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4章
ミニ番外編・バレンタインは執務室で起きてるんじゃない! 軍寮で起きてるんだ!(?)
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🐶🍫
夕暮れ。
仕事を終えて戻ったリュクスは、コートを脱ぐなり唐突に言った。
「ルーカス、今日バレンタインだよ? 愛する俺にチョコは?」
「…………は」
ルーカスは、しくじった。
生まれも育ちも外見も、あらゆる意味で、彼は常に“もらう側”だった。
バレンタインとは、差し出されるものだと疑いもしなかった。
だが今年は違う。
可愛い恋人であり、婚約者のリュクスがいる。
しかも彼は、男で。
綺麗で、若くて、愛嬌があって――当然、今までは彼だって“もらう側”だったはずだ。
そんな簡単なことに、なぜ気づかなかった。
「……とってくる」
涼しい顔で立ち上がり、扉を閉めた瞬間。
ルーカスは猛獣の速度で階段を駆け下り、部下の部屋のドアを遠慮なく蹴破った。
「ちょ……ルー将軍……?」
「おい。チョコ買って来て。一番高いの」
「え、チョ……!? 今から“買う”んですか!?」
「今から買う。モディバの一番大きくて、一番可愛い箱。三十分以内」
「ヒイイイ!!」
兵士Aは死ぬ気で走った。
――数分後。
「おかえり! チョコは? チョコは!?」
呼吸を整えたルーカスが戻ると、リュクスは尻尾でも振りそうな勢いで身を乗り出した。
「……もう少し冷やす」
「そっか🐶 俺のためにこだわってくれてたんだ。嬉しい♡」
期待に満ちた瞳。
ルーカスは、窓の外で兵士Aが転んで箱を粉砕していないことを祈りつつ、その柔らかな髪を撫でた。
「……んでもさ。実は俺、さっき試しに言ってみただけでさ?」
「?」
リュクスは照れくさそうに背中から箱を取り出した。
「ほんとは俺がルーカスにあげようと思って、ちゃんと用意してたんだ。……はい、これ」
差し出されたのは、帝都で人気の、旬の苺に贅沢なチョコレートを纏わせた逸品。
「…………そう、なの」
衝撃が走る。
兵士Aを戦場へ送り出した罪悪感など、微塵も残らないほどの。
ルーカスにはすぐわかった。
リュクスがこれを選んだ理由。
――自分が苺を大好きだから。
ルーカスもこれを食べれば、きっと幸せになれるはずだと。
あまりにも真っ直ぐで、疑いを知らない献身。
(……可愛い)
「ありがとう、リュクス。一緒に食べよう」
並んで座り、一粒ずつ与え合う。
甘い苺の香りが溶けていく。
自分が好きなものを、愛する相手も好きでいてほしい。
その無垢な願いに、ルーカスの胸は静かに熱を帯びていった。
やがて二人は、文字通り“二人の世界”へと没入し――。
――三十分後。
「ハァッ……ハァッ……! モディバ、一番デカい、可愛い箱……!」
肺を焼くような息で辿り着いた兵士Aは、部屋の前で立ち止まった。
扉の隙間から、あまりにも甘すぎる空気が漏れている。
「ルー兄…♡ それ、チョコじゃないからぁ…」
「でも…甘い…」
(あ、これ……入っちゃいけないやつだ)
戦場を生き抜く勘が告げる。
今ここで扉を開ければ、特務令違反――空気読めない罪。
「ルー兄♡」「リュクス♡」
もはや致死量の砂糖をぶっかけられたようなやり取り。
兵士Aはそっとドアノブにチョコレートの袋をかけた。
「……ルー将軍、俺は……任務を果たしましたよ……」
その魂は、あまりの甘さにふわりと肉体を離れ、帝都の夜空へ成仏していった。
揺れる「モディバ」の袋だけが、最後の未練のようにそこに残されていた。
夕暮れ。
仕事を終えて戻ったリュクスは、コートを脱ぐなり唐突に言った。
「ルーカス、今日バレンタインだよ? 愛する俺にチョコは?」
「…………は」
ルーカスは、しくじった。
生まれも育ちも外見も、あらゆる意味で、彼は常に“もらう側”だった。
バレンタインとは、差し出されるものだと疑いもしなかった。
だが今年は違う。
可愛い恋人であり、婚約者のリュクスがいる。
しかも彼は、男で。
綺麗で、若くて、愛嬌があって――当然、今までは彼だって“もらう側”だったはずだ。
そんな簡単なことに、なぜ気づかなかった。
「……とってくる」
涼しい顔で立ち上がり、扉を閉めた瞬間。
ルーカスは猛獣の速度で階段を駆け下り、部下の部屋のドアを遠慮なく蹴破った。
「ちょ……ルー将軍……?」
「おい。チョコ買って来て。一番高いの」
「え、チョ……!? 今から“買う”んですか!?」
「今から買う。モディバの一番大きくて、一番可愛い箱。三十分以内」
「ヒイイイ!!」
兵士Aは死ぬ気で走った。
――数分後。
「おかえり! チョコは? チョコは!?」
呼吸を整えたルーカスが戻ると、リュクスは尻尾でも振りそうな勢いで身を乗り出した。
「……もう少し冷やす」
「そっか🐶 俺のためにこだわってくれてたんだ。嬉しい♡」
期待に満ちた瞳。
ルーカスは、窓の外で兵士Aが転んで箱を粉砕していないことを祈りつつ、その柔らかな髪を撫でた。
「……んでもさ。実は俺、さっき試しに言ってみただけでさ?」
「?」
リュクスは照れくさそうに背中から箱を取り出した。
「ほんとは俺がルーカスにあげようと思って、ちゃんと用意してたんだ。……はい、これ」
差し出されたのは、帝都で人気の、旬の苺に贅沢なチョコレートを纏わせた逸品。
「…………そう、なの」
衝撃が走る。
兵士Aを戦場へ送り出した罪悪感など、微塵も残らないほどの。
ルーカスにはすぐわかった。
リュクスがこれを選んだ理由。
――自分が苺を大好きだから。
ルーカスもこれを食べれば、きっと幸せになれるはずだと。
あまりにも真っ直ぐで、疑いを知らない献身。
(……可愛い)
「ありがとう、リュクス。一緒に食べよう」
並んで座り、一粒ずつ与え合う。
甘い苺の香りが溶けていく。
自分が好きなものを、愛する相手も好きでいてほしい。
その無垢な願いに、ルーカスの胸は静かに熱を帯びていった。
やがて二人は、文字通り“二人の世界”へと没入し――。
――三十分後。
「ハァッ……ハァッ……! モディバ、一番デカい、可愛い箱……!」
肺を焼くような息で辿り着いた兵士Aは、部屋の前で立ち止まった。
扉の隙間から、あまりにも甘すぎる空気が漏れている。
「ルー兄…♡ それ、チョコじゃないからぁ…」
「でも…甘い…」
(あ、これ……入っちゃいけないやつだ)
戦場を生き抜く勘が告げる。
今ここで扉を開ければ、特務令違反――空気読めない罪。
「ルー兄♡」「リュクス♡」
もはや致死量の砂糖をぶっかけられたようなやり取り。
兵士Aはそっとドアノブにチョコレートの袋をかけた。
「……ルー将軍、俺は……任務を果たしましたよ……」
その魂は、あまりの甘さにふわりと肉体を離れ、帝都の夜空へ成仏していった。
揺れる「モディバ」の袋だけが、最後の未練のようにそこに残されていた。
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