『星飴測候庁 — ときめき渋滞、ただいま観測中。—』

星乃和花

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第1話 星飴測候庁へようこそ

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 星飴調整課の工房は、朝から湯気と甘い匂いでいっぱいだった。
 銅鍋の中で、透明だったシロップが、ゆっくりととろんとした光を帯びていく。
 外では暴風の前触れなのか、窓ガラスがときどき小さく震えた。

「ここが、きみに預けられた鍋だよ、ミレイユちゃん」

 星飴調整課長のふくよかな男性――ポルカ課長が、両手を腰に当ててにこにこと言った。
 つやつやした口ひげが、笑うたびにぴくぴく揺れる。

「午前中は、あんまり難しい配合はやらせないから安心して。きょうは“やわらか勇気”タイプの基本配合ね」
「やわらか勇気……」
「そう。“なんとかなる気がしてくるけど、無茶はしない”ぐらいで止まってくれる、いい子の飴さ。暴風の日の定番メニューだよ」

 課長は、手元の配合表をとん、と指でたたく。
 そこには色とりどりの星マークと共に、レシピがぎっしり書き込まれていた。

「星飴はね、天気と人の心と、材料のご機嫌、この三つのバランスで味が決まるんだ」
「材料の……ご機嫌、ですか?」
「そう。砂糖はほめてあげるときれいに溶けるし、レモン汁は寝起きが悪くてね。機嫌が悪いと酸っぱくなりすぎる。
 だから、鍋の前では、なるべく優しいことだけ考えるのがコツさ」

 ポルカ課長の冗談まじりの説明に、周りの職人たちが和やかに笑う。
 その空気に少し救われて、ミレイユも笑顔になった。

「じゃあ、さっそく優しいこと、考えながら混ぜてみます」
「うんうん、その意気だ。あ、でも“今日の昼ごはん何にしよう”は、わりと味に出るから気をつけて」
「えっ、そんなに……?」

 思わず鍋から視線を上げると、窓の向こうを、ちらちらと光の粒が横切っていく。
 まだ、星飴の素の名残が空に漂っているのだろう。

 ミレイユは、深呼吸をひとつ。
 そして、木べらを手に取った。

 ――きょうの飴で、少しでも誰かが「大丈夫」と思えますように。
 ――暴風でも、心までぐちゃぐちゃになりませんように。

 そう心の中で唱えながら、ゆっくりと円を描く。
 シロップの表面に、やわらかな泡が、星のかけらみたいにきらきら浮かんだ。

「うん、いい顔してきた。これなら“やわらか勇気”いけそうだねぇ」

 ポルカ課長が鍋をのぞき込み、満足そうに頷く。
 ミレイユの胸に、ちいさな誇らしさが灯った。

 *

「作業記録、十一時〇五分。やわらか勇気タイプ、第一鍋、配合良好。――と」

 工房の隅の長机では、ユリウスが淡々とペンを走らせていた。
 調整課の一角に臨時で設けられた広報官席。
 彼は、さっきまで庁舎全体の巡回をしていたはずなのに、いつの間にかここに腰を落ち着けている。

「ユリウスさん、さっきからずっと、見て……いえ、記録してくださってるんですね」
「暴風注意報の日ですからね。配合のブレが、街の雰囲気に直結します。
 “ちょっと怖い”が“やたらハイテンション”になってしまっても困るので」

 さらりと言いながら、彼の視線はちらりと鍋の中へ。
 ミレイユは、少しだけ背筋を伸ばした。

「でも、そんなにじっと見られると、緊張して手がすべっちゃいそうで……」
「それは困りますね。星飴が床にぶちまけられたら、そこだけ“転倒注意報”になりそうだ」

 くす、とユリウスの口元がゆるむ。
 真面目な話の中に、ふっと冗談を差し込む癖があるらしい。

「緊張をほぐすために、ひとつだけアドバイスを」

「アドバイス……」

「はい。鍋を混ぜているときは、“自分のためにも効いてほしいこと”を、ひとつだけ思い浮かべる。
 そうすると、不思議と味の方向性が定まりやすい」

「自分の、ため……」

 木べらを動かしながら、ミレイユはこっそり考える。
 ――きょう、わたしが星飴に後押ししてもらいたい望み。

(ええと……暴風でも転ばないように、足元にだけは星飴の素が降りませんように、とか?
 それとも、ユリウスさんに迷惑をかけませんように、とか……いや、もうちょっと可愛い望みがいい……)

 ぐるぐる考えているうちに、木べらの動きがほんの少しぎこちなくなった。
 そんな様子を見て、ユリウスは小さく首を傾げる。

「難しく捉えなくていいんですよ。
 ――たとえば、“きょう無事に仕事を終えて、おいしいおやつが食べられますように”とか」

「……あ、それ、いいですね」

 途端に、ミレイユの表情がぱっと明るくなった。
 たしかにそれなら、ほんのり甘くて、誰のことも追い詰めない望みだ。

「じゃあ、きょうのおやつ、ちょっと期待しちゃいます」
「残念ながら、庁内手作りおやつは、暴風の日は中止ですが」

「えっ!? そうなんですか?」

「代わりに、帰り道の商店街で使える“星飴おやつ券”が配られます。
 みなさん暴風でも強風でも、律儀に買いに行くので、商店街はいつもより元気ですね」

 その説明に、周りの職人たちがわっと湧いた。

「課長、今年もおやつ券出るんですね?」
「そりゃあもちろんさ。星飴様のおかげで商店街の売り上げも上がるんだ。持ちつ持たれつってやつだよ!」

 ポルカ課長が胸を張ると、工房の空気が一段と和やかになる。
 ミレイユもつられて笑い、鍋の中のシロップも、ぷくぷくと上機嫌に泡立った。

 *

 午前の仕込みが一段落すると、各鍋から流し板にシロップが流し込まれ、
 流れ星の軌跡みたいな筋を描きながら固まっていった。

「じゃあ、あとは型抜き班に任せるとして――」

 ポルカ課長が腕組みをしていると、庁内放送のチャイムが鳴った。
 やわらかな鈴の音。星飴測候庁の合図だ。

『――星飴測候庁よりお知らせします。本日午後、王都中央広場にて、暴風注意報に伴う“やわらか勇気星飴”の配布を行います』

 スピーカーから聞こえる声は、よく通る落ち着いた声だった。
 ミレイユは思わず顔を上げる。

「これ、ユリウスさんの……」
「はい、さきほど録音した広報音声ですね」

 当の本人は淡々と答えながら、手元の資料を整えている。

『配布時間は、午後一時より日暮れまで。おひとりさま一粒までとさせていただきます。
 星飴をなめると、“今日のいちばんの望み”を、すこしだけ後押しします。
 ――なお、星飴の包み紙には、本音が一行だけ現れます。取り扱いには、どうぞご注意ください』

 放送はそこで一度区切れ、最後に柔らかい一言が添えられた。

『暴風の日も、みなさまの心に、少しでも晴れ間がありますように』

 すとん、と胸の真ん中に落ちてくるような言い回しだった。
 ミレイユは、手元のエプロンをぎゅっと握りしめる。

「……やっぱり、いい声ですね」

 ぽろっと漏れた本音に、ポルカ課長がにやりと笑う。

「おやおや、新人ちゃん。うちの広報官のファンかい?」
「ち、ちがっ……! その、声というか、言葉というか……」

 必死に弁解しようとするミレイユを、ユリウスが横目でちらりと見る。
 ほんの少しだけ、耳の先が赤くなっているような気がしたのは、きっと気のせいだ。

「言葉がうまく届くのは、星飴のおかげですよ。
 星飴の“効き方”を説明するうちに、自然とこうなりました」

 そう言いつつも、ユリウスはどこか照れを誤魔化すように、書類に視線を落とした。

「さて。午後の配布には、シュガールさんにも同行してもらいます。
 自分の作った星飴が、どういうふうに届いていくのか、見ておくといい」

「はいっ、ぜひ」

 ミレイユは胸いっぱいにうなずいた。
 自分が混ぜた鍋が、だれかの“きょう”を少し楽にするのだと思うと、
 暴風よりも胸の高鳴りの方が強くなる。

 *

 そして、昼休憩を挟んだあと。

 星飴の詰められた木箱が、庁舎の玄関前にずらりと並べられた。
 ラベルには、可愛らしい雲と風のイラスト付きで「やわらか勇気」と書いてある。

「こちらが広場行きの箱ですね。……数、間違いありませんか?」

 ユリウスが調整課の事務官に確認する。
 事務官は手元の帳簿を見ながら頷いた。

「はい。やわらか勇気タイプ、二百粒入りの箱が……ええと、一、二、三……十箱。
 それから、予備の“おちつくハーブ飴”が一箱」

「了解しました。では、このうち九箱を中央広場へ、一箱は庁舎内配布用に回します。
 ……“恋が加速する飴”の箱は、別室保管ですよね?」

 その名前が出た瞬間、ミレイユはびくっと肩を揺らした。

「あ、あの、ユリウスさん。
 “恋が加速する飴”って、そんなに危ないんですか?」

「危ない、というより、扱いが難しい。
 片想いの人の背中を押す飴ですが、包み紙に浮かぶ本音が、少々ダイレクトすぎる傾向がありまして」

 ユリウスは、少しだけ頭を抱えるような仕草をする。

「以前、試験運用した際には、庁舎前が“告白と土下座の行列”になりました。
 あれ以来、庁長判断で一般配布は禁止されています」

「そ、そんなことが……」

「なので、あの箱には絶対触らないように。
 ラベルも派手なので、間違えることはないはずですが」

 事務官も真面目な顔で頷いた。

「恋加速は北側倉庫の二段目、一番奥です。鍵もかけてありますので、ご安心を」

「念のため、あとで鍵の位置も確認しておきましょう」

 ユリウスがメモを取る。
 その横で、ミレイユはこっそり胸をなでおろした。

(“恋が加速する飴”……。
 配合メモだけ、こっそり読ませてもらったけれど、本当に、強そうだったもんな……)

 鍋の温度も、材料の配分も、本音の引き出し方も、ぜんぶ繊細に変えてある。
 少しでも間違えれば、たしかに大騒ぎになりそうだ。

 ――そのとき、工房の奥で、ささやかな物音がした。

 がしゃん、と金属の棚がかすかに揺れる音。
 誰かが、隣の倉庫のドアを開けたのだろうか。

「……風かな?」

 誰かがつぶやく。
 外はすでに、時折びゅう、と強い風が吹き抜けていた。

 ミレイユは一瞬そちらを振り返ったが、すぐに星飴の箱に視線を戻した。
 今は、配布の段取りを覚える方が先だ。

 ――ほんのすこしだけ、心の端に引っかかりを残したまま。

 *

 午後一時。
 星飴測候庁の旗を掲げた小さな移動屋台が、王都中央広場の隅に設置された。

 暴風注意報のせいで、空の色はどこか落ち着かない灰色をしている。
 けれど、広場にはいつも通り、パン屋の屋台や花屋のワゴンが並び、
 人々は風にコートを押さえながら、足早に行き交っていた。

「本日、暴風注意報につき、“やわらか勇気星飴”を無料配布しております」
「おひとりさま一粒まで。お気軽にどうぞ」

 ユリウスの声が、控えめながらもよく通る。
 屋台の前には、興味津々といった様子の市民たちが、少しずつ列を作り始めた。

「……わぁ、本当に集まってきましたね」

 ミレイユは、屋台の内側からそっと人だかりをのぞいた。

「星飴測候庁の配布は、小さなお祭りみたいなものですからね。
 心がざわつきやすい日に“無料のお守り”がもらえるとなれば、みなさん来ますよ」

 ユリウスは慣れた調子で答えながら、箱のふたを開ける。
 中には、星型の小さな飴が整然と並んでいた。

「では、シュガールさん。市民の皆さんに直接、手渡してみますか?」

「えっ、わたしが?」

「あなたの作った星飴です。どんな顔で受け取ってもらえるのか、見ておくといい」

 促されて、ミレイユはおそるおそる一歩前に出た。
 列の先頭には、仕事帰りらしき若い女性が立っている。

「あ、あの、おひとつどうぞ。
 “やわらか勇気”の、星飴です」

 両手で包み紙を添えて差し出すと、女性はふわりと笑った。

「ありがとう。暴風の日の外回り、正直ちょっと憂鬱だったのよね。
 これで、もう少し頑張れそう」

「そ、そう言ってもらえると嬉しいです……!」

 女性はその場で星飴を口に含み、包み紙を指先でもてあそんだ。
 しばらくして、紙片にふわりと文字が浮かび上がる。

「……うわ、出た。本音一行」

 くすくす笑いながら、それを胸ポケットにしまう。

「“本当は、帰りにケーキを二個買って帰りたい”。
 ……うん、これは誰にも見せたくないやつね」

 そう言いつつも、その横顔はどこか楽しそうだった。
 ミレイユは、胸のあたりがじんわり温かくなる。

(ちゃんと、“きょうだけの勇気”を応援できてるんだ……)

 次々と星飴が配られ、
 「ちょっと気が楽になった」「なんだか笑えてきた」といった声がちらほら聞こえてくる。

 ユリウスは列の様子を見ながら、人の流れと風の向き、雲の形を同時に観察していた。
 まるで、街全体の「機嫌の天気図」を頭の中で描いているみたいに。

「どうですか、初めての配布は」
「……すごく、嬉しいです。
 わたしの混ぜた鍋が、こんなふうに届いてるんだなぁって」

「その感覚を、忘れないでいてください。
 星飴の配合は、数字と規定だけでもできますが――」

 ユリウスは、ふと視線を空に向ける。

「人の顔を知っている人が混ぜた飴の方が、だいたい、よく効きます」

 その言葉に、ミレイユは目を瞬かせた。
 さっき、庁舎の廊下で聞いた“職務上の言いかた”とは違う、本音に近い響き。

「……今の、包み紙に出たら、ちょっと恥ずかしいやつですね」
「そうですね。だから星飴は、私ではなく、街の皆さんに舐めていただきましょう」

 軽い冗談めかしてかわすユリウスに、ミレイユもくすりと笑った。

 そのときだった。

 屋台の後ろから、係の事務官が慌てた様子で駆け寄ってきた。

「ユリウス広報官! たいへんです、箱の数が……!」
「どうしました?」

「庁舎側の倉庫で確認したところ、“やわらか勇気”の箱が一つ足りなくて……代わりに、見慣れないラベルの箱が」

 ユリウスの表情が、すっと引き締まる。

「見慣れないラベル?」

「ええ。えっと……ハート型の風と、矢が刺さった星のイラストで――」

 事務官は、手元のメモを震える声で読み上げる。

「“恋が加速する飴 試作三号”と……!」

 瞬間、ユリウスとミレイユの心臓が、同時にどくんと跳ねた。

 屋台の前では、何も知らない市民たちが笑い声をあげ、
 風は、さっきよりも少しだけ強くなっている。

 ――暴風注意報の日。
 星飴測候庁の、ほんの少しの手違いが。

 やがて、王都じゅうを巻き込む「ときめき渋滞」を起こすことになるとは、
 その場にいた誰ひとり、まだ知らなかった。
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