーー。
異世界からの召喚者《完結》
アーエル
恋愛
中央神殿の敷地にある聖なる森に一筋の光が差し込んだ。
それは【異世界の扉】と呼ばれるもので、この世界の神に選ばれた使者が降臨されるという。
今回、招かれたのは若い女性だった。
☆他社でも公開
私には婚約者がいた
れもんぴーる
恋愛
私には優秀な魔法使いの婚約者がいる。彼の仕事が忙しくて会えない時間が多くなり、その間私は花の世話をして過ごす。ある日、彼の恋人を名乗る女性から婚約を解消してと手紙が・・・。私は大切な花の世話を忘れるほど嘆き悲しむ。すると彼は・・・?
*かなりショートストーリーです。長編にするつもりで書き始めたのに、なぜか主人公の一人語り風になり、書き直そうにもこれでしか納まりませんでした。不思議な力が(#^^#)
*なろうにも投稿しています
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。
三回目の人生も「君を愛することはない」と言われたので、今度は私も拒否します
冬野月子
恋愛
「君を愛することは、決してない」
結婚式を挙げたその夜、夫は私にそう告げた。
私には過去二回、別の人生を生きた記憶がある。
そうして毎回同じように言われてきた。
逃げた一回目、我慢した二回目。いずれも上手くいかなかった。
だから今回は。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる