帝は傾国の元帥を寵愛する

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2章

52話 世界で一番安全な場所 ※

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ルーカスがリュクスの体にある傷跡の一つひとつに口づけを落とし終わる頃には、リュクスの体はすっかり熱を帯びていた。

それは安堵でもあり、快感でもあり、同時にひどく焦らされているようでもあった。
 ルーカスの少し濡れたままの髪先が、熱い肌に冷やりと触れるたび、リュクスはびくりと背を震わせる。

不意に、ルーカスの指先が胸の頂をきゅ、と摘んだ。

「ひあっ」

目を閉じて身を任せていたリュクスは、突然の鋭い刺激に甲高い声を上げてしまう。 その反応にルーカスの口角が微かに上がったことに、リュクスは気づかなかった。

ルーカスは愛おしげに口づけを繰り返しながら、指先では執拗に頂を弄り、もう片方の手はゆっくりと下へ滑り降りていく。

「あ、んん……っ」

リュクスは声を漏らそうとするが、すぐに唇を塞がれ、舌を絡め取られた。 まるでリュクスの全てを飲み干すかのように唾液を吸い上げられ、甘い水音だけが部屋に響く。

その隙に、ルーカスの手がリュクスの陰茎を撫でた。 リュクスは羞恥に頬を染め、どんな顔をすればいいのかわからなくなる。

恐る恐る目を開けると、ルーカスは真剣な瞳でリュクスだけを見つめていた。 視線が絡み合ったまま、下半身の手がゆっくりと動き出す。

「んぁ……っ、あ……」

恥ずかしさよりも気持ちよさに抗えず、リュクスはあられもない声を漏らした。 その時、自身の太ももに、大きく硬い熱を持ったものが当たっていることに気づく。

リュクスは無意識に手を伸ばし、それに触れた。

——その瞬間、思考が止まる。

それは、リュクスの片手ではとても握りきれないほどの質量と熱を持っていた。

(大きすぎだろ……)

「ルーカス……これ……」

「大丈夫」

ルーカスは短く、穏やかに答える。

(……何がだ!?)

リュクスは急激に不安になった。 ルーカスは清楚だ。令嬢たちが列を作って求婚するような高潔な男だ。 男とのやり方なんて、本当は知らないんじゃないか……?

(こんな大きさで、素人が無理やり入れたら……壊れる。俺が教えた方がいいんじゃ……)

だが、それは完全な杞憂だった。

ルーカスはリュクスの膝裏を優しく抱え上げ、薔薇の香り高いオイルを指先にたっぷりと絡めた。 冷たくぬるりとしたオイルが、後孔の窄まりに触れるたび、リュクスは小さく震えた。

「は……っ」

ルーカスの指は本当に優しかった。 入口の敏感な襞を、ゆっくりと円を描きながら撫で、ほぐし、溶かすように塗り込んでいく。 オイルが体温で温まり、滑りが良くなるにつれて、リュクスは甘い吐息を漏らした。

……ん、これなら、痛くないかも。

そう思った瞬間、ルーカスが自身の熱を押し当ててきた。 赤黒く脈打つ、恐ろしく大きな先端が、窄まりをゆっくり、ゆっくりと割り開く。

「んっ……ルーカス、やっぱでかすぎ……るって……待って、待って……」

掠れた声で懇願すると、ルーカスは「大丈夫」と低く甘く答えて、ほんの少しずつ奥へ沈めていった。

「リュクス、息吐いて」

「……は……」

リュクスは言われた通り、強張っていた体を呼吸で落ち着ける。 
入口はオイルのおかげでぬるりと受け入れてはいるが、やはり物理的な大きさは焼けるような痛みを伴った。

「う……あ……痛いよ、ルー兄……」

リュクスはルーカスの腕をきつく握りしめる。だが、そう零したのも束の間だった。

ルーカスの先端が、おへそ側にある危うい場所にぴたりと触れた瞬間、雷鳴のような強烈な快感がリュクスの下腹を直撃した。

「ふぁあっ……!?」

リュクスは目を見開き、背を弓なりに仰け反らせた。 なに、これ……!?

危うい場所を軽く擦られただけで、頭の芯まで溶かすような電流が走り抜ける。 自分の陰茎がびくんと跳ね、先端から透明な蜜が糸を引いて零れた。

さらに、みっちりと内壁を満たされる重い熱。 
リュクスは息を乱し、涎が唇の端から滴る。

「あ……っ、なにこれ……ルーカスの、すごすぎる……っ。こんなの、気持ちよすぎて……」

甘く蕩けた声が漏れる。 入口の痛みはもう遠く、代わりに危うい場所から湧き上がる、男同士でしか知り得ない禁断の悦びだけが全身を支配していく。

ルーカスの熱いものはリュクスの中にぴったりと吸いつき、脈動さえ伝わってくる。
しばらく優しく、小刻みな抽挿で慣らされるとリュクスは揺れながら、もっと欲しい……と感じはじめた。

安心して先を望んだ次の瞬間—— ルーカスの先端が、さらに深い最奥の壁に、ずん、と重く、容赦なく当たった。

「っ……痛いっ!」

リュクスが鋭く悲鳴を上げ、涙がにじむ。 最奥が強引に押し広げられるような、鈍い痛み。 下腹の奥がズキズキと疼き、息が詰まった。

ルーカスの大きなものが奥まで全部入ろうとすると、どうしてもそこに届いてしまうのだ。

ルーカスは最奥で動きを止め、リュクスの腰を優しく撫でながら、もう片方の手をリュクスの陰茎に滑らせた。 そして、親指と人差し指で亀頭の先端——鈴口の周りを、オイルまみれの指でぬるぬると、執拗に、甘く擦り始めた。

「ひぁっ……!?」

リュクスは混乱に身体を震わせた。 最奥の痛みがまだ残っているのに、陰茎の最も敏感な先をこんなに優しく、でも激しく刺激されたら—— 痛みの輪郭が、じわじわと溶け、熱い蜜のような快感に塗り替えられていく。

「痛いのに……っ、なんで……こんなに気持ちいいの……? 俺、こんなの知らない……っ、ルーカス……!」

涙声で喘ぐリュクスの耳元に、ルーカスが熱い息を吹きかけながら囁いた。

「リュクス……大丈夫。俺がよくするから」

その声はいつも通り清らかで、真面目で、優しくて……なのに、言っていることはひどく支配的だ。

腰がゆっくりと動き始める。 
最奥の痛みを残したまま、危うい場所を甘く擦りながら、浅く、深く、浅く、深く。

「あっ、あぁっ……! ルーカス……腰っ……動かすなっ……って……」

「駄目」

(エロすぎる……っ。こんな動き、するなんて……真面目で優しいルーカスが、こんなことするなんて……)

リュクスはもう理性が飛んでいた。
 最奥の痛みは、陰茎の先を刺激され続けるうちに、強制的に快楽を覚えさせられ、「もっと奥まで突いてほしい」という切ない渇望に変わっていった。

危うい場所を擦られ、最奥を重く圧迫され、自分の陰茎がルーカスの指でしごかれるたび、満ち足りた、溶けるような悦びに変わる。

「全部きもちいい……っ、だめ……ルーカス、おかしくなる……」

リュクスは涎と涙を混ぜながら、甘く絶叫した。 ルーカスは微笑みながら、腰を少し速く、深くした。

腰の動きに合わせてリュクスはもう、「あ…、あ…、」と喘ぎ声を出すしかできない。しかし無意識に、リュクスの腰はより快楽を求めて小さくうねっている。
ルーカスはそれに気づくと、さらに賜物に熱が宿る。

「んぁぁぁ……」
「リュクス……可愛い。もういきたいの」

「や、やだっ……」
「じゃあ我慢して」

ルーカスは少し腰を抱え、角度を変えて奥を定めると反応が変わる。

「あ゛、んぐっ……んっ、ダメ、いく……っ!」

「可愛い」

その言葉に、リュクスはもう何も考えられなくなって熱くて最も正直なものを放った。
真面目で優しいはずの恋人が与える甘い衝撃に全身を委ねながら、リュクスは初めての深い、濃厚な快楽に蕩けるように溶け落ちていった。

同時に、ルーカスも濃く熱いものをリュクスの中に放った。

しばらく、汗ばんだ体で抱き合った後、ルーカスはゆっくりと深く繋がっていた熱を抜いた。

ぬるりと零れたオイルと蜜が太腿を伝い、リュクスの身体はまだ小刻みに震えていた。 はじめての深い場所での絶頂。その余韻が甘く残り、息すらまともに整わない。

ルーカスはベッドから起き上がり、リュクスに優しくキスを落とすと、 「待ってて」 と囁いて、軽く身支度し部屋から出た。

しばらくして戻ってきたルーカスは、湯気の立つお湯を汲んだ銀のボウルを手にしていた。 熱いお湯の香りが、薔薇のオイルと混じって部屋に甘く広がる。

リュクスはぐったりと横たわったまま、ぼんやりとそれを見ていた。 ルーカスがベッドに戻り、ボウルをサイドに置くと、タオルをお湯に浸し、丁寧に絞って、リュクスの身体にそっと当て始めた。

「熱……」

リュクスが小さく息を漏らす。 でも、その熱さは心地よく、汗ばんだ肌を優しく溶かすようだった。

ルーカスは本当に丁寧だった。 首筋から肩、胸、腹、そして太腿の内側まで、汚れた部分を一つ残らず、ゆっくりと拭っていく。 特に、結合していた場所の周りは、恥ずかしくなるほど優しく、細やかに。

オイルと自分の蜜でべとついた肌を、熱いタオルで包み込むように拭われ、リュクスはまた甘い吐息を漏らした。

リュクスはぼんやりと思う。
 拭かれるたびに、身体がくすぐったくて、でも心地よくて、ルーカスの指先が肌を滑る感触に、胸がきゅんとする。

(もしかして、もしかして俺は……)

ルーカスの手が、リュクスの背中を起こして、背中側も拭いてくれている。
熱いタオルが傷跡をなぞるように滑り、まるでさっきのキスを思い出させるように、優しく、優しく。

愛してる、結婚しようと言われた時は、まだどこか夢のようで信じきれなかった。
でも、汚れた俺をこんなにも愛おしそうに拭う指先は、何よりも雄弁にその愛を物語っている……

リュクスは思考をやめた。 もう、抗えないほどに眠い。
ルーカスの温かな胸元に顔を寄せると、何も言わずに眠りに落ちた。


そこはリュクスにとって、おそらく世界で一番、安全な場所だった。
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