帝は傾国の元帥を寵愛する

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2章

44話 愛玩動物?

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それからのルーカスは、顕著だった。

食後には必ずデザートを寄越し、菓子を揃えて、部屋に行くことも了承し、酒を用意してくれる。
そして二人きりになれば、何の前触れもなく口付けてくる。
そして夜は健全に(?)抱き合って眠る。

その生活が当たり前になるまで、そう時間はかからなかった。

もっとも、この男は元来、口数の多いタイプではない。
何かを語るより、与えることで示す性質なのだと、最近ようやくわかってきた。

少しずつ聞いた話によれば、ルーカスは軍事系貴族の三男で、
実際に軍に所属しているのは彼一人だけらしい。

さらに姉が二人おり、どちらも婿養子を迎えている。
その婿たちは揃って軍人で――つまり軍の中には、義理の兄が二人いることになる。

実家の邸宅では家族。
職場では、上司。
……ややこしそうだ。

その姉たちは、性格もなかなかに面白いらしく、
ときおり冊子を送ってきてくれる。

帝都の裏情報を寄せ集めた、簡素な紙刷りの新聞――
《ショカッター》と呼ばれるそれは、下世話な噂話や怪しげな情報ばかりを載せた、半ばゴシップ誌のような代物だ。

「暇つぶしにはなる」

ルーカスはそう言って、俺は度々転がって読んでいた。

そんなふうにして、俺たちは日々を過ごしていた。
執務室の仕事も順調だったし、帰り道に待ち伏せする奴も現れなかった。

しかし、軍寮という場所は男だらけだ。
その中で、俺という存在はどうしても異質だった。

言ってしまえば――
ルーカスが俺を独占しているようなもの。

だから、俺にとってはルーカスがいない時のほうが賑やかになった。
誰からともなく話しかけてきて、あれこれと取り留めのない話をして、笑って過ごす。

だが、ルーカスが姿を見せると、空気が変わる。

すすす……と、
まるで潮が引くみたいに、皆が距離を取っていく。

何かを言われたわけでもない。
叱られたことがあるわけでもない。
ただ、自然と遠慮が始まる。

その代わり、ルーカスがいない時にだけ、こっそりと聞かれた。

「ね、付き合ってるの?」
「リュクスは、好きなの?」
「迷惑じゃないの? あれ」

問いかけの向きは、俺に向いているようで、
実際には――彼の方を気にしている。

どうやら周囲からは、
俺が口説いているというより、
ルーカスが気に入って、独占している
そう見えているらしかった。

中には、こんなことを聞いてくる者までいた。

「ねえ、ルーカスって……めちゃくちゃ、でかいって本当?」

――本当だ。

それはもう、
平常時ですら存在感がありすぎて、
そんな質量でよく成立しているな、と
思わず理屈を探したくなるほどに、重たく、だらしなく垂れ下がっている。

……とは、
さすがに言えなかった。 

「いや、(でかくなった時は)知らないよ?」

そう返すしかない。
しかしながら本当に、ルーカスが本気を出したところを、俺はまだ見たことがない。

あの、だらりと垂れ下がった状態の大きさから、
さらに力を得て何倍にもなる場合もあるし、
ほとんど変わらず、ただ少々硬くなるだけの人もいる。
そこは完全に個人差だ。

……まあ、
気になっていないと言えば、嘘になる。

いつも布団の下で、ふと当たるそれは――
どうにも、前者の気配を帯びているような、
そんな気もしていた。



ルーカスは、だいたい二十時に風呂へ入る。

今日は、脱衣所に足を踏み入れた瞬間、背後から抱き寄せられ、頭に口付けられた。
それから、顔を覗き込むようにして――キス。

「……可愛い」

……。

ちら、と下腹部に視線を落とす。
そこは、どうにもなっていなかった。

こいつは、俺を愛玩動物だと思っている!

服を脱いで身体を洗っていると、ルーカスが石鹸を奪い、泡立てた。
そのまま――リュクスを洗い始める。

「きゃっ!」

自分でも驚くほど高い声が出た。

「な、なに?!」
「洗ってやる」
「いいよ!」
「駄目」

大きな手が、腹から、首元、肩、脇へとなぞる。
それから胸――突起に触れられ、思わず「ん……」と声が漏れた。

顔は見えない。

抱くように背中を擦られ、肩甲骨の間から下へ。
腰回り、太もも、そして、その――間。

「……いや、そこは……」

ぬるぬるとした石鹸のついた手で撫でられるだけで、不埒なことを考えていなくとも、そこに強度が走る。

それを、ゆっくりとなぞられる。
だが執着することなく、手は尻へと滑る。

皺を伸ばすように、丁寧に表面を洗われる。

「……っ」

リュクスは、小刻みに震えていた。

(なんなんだ……ルーカス。
 いつも、こんなことしないのに)

――もしかして、ついに?

今日、部屋で?

身構えながらも、
なぞられる感触は気持ちよく、
その先を、どうしても期待してしまうのだった。

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