帝は傾国の元帥を寵愛する

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3章

【10万字達成記念番外編】白濁の代償、甘い余韻 ※

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白濁の代償、甘い余韻


その日の情事は、いつにも増して熱を帯びていた。 
すでに何度か絶頂を迎え、身体の芯まで蕩けたような余韻の中にいたリュクスは、まだ自分を貫き、重い呼吸を繰り返すルーカスを見上げた。
 端正な顔を歪め、必死に理性を保とうとしている恋人。 
その姿が、リュクスの嗜虐心をちりりと刺激した。

「……ね…、ルーカス…っ」

リュクスは息を短く吐きながらも、上目遣いに、わざと挑戦的な笑みを浮かべる。

「お前の、……俺の顔にかけてよ。この『美男子』の顔、汚したくない?」

ルーカスは動きを止め、射抜くような視線でリュクスを凝視した。
沈黙が支配する中、彼の瞳の奥で、真面目な理性がじりじりと焼け落ちる音が聞こえた気がした。 
ルーカスは答えの代わりに、リュクスの唇を塞ぐような、深い、深い口づけを落とした。 

「んっ……」

しばらく甘く腰を動かすと、ぬるりと熱を抜き出す。
そして自身の先端を己の手で執拗にしごき始めた。

「っ、あ……」

ルーカスが低く、獣のような吐息を漏らした瞬間。 
熱い衝撃が、リュクスの頬や額に重く、思い切り降り注いだ。 

自分をすみずみまで開発した男の、生々しい証。
ルーカスの達する瞬間の、余裕を失った顔、乱れた呼吸……全て間近で見届ける。

(……最高だ、これ)

リュクスはご満悦だった。 
さらに追い打ちをかけようと、彼は口元に残ったルーカスの賜物、禍々しくも愛おしい魔物にちろりと舌を這わせた。
 「綺麗にしてあげる」と言わんばかりの、あまりにも淫らで献身的な仕草。

白濁にまみれたリュクスの顔は汚れていてもなお美しい。
白く美しい頬に、赤黒い賜物を対比させるようにあえて見せつける。
赤くチロチロと動く湿った舌を、ルーカスはまじまじと見つめていた。
その表情は、どこか苦しげで、熱に浮かされている。

(ふふふ、効いてる! 絶対に背徳感にやられてる……!)

リュクスが内心で勝利の笑みを浮かべた、その時だった。 
我に返ったルーカスが、少し慌てた様子で近くにあった布を手に取った。 

「……、今拭く」 いつも冷静なルーカスの指先が、珍しく微かに震えている。
 だが、その焦りが災いした。

「痛っ……!?」

拭われた瞬間、まだ粘り気の残った白濁が、リュクスの右目に滑り込んだ。

「うわぁぁぁん! ルーカス、ひどい! お前の精液、俺の目に入った……!」

強烈な刺激に、リュクスは反射的に顔を覆った。

「……ごめん」

ルーカスが、消え入りそうな声で謝る。
あの完璧な彼が、本気で申し訳なさそうに眉を下げている。 

「うわーん、うわーん!」
 リュクスはわざと大袈裟に泣き真似をしてみせたが、実際に目に染みて痛いのは本当だった。


計画では、汚された顔のままルーカスを虜にするはずだったのに。
 涙目で、充血した右目を押さえながらルーカスを睨みつける。

(くっ……なんでいつもこうなるんだ俺は……!)

「……可愛い」

「お前!!」

 リュクスは即座に怒鳴った。 

「人が痛い思いしてるのに、何が『可愛い』だよ! 反省してるのか!?」

「うん。……でもリュクスは可愛い」

ルーカスは真面目な顔で、しかし逃れられないほどの熱量を込めて断言した。
 何を言っても無駄だ。
この男は、俺が泣こうが喚こうが、結局は愛おしさで塗りつぶしてしまう。

リュクスは毒気を抜かれ、反論するのも面倒になってしまった。

 「……もういい。腕」 

短く命じると、ルーカスは腕を差し出し、リュクスを包み込むように抱き寄せた。

「はぁ……」 

ルーカスの広い胸元に顔を埋め、その独特の清潔な香りと、先ほどまでの情事の名残を感じながら、リュクスは眠りへと落ちていく。
 散々な幕切れだったが、心臓の奥だけは、悔しいほど温かかった。


🐕🐩
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