『星飴測候庁 — ときめき渋滞、ただいま観測中。—』

星乃和花

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第4話 恋と苦情と、星飴相談窓口

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 暴風注意報の午後は、あっという間に過ぎていった。

 王都中央広場での配布を早めに切り上げ、星飴測候庁に戻った二人を待っていたのは、
 外の風よりも、よほど勢いのある“何か”だった。

「――広報官どのっ!!」

 庁舎の玄関をくぐった瞬間、受付前のフロアから、怒涛のような呼び声が飛んでくる。

 星飴測候庁の受付ロビーは、いつもなら静かな書庫のような空気なのに、
 今日は、包み紙を握りしめた市民たちでいっぱいだった。

「こ、これって、もしかして……」

「ええ」

 ユリウスは、わずかにこめかみを押さえながら言った。

「“星飴相談窓口”の臨時・対面版ですね」

「ね、ね、ね! 広報官さん!」
「ちょっと聞いてくださいよっ!」
「これ見てください、これ!」

 次々と差し出される包み紙。
 そこには、今日一日中降り続けた“恋の本音”が、一行ずつ乗っている。

 受付の女性が、半ば笑いをこらえながら言った。

「ユリウスさん、お帰りなさい。
 現場で“暴風証明書を出す”って告知したでしょう? そのまま、みなさん窓口にいらっしゃいました」

「……通信網の速さは、時に庁舎の静寂を奪いますね」

「でも、みんな、完全に怒っている感じではないですよ。ほら、顔つき」

 たしかに、市民たちの表情は、怒り一色ではなかった。
 恥ずかしさと、戸惑いと、少しだけ面白がっている気配がまざっている。

「とりあえず、整理券をお配りして、順番にお話をうかがっています。
 ただ、“これはどの窓口の案件なのか”がちょっとわからなくて……」

 受付は、困ったように笑った。

「恋愛相談なのか、苦情処理なのか、天気に関する意見なのか……」

「全部、ですかね」

 ユリウスは、すっと眼鏡の位置を直す(※ただし、もともと良い視力なのに、かけている飾り眼鏡だ)。

「では――」

 彼は、カウンターの上に置かれていた木札を一つ取り、さらさらと文字を書き込んだ。

『臨時・星飴相談窓口(恋と本音専用)』

 そして、その木札を、受付横の簡易机に立てかける。

「私とシュガールさんで、ここを担当します。
 “恋と本音”に関するものは、すべてこちらへ」

「こ、ここにですかっ!?」

「ええ。星飴にまつわる騒ぎは、作る人と、説明する人が一緒に責任を取るのが筋です」

 さらりと言われて、ミレイユは背筋を伸ばすしかなかった。

 *

 臨時相談窓口には、すぐに行列ができた。

 簡易机の向こうで腰を下ろしているミレイユとユリウスは、
 まるで人気菓子店のレジと、その後ろに座る店主のようだった。

「では、整理番号一番の方、どうぞ」

 呼ばれて前に進んできたのは、午前中に広場で会ったパン屋の若主人――ではなく、その母親だった。

「あら、広報官さん。さっきは、うちの息子がお世話になりました」

「パン屋さんの……店先に、“告白の行列”ができていたと聞きましたが」

「ええもう、それは賑やかで。
 でね、これ」

 お母さんは、エプロンのポケットから包み紙を取り出した。

「“本当は、息子の店が誇らしくて、大声で自慢したい”って書いてあったのよ。
 わたしの星飴の包み紙に、ね」

 ミレイユは、わぁ、と目を丸くした。

「素敵な本音……です」

「でも、息子の方は、“本当は、店より母さんに休んでほしい”って出たらしくて。
 お互い照れくさくって、気まずくって。
 ……そこで、“暴風証明書”とやらをね、使わせてもらおうかと」

 お母さんは、頬をぽりぽりとかいた。

「『変にしんみりしちゃったのは、暴風のせい』ってことで、あとで笑って話せるように。
 そういう意味なら、今日の星飴、悪くなかったわ。ありがとね」

 そう言って、ぺこりと頭を下げる。

 ユリウスは、少し驚いたように目を瞬き、すぐに微笑を返した。

「こちらこそ、ご理解に感謝します。
 ……では、“暴風証明書”に、『親子の本音は、風と一緒に流して笑ってよし』と記しておきましょう」

「まぁ、そんなことまで書いてくれるの? 素敵ねぇ」

 お母さんは帰り際、ミレイユの方にも一言添えた。

「若いのに、大変だったわねぇ。でも、おかげで、うちは少し元気になったわよ」

「……っ。ありがとうございます」

 ぎゅっと胸の前で手を握って頭を下げると、
 ミレイユの目頭が、ほんのり熱くなった。

 *

 続いてやってきたのは、
 さっき広場で騎士団の隊長に告白していた花屋のロアンだった。

「こ、広報官さぁん……!」

「お疲れさまです、ロアンさん。無事、生きていましたか」

「“生きていましたか”ってひどくないです!? 死ぬほど恥ずかしかったですよ!!」

 ロアンは、両手で顔を覆って、その隙間から包み紙を突き出した。

「これですよ、これ!
 “本当は、隊長さんを花で包みたい”って、そんなポエミィなこと、星飴が勝手に暴露するから……!」

「でも、渡していましたよね。花束」

「……渡しました」

 しゅん、と肩を落とすロアン。
 しかし、その耳は赤い。

「隊長さん、なんておっしゃってましたか?」

 ミレイユがおそるおそる尋ねると、
 ロアンは、指の隙間からちらっとこちらを見た。

「……“ありがとう。花で包まれるのは悪くない”って、言ってました」

 ぼそっとした声だったが、気持ちは十分伝わる。

「それ、とても優しい返事じゃないですか……!」

「そうなんですよ……! そうなんですよ……!!」

 ロアンは、机に突っ伏しながら叫んだ。

「だから余計に、どうしていいかわかんなくて!
 これから顔合わせてどうすればいいのか、じたばたします!!」

「それは、“恋が加速したときの副作用”ですね」

 ユリウスは、真面目な顔でメモ帳に“じたばた”と書き込んだ。

「……副作用として記録されるんですか、それ……」

「“じたばた”は、等圧線が密なときによく発生する現象ですから」

 さも当たり前のように言う。

「でも、ちゃんと今日、“言えてよかった”という気持ちも、ありますよね?」

 ミレイユの問いに、ロアンは少し黙ってから、こく、と頷いた。

「……あります」

「じゃあ、その部分は、“星飴の功績”ということで。
 あとは、“恥ずかしいところは全部暴風のせい”ってことにして、
 ゆっくり、花を配達するところから、また始めればいいんじゃないでしょうか」

「……そんな、うまいこと……」

 と言いながら、ロアンの表情は少し緩んでいた。

「じゃあ、暴風証明書、ください。“恥ずかしくて転がりまわった件、暴風のせいにつき、倫理上不問”みたいなやつ」

「条文が具体的ですね……」

 ユリウスは苦笑しながらも、
 証明書用の用紙にさらさらと記入していく。

『本日の暴風により、口から出た“花で包みたい”発言は、
 星飴測候庁が公認する“勇気ある一行”として記録。
 今後、思い出して転がりまわる行為は、すべて気圧のせいとする。』

「――こんな感じで」

「うわ、思ったよりちゃんと書いてくれてる……! ありがとうございます!!」

 ロアンは、その紙を宝物のように抱きしめて去っていった。

 *

 その後も、窓口にはさまざまな包み紙と本音が持ち込まれた。

 「本当は、一緒にお茶したい」と出た近所付き合いのおばあさん。
 → 暴風証明書と引き換えに、庁舎近くの喫茶店の割引券をプレゼント。

 「本当は、出張を断りたい」と出た若い役人。
 → ユリウスに「“健康状態を理由に延期”という選択肢もある」とやんわりアドバイスされる。

 「本当は、ひとりでいるとさびしい」と出た学生風の少年。
 → ミレイユが、星飴の“やさしい効き方”を説明しつつ、
  「さびしいって思えるのも、あったかい心があるからですよ」と、そっと笑いかける。

 どの相談にも、怒号はなく、ため息と、最後にはかすかな笑いがついてきた。

 忙しさでぐるぐるになりながらも、
 ミレイユは、ひとつひとつの包み紙と、その向こうにいる気持ちに向き合っていた。

(星飴の“代償”って、たしかにこわい。
 でも、こうやって誰かと一緒に読めば、
 少しはこわくなくなるのかもしれない)

 そんなことを考えながら、そっと自分のエプロンのポケットに手をやる。
 中には、ユリウスから預けられた、ピンクがかった星の飴。

 ――暴風が過ぎて、配布が終わったあと。
 それでもまだ、自分の本音を知る勇気があったら。

(……今のわたし、勇気、あるのかな)

 自分の心に問いかけてみると、
 “あるような、ないような”としか答えられなくて、苦笑してしまった。

 *

 夕方が近づくころ、相談窓口の列も、ようやく短くなってきた。

「次の方で、ひとまず本日の受付は終了としましょうか」

「はい……ふぅ……」

 ミレイユは、小さく肩を回した。
 一日分の星飴仕込みと配布と相談窓口で、体はくたくたなのに、
 心の中には、不思議な充足感があった。

「シュガールさん」

 ユリウスが、ふいに声をかけてくる。

「今日は、本当にお疲れさまでした。
 想定外の事態の連続でしたが、よく対応してくれましたね」

「い、いえ……わたし、途中からほとんど“聞いているだけ”で……」

「“聞く”のも、大事な仕事です。
 私一人では、あそこまで空気をやわらかくできなかったでしょう」

 さらりと言われて、ミレイユの耳が熱くなる。

「……ありがとうございます」

「ところで」

 ユリウスは、少しだけ真面目な顔になって続けた。

「――怖く、なかったですか?」

「こわく、って……」

「星飴の代償、本音の一行。
 誰かの心の一番濃いところに触れるのは、慣れていても、負荷がかかるものです」

 彼の瞳が、ごくわずかに揺れていた。
 広報官として、何度も、似たような場に立ってきた人の目だ。

「私にとっては、もはや“仕事”の一部ですが……
 あなたにとっては、今日が初めての“本格的な渋滞”でしたから」

「渋滞……」

 ミレイユは、少し考えてから、ゆっくりと首を横に振った。

「たしかに、びっくりしました。
 こんなにたくさん、“本当は”があったんだって。
 でも――」

 窓口の向こうで、
 さっき帰って行った人たちの背中を思い出す。

「みなさん、最後には、ちょっと笑って帰ってくれました。
 “言っちゃったけど、まぁ、いっか”って顔で。
 だから、こわいより、“あったかい”の方が大きかったです」

「……そう、ですか」

 ユリウスは、ほんの少しだけ目を伏せた。

「よかった」

 それは、ひどく小さな声だった。
 でも、確かな安堵の色が混ざっていた。

 ミレイユは、逆に気になって、口を開きかける。

(ユリウスさんだって、きっと、こわかったはずだ。
 怒られるのも、責められるのも、慣れているって顔をしてるけど)

 けれど、その思いが言葉になる前に、受付の女性が顔をのぞかせた。

「おふたりとも、お疲れさまです。
 あの、これ、庁長からのお預かりです」

 彼女が差し出したのは、小さな封筒だった。
 星型の封緘シールが貼られている。

「“相談窓口のお礼。今日の星飴は、よく働いた”って。
 中身は……たぶん、庁長お手製のお菓子かと」

「庁長、お菓子作るんですか……?」

「ストレス解消だそうです」

 受付が苦笑交じりに答える。

「あと、“最後のひと粒は、必ずふたりで分けなさい”って」

「分けなさい……」

 ミレイユは、慌てて首を横に振った。

「ちょ、ちょっと待ってください。
 庁長さん、なんでそんなことを……!」

「恋が加速してるからじゃないですか?」

「受付さんまで……!」

 わたわたするミレイユの横で、ユリウスは封筒をひょいと持ち上げた。

「とりあえず、中身は休憩室で確認しましょう。
 ここで開けると、また“観測対象”が増えそうですからね」

「そ、そうですね……!」

 *

 休憩室に入ると、さっきまでの喧騒が嘘のように静かだった。
 窓の外では、まだ風がうなり声を上げているが、
 星飴測候庁の壁は分厚く、音は柔らかくくぐもって聞こえる。

 丸い卓子の上に封筒を置き、ユリウスが封を切った。

 中から出てきたのは、小さな星型のクッキーが3枚。
 そのうち2枚は普通の砂糖がけ、残り1枚は、ほんのり桜色のアイシングで縁取られている。

「……最後の一枚は、これですね」

「“必ずふたりで分けなさい”って、
 なんだか意味深なメッセージですね……」

「庁長は、こういう遊び心が好きですから」

 ユリウスは、桜色のクッキーを一度指先で持ち上げ、
 ほんの少し迷ってから、そっと皿に戻した。

「食べる前に、一つ確認しておきたいことがあります、シュガールさん」

「は、はい」

「――今日の、星飴のこと。
 “作った側”として、自分を責めすぎていませんか?」

 その問いに、ミレイユは目を瞬かせた。

「えっ……」

「倉庫の取り違えの件は、庁側の管理ミスです。
 あなたの配合が、たしかに本音を強めに引き出したのは事実ですが――
 それは“恋が加速する飴”として正しい仕事をした、というだけの話です」

 ユリウスは、まっすぐに彼女を見つめる。

「今日、ここに“暴風証明”をもらいに来た人たちの顔を、思い出してみてください。
 誰かひとりでも、『星飴なんて二度といらない』と言っていましたか?」

「……いえ。
 みんな、『恥ずかしかった』とは言ってましたけど、
 “もう要らない”とは……」

「なら、あとは、運用の問題です。
 今日の記録をもとに、星飴測候庁としてのルールを整え直せばいい」

 それから、ほんの少しだけ声のトーンを下げた。

「“自分のせいで”と言って、あなた一人が抱え込む必要はありません。
 星飴は、ひとりで作って、ひとりで配るものではないのですから」

「……」

 ミレイユは、胸の奥がきゅうっとなって、視界がにじんだ。

(ああ、やっぱりこの人……)

 しっかりしているようで、
 いつもどこか、“誰かの荷物を少し分けてもらうこと”に慣れている人だ。

 自分が抱える“責任”も、“後悔”も、
 誰かと分け合ってもいいんだと、静かに教えてくれる。

「……ユリウスさんは、責めないんですね」

「何をですか?」

「わたしを、です。
 “あんな強い飴を作るからだ”とか、“もっと慎重にしろ”とか……言おうと思えば言えたのに」

「言えはしますが、それを言って、何か改善しますか?」

 あっさり返されて、ミレイユは言葉に詰まった。

「大事なのは、“次どうするか”です。
 今日の記録は、次の恋加速飴の改良にも使える。
 “告白と土下座の行列”ではなく、
 “笑いながらも、心に残る一行”になるように」

「……改良、するんですか?」

「ええ。禁止にしてしまうより、“安全な運用”を探る方が、星飴らしいでしょう」

 そう言って、ユリウスは、桜色の星形クッキーをひょいとつまみ上げた。

「庁長印の“今日頑張った人へのご褒美”も、
 “分けて”運用するようにと仰っていましたしね」

「わ、わけて……」

 ミレイユが戸惑う間に、
 彼はクッキーを、ぽきん、と半分に割った。

 ざくりとした音とともに、甘い小麦の香りがふわりと広がる。

「では、分配を。
 こちらがシュガールさんの分。こちらが私の分。
 ――公平ですね」

「……はい」

 差し出された半月形のクッキーを受け取りながら、
 ミレイユは、なんだか胸の奥がくすぐったくなった。

(“分ける”って、こんなに、ほっとするんだ……)

 責任も、恥ずかしい記憶も、
 今日一日の重さも、星飴の出来も。

 いいことも、よくないことも、
 こうして誰かと分け合って、
 少しずつ軽くしていけばいいのかもしれない。

「……いただきます」

「いただきます」

 ふたり同時に、クッキーを一口かじる。

 サクッ、と小気味いい音がしたあと、
 ほのかにバターと星蜜の香りが広がった。

「――甘い」

「ええ。今日の星飴と同じぐらい、ですね」

 ユリウスが、少しだけ冗談めかして言う。
 ミレイユは、思わず笑ってしまった。

 窓の外では、まだ暴風が続いている。
 けれど、休憩室の中には、温かな甘さと、
 “分け合う”ことで生まれた小さな安心だけが、静かに満ちていた。

 そして、エプロンのポケットの中では――
 ピンクがかった星の飴が、
 「まだ出番ではないよ」と言うように、
 こっそり、静かに光っていた。
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