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はち
しおりを挟む本人から告げられた年齢に、まじまじと顔を覗き込む。リューナの知っている神歴と、ライの言う神歴は別物なのだろうか。
「不老長寿なの?」
「ここの時間の流れが違うって言ってるだろう。それだけが理由でもないが、まぁとにかく、俺はそれだけ生きてる。暇を持て余すのもわかるだろう?」
途方もない時間に想像が追いつかない。目の前の男は、どれだけ一人で朝を迎えたんだろう。
「わかるわけがない。こちとら日々生きることに必死で、それでも二〇年も生きてない小娘なので、暇つぶしに呪いかけるような思考は理解ができない」
「契約だって言ったろう。それを呪いって……本質捉えてきてるじゃねぇか」
なかなかに筋がいいぞ。そう言ってにやりと笑う表情は、うん、やっぱりどこかジェットに似ている。
「それで? おたくが乗ってきたゲームだ。勝算はおありで?」
「それが全く。胸のあざに違和感があるだけで、手がかりも何もないもの。これでも考えたんだけど、知らないことしかないのよね。ということで、教えを乞いたいんだけど」
これ、とライの手元にある本を指差す。
「これ、読めるようになりたいの。教えて欲しい」
「好きに過ごしていいって言っただろう。どれでも読んだらいい」
「さっき入ってきたときから本棚の背表紙が見えてるけど、私の読める文字じゃないみたいで。他所の言語なの?」
これでも一応、博識だった両親から教育は受けている。村でも珍しく、読み書きができる部類に属していたのだ。同世代との関わりが少なかっただけで、最低限よりも知識はあると自負していたが。
「この国の言葉であることは変わりないが。そうだな、ほとんど伝わってないなら古語くらいにはなってるかもしれないな。その辺りはピス、お前の方が詳しくないか?」
「外だと、その本が読める人間の方が珍しいよー。もうずっと前に禁書にされてるはずだもん。こんな綺麗な状態であったら、中央の教会の奥とかに保管されてそう」
ま、本自体がほとんど現存してもないんだろうけどね! と、明るく言い放つピステルはすごく得意げだった。
「まだ古代語まではいってないけど、人間の世代交代って早いから。価値観も時代ごとに推移していくし。そんな中でライってば、進んで取り残されいくんだから変人よねー」
なんでもないことのように、ふわふわと漂いながらさらりと話す。
「だそうだ。俺が変人なのは否定しないが、文字自体理解できてるなら、すぐに読めるようにはなるだろう。内容は教えてやるから、まずは読み方を……ピス、教えてやれ」
「それはいいけど、なんでライが教えないのよ」
「俺の読んでる本がそいつの現代語とズレてるって今知ったんだぞ。逆も然りだ、教えようがないだろう」
「私の勤勉さが仇になるだなんて!」
そう、か。会話は違和感なくできてるから問題ないけど、読める文字が違えば通訳が必要になってくるのか。でも、ずっと間に入ってもらうのも心苦しい。となると。
「ピステル、私からもお願い。なるべく早く覚えるように努力するから!」
教えを乞う側である自分が覚える方が早い。
それに、今話していてまた気になることもできた。確かめるためにも、ピステルに他にも話がしたい。
この通り! と拝み倒すように頭を下げる。少しオーバーかな。
「だからいいよって! そんなにしなくても教えるって!」
忙しなくパタパタと上下しながら、ピステルは快諾してくれた。
それじゃあ、専門的じゃなくて読みやすそうな本から攻略していこうか。と、それとあれとどれと……と本棚からいくら抜きだすように指示される。
「ライも、外で使われてる現代文のお勉強する?」
「そのうちな。今はいいから、そいつにまずは教えてやってくれ」
ゲームを進めるにも土台づくりからだろ。
そう言われて、図書室から追い出された。
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