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第10話 飴職人の揺れる本音と、家族の空模様
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星飴シャワー予報が出た、翌朝。
星飴測候庁の受付カウンターに、
見慣れない紙箱がひとつ、ちょこんと置かれていた。
「シュガールさん宛てのお荷物、届いてますよ」
受付の女性に声をかけられて、
ミレイユは慌てて駆け寄る。
「わ、わたしに、ですか?」
「はい。“郊外第七街区・シュガール菓子工房”より。
差出人、“おとうさん&おかあさんより”」
「……っ」
胸の奥が、きゅっと縮まった。
箱の端には、見覚えのある小さなリボン結び。
親指の跡のついた、懐かしい紙質。
「ありがとうございます……。
休憩時間に、開けてもいいですか?」
「もちろん。楽しみねぇ」
受付の女性が微笑む。
ミレイユは、箱を胸に抱えて、
そっと工房へと向かった。
*
星飴調整課の休憩室は、
いつも甘い匂いがかすかに残っている。
ポルカ課長と先輩たちは、
ちょうど現場に出ている時間帯らしく、誰もいない。
(……今なら、深呼吸しても、泣いても大丈夫)
ミレイユは、自分にそう言い聞かせてから、
そっと箱のふたを開けた。
中には、
小さな焼き菓子がぎっしりと詰まっていた。
星形のクッキー、
角砂糖みたいなキューブケーキ、
そして、彼女が子どもの頃から大好きだった、
“雨上がりレモンパウンド”。
「……変わってない」
思わず、こぼれる。
その上に、一通の手紙が乗っていた。
淡い水色の封筒。
角のところが、ちょっとだけ粉砂糖で白くなっている。
封を切る手が、すこし震えた。
便箋には、見慣れた丸い字が並んでいる。
『ミレイ、
王都で元気にしていますか。
星飴測候庁で働き始めたと聞いてから、
工房のみんなで、「もう立派な飴職人さんねぇ」と話しています。』
(……お母さん)
続く行を、そっと目で追う。
『こちらは相変わらず、朝から晩までバタバタしています。
最近は、王都からの観光客も増えてきて、
“星飴っぽいお菓子はありませんか”なんて聞かれることもあります。
あなたがいたら、新しいお菓子を一緒に考えられるのになぁ、と
お父さんがぼやいていました。』
行間から、工房のざわめきが聞こえてくるようだった。
粉砂糖の舞う音、オーブンの扉の音、
父の、少し不器用な笑い声。
『でも、これは「帰ってきなさい」という意味ではありません。
いつでも帰ってきていい、
でも、帰らなくてもいい。
あなたが、自分で選んだ場所で、
自分の手を好きでいられるなら、それがいちばんです。
ただ、もし王都がつらくなったり、
星飴が苦く感じる日があったりしたら、
いつでも、この箱を思い出してください。
あなたの帰りを待っている空が、ここにもあるということを。』
最後の行は、父の字に変わっていた。
『たまには、工房の空模様も教えてくれ。
おまえの描く“空の絵”、母さんが楽しみにしている。
星飴シャワー、きっときれいだろうな。
風邪をひかないように気をつけて。』
ミレイユは、便箋を胸の前でぎゅっと抱きしめた。
(……工房の空模様)
子どもの頃、
よく父に頼まれて、
その日の空を紙に描いた。
“お客さんが少ない日は曇りマーク”
“新しいお菓子が好評だった日は晴れマーク”
“売り切れ続出の日は星マーク”。
その横に、小さく家族の顔を描いて、
それぞれの表情に合った天気をつけるのが、
密かな楽しみだった。
(最近、描いてなかったな……)
胸の奥に、
懐かしさと、ちくりとした痛みが混ざる。
便箋の端には、もう一行、小さな追伸があった。
『追伸:
跡継ぎのこと、そろそろ真面目に考えなきゃね、と
みんなで話すことが増えました。
“ミレイに全部背負わせるつもりはないよ”と
何度も言い合いながら。
これも、空模様のひとつとして、
頭の片隅に置いておいてくれると嬉しいです。』
――跡継ぎ。
その単語に、胸の中の空が、
急にざわつき始めた。
(そうだよね……
いつまでも、“どこかよその空の話”みたいにしてるわけには、いかないよね)
工房には、年配の職人たちが多い。
父と母も、もう若くはない。
自分が王都に来たのは、
“星飴を作ってみたい”という憧れと、
少しの逃避心の混ざった選択だった。
(“わたしまでここにいなくなったら、工房はどうなるんだろう”って、
本当はずっと、頭の隅にあった)
でも、その考えにちゃんと向き合うのが怖くて、
星飴のきらめきに、
庁舎の賑やかさに、
ユリウスの真剣な横顔に――
甘やかされるように、目をそらしてきたのかもしれない。
便箋を畳んで、
小さく深呼吸をした。
(……めそめそしてる場合じゃないよね)
机の引き出しから、
ミニサイズの画用紙を一枚取り出す。
鉛筆を握って、
そっと線を引き始めた。
──“シュガール菓子工房・本日の空模様”。
・工房の上空:ちょっと忙しそうな、晴れ時々くもり。
・お父さんの頭上:少し眉間に皺のある晴れマーク。
・お母さんの周り:笑顔だけど、すこしハート型の雲が多め。
・古参職人さんたちのところには、小さな雨雲と湯気マーク。
そして――。
自分の頭上の空は、
丸を描いてから、しばらくペン先が止まった。
(わたしの空は、今、何模様なんだろう)
王都の星飴測候庁。
おしゃべり席。
黄昏交差点。
ユリウスの「ありがとう」。
全部を思い浮かべて、
そっとマークを描く。
自分の頭上には、
小さな星飴マークと、
その横に、三角の“未定”マーク。
「……ずるい絵だなぁ」
苦笑しながらも、
それが精一杯の正直さだった。
*
昼休みが終わる頃。
ミレイユは、工房の隅で、
ひとつの瓶を大事そうに抱えていた。
瓶の中には、
“家族向け星飴”として試作中の、小さな星たちが入っている。
「“離れていても同じ空を見ているよ飴”……」
仮の名前を口の中で転がしてみて、
自分で照れ笑いする。
星飴シャワーに合わせて、
遠くにいる家族や友人同士が、
お互いの空模様を想い合える飴を作れたら――。
そんな企画案を、こっそりメモしていた。
(今のわたしに、一番必要な飴でもあるんだけど)
瓶から一粒だけ取り出す。
淡いオレンジ色の、小さな星。
“家族を思う気持ち”と“自分の道を願う気持ち”を、
両方そっと封じ込めたつもりの配合。
「……試食、してみようかな」
星飴測候庁の飴は、
基本的に職員によるテストを経てから世に出る。
自分で作った飴を、自分で試すことも多い。
(怖いけど……
星飴に教えてもらわないと、
わたし、多分また逃げちゃう)
ミレイユは、目を閉じて、
小さな星を舌の上に乗せた。
すーっと溶けていく甘さは、
レモンパウンドの柑橘と、
星飴工房の砂糖の匂いを足したような味。
胸の奥が、じんわり温かくなる。
やがて、指先の包み紙が、
ふわりと熱を帯びた。
ゆっくり広げると、
柔らかな文字が一行、現れていた。
『本当は、自分で選んだ空を、ちゃんと好きでいたい』
息を呑んだ。
“工房の空”でも、“王都の空”でもなく。
“誰かに決められた空”でもなく。
“自分で選んだ空”。
「……ずるいよ、星飴」
笑いながら、目の奥が熱くなる。
「そうだよね……
どっちにいても、“誰かのため”だけじゃ、きっと苦しくなる。
ちゃんと、自分で選んだって言える場所じゃないと」
家族の期待も、工房の空模様も大事だ。
でも、“自分の空”を、ちゃんと好きでいたい。
そう願っていいのだと、
星飴はそっと教えてくれた。
そのとき――。
「シュガールさん」
背後から、控えめなノックの音とともに、声がした。
「ひゃっ……!」
慌てて振り返ると、
扉のところに、ユリウスが立っていた。
「そんなに驚かなくても」
「ご、ごめんなさい……!」
包み紙を握りしめたままの手を慌てて背中に回し、
変に不自然な姿勢になってしまう。
「少々お時間をいただけますか。
星飴シャワー当日の配布リストの件で、調整課の意見を伺いたくて」
「あ、はいっ」
(落ち着け、落ち着け)
胸の中の“自分で選んだ空”の一行が、
まだじんじんと響いているのを感じながら、
ミレイユは、なんとか平静を装って立ち上がった。
*
廊下を歩きながら、
資料の説明を受ける。
「……というわけで、
“星飴シャワー記念セット”の試作配分について、
調整課の意見を反映させたいのです」
「“家族向け星飴”を入れる案も、
候補にあるんですよね?」
「ええ。“遠く離れた誰かを思うための飴”として」
ユリウスは、手元の紙をめくりながら頷いた。
「シュガールさんが出してくれたメモ、
庁長が気に入っていましたよ」
「ほ、本当ですか」
「“離れていても同じ空を見上げられる飴”――
なかなかに、星飴測候庁らしいテーマです」
嬉しさと照れくささで、胸が忙しくなる。
そうして一通りの打ち合わせを終え、
切りの良いところで、廊下の窓際に差しかかった。
窓の向こうには、
少し厚みを増した雲と、
その隙間からのぞく、淡い青空。
「……ユリウスさん」
ふと、言葉がこぼれた。
「はい?」
「家族って、“空模様”に例えるとしたら、
どんな感じだと思いますか」
自分でも、唐突な質問だと思う。
でも、聞かずにはいられなかった。
ユリウスは、ほんの少しだけ目を細め、
窓の外を見上げた。
「そうですね……」
彼が、空に向かって“観測モード”に入るときの顔だった。
「“毎日見ているのに、
つい“いつもそこにある”と勘違いして、
意識することを忘れがちな空”――でしょうか」
「……」
「晴れている日も、曇っている日も、
気づかないうちに、自分の呼吸や気分に影響を与えている。
だけど、忙しいときほど、
わざわざ窓を開けて“今日はどんな空だろう”と
見上げることを忘れてしまう。
そういう意味では、
家族も、空も、似ているかもしれません」
ミレイユは、胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じた。
「……わたし、今朝、工房から手紙が届いたんです」
自分から話し始めていた。
逃げるのは、
さっき星飴と約束したばかりだ。
「“いつでも帰ってきていい、
でも帰らなくてもいい”って書いてあって。
跡継ぎのことも、そろそろ考えなきゃねって」
ユリウスは、驚いた様子は見せず、
ただ静かに耳を傾けてくれる。
「王都の空も好きだし、星飴も好きで。
でも、工房の空も、家族のことも大事で。
どっちかを選んだら、
もう片方を裏切るみたいな気がして……
頭の中の天気図が、ぐるぐるしてます」
そこまで言って、
半ば冗談めかして付け足した。
「測候庁の広報官さんなら、
こういう時の“空模様コメント”って、
どうつけますか?」
ユリウスは、少しだけ考えた。
そして、いつもの真面目な声で言う。
「“前線がいくつも交差しており、
しばらくはぐるぐる状態が続く見込み。
ただし、地表付近の温度は十分にあたたかく、
晴れ間のポテンシャルは高い”――でしょうか」
「ポ、ポテンシャル……」
思わず笑ってしまう。
「つまり、今は“選ぶための雲”が多いだけで、
どちらの空も、
決して“悪天候”ではない、ということです」
「……」
「どちらを選んでも、誰かにとっては寂しく、
そして、誰かにとっては嬉しい。
そういうとき、
私がいつも市民に伝えるのはひとつだけです」
ユリウスは、窓ガラスに映る自分たちの姿を、
ちらりと見つめた。
「“せめて、選ぶときだけは、自分の空を見上げてください”」
その言い方は、
どこか自分自身にも言い聞かせているようだった。
「“誰かの涙の予報”だけを見て決めてしまうと、
あとから自分の中で、嵐になりますから」
「……誰かの涙の予報」
「もちろん、“誰かを悲しませたい”という意味ではありません。
ただ、
“自分はどんな空の下で、息をしたいのか”を、
最後に確認してほしいのです」
ミレイユは、胸の中の“一行”を思い出す。
『本当は、自分で選んだ空を、ちゃんと好きでいたい』
(……やっぱり、星飴って、ずるい)
ユリウスの言葉と、
包み紙の一行が、
ぴたりと重なってしまう。
「……ユリウスさんには、“帰ってきてほしい空”ってありますか?」
今度は、彼に尋ねる番だった。
「私に、ですか」
「はい。
“いつでも戻ってきていいんだよ”って言ってくれる場所とか」
ユリウスは、少しだけ視線を泳がせた。
「……難しい質問ですね」
苦笑してから、
ゆっくりと言葉を選ぶ。
「物理的な意味での“帰る場所”は、
正直、あまり明確には思い浮かびません。
ただ――」
そこで、一瞬だけ迷い、
意を決したように言った。
「星飴測候庁の、一階ロビーの一角。
星飴おしゃべり席と、その隣に立つ人たちの姿は、
“戻ってきてよかった”と思える風景のひとつです」
「……っ」
「黄昏交差点から見える街の空も、
私にとっては、そうかもしれませんね」
胸の奥が、星飴シャワーみたいにざぁっと光った。
「ですから」
ユリウスは、窓の外から、
目の前の彼女に視線を戻した。
「どんな空を選ぶにしても――
星飴測候庁のこの場所は、
シュガールさんにとって、“戻ってきてもいい空”でありたいと思います」
「……ずるいです、その言い方」
「広報官ですので」
ふたりで、くすりと笑う。
けれど、笑いの奥で――
ミレイユの胸には、
ひとつの輪郭が浮かび始めていた。
(わたし、王都の空を、
“戻ってきてよかった”って思える場所にしたいんだ)
家族の空も大事。
工房の空も、きっといつか真正面から向き合わなければならない。
でも、同じくらい、
今ここで、自分の手で作っている空を、
ちゃんと好きでいたい。
その空の中には、
星飴のきらめきと、
おしゃべり席と、
黄昏交差点と――
そして、
広報官の少し不器用な「ありがとう」が、
確かに含まれているのだ。
*
その夜。
部屋の机の上に、
レモンパウンドと便箋と、
小さな星飴の瓶が並んでいた。
ミレイユは、ペンを持って、
ゆっくりと文字を綴る。
『お父さん、お母さんへ。
お菓子とお手紙、ありがとうございました。
雨上がりレモンパウンド、
王都の窓辺でも、ちゃんと“ふるさとの味”がしました。
跡継ぎの話、読んで、
正直に言うと、胸がぎゅっとなりました。
“戻ってきてほしい”と言われてもいないのに、
勝手に、責任を押し付けられたような気持ちになっていた自分と、
“戻らない言い訳”に使ってしまいそうな自分がいて、
どちらにも、少しだけ罪悪感があります。』
一度、ペンを止めて息を吐く。
それから、
さっき星飴が教えてくれた一行を、
自分の言葉に置き換えて、書き加えた。
『でも、星飴に、
“本当は、自分で選んだ空を、ちゃんと好きでいたい”って言われました。
だから、すぐに答えを出すことはできません。
星飴シャワーが終わって、
少し心と空が落ち着いたら、
改めて、自分の望みと、
工房の空模様を、一緒に天気図に描いてみたいです。
そのとき、
ちゃんと自分の足で、“帰る”か“残る”かを決めたいと思います。』
最後に、
少しだけ照れくさいけれど、
どうしても書きたかった一行を足した。
『ひとつだけ、今言えるのは、
王都の空も、星飴測候庁も、
わたしはとても好きだということです。
そこで出会った人たちにも、もう少し、
「ただいま」と「おかえり」を重ねてみたいです。』
書き終えて、便箋をぐっと抱きしめた。
窓の外の空は、
少し雲が多いけれど、
ところどころ、星の予感がにじんでいる。
「……さて」
机の端に置いてある、小さな瓶に目をやる。
ピンクの恋加速飴は、
まだそこで静かに光っていた。
「星飴シャワーの夜までには、
“空のこと”と同じくらい、
ちゃんと自分の気持ちも見つめられますように」
誰にともなくお願いしてから、
ミレイユは、そっと瓶の蓋を撫でた。
遠く離れた工房の空と、
王都の空。
そして、
星飴測候庁のロビーの一角と、
黄昏交差点の空。
――二日後、星飴シャワーが降る夜、
それらの空は、きっと同じ星を見上げている。
そのとき、自分はどの空の下で、
誰の隣で息をしているのか。
まだわからないけれど――
少なくとも今は、
“自分で選んだ空を、ちゃんと好きでいたい”という本音を、
胸の真ん中にそっと掲げておくことにしたのだった。
星飴測候庁の受付カウンターに、
見慣れない紙箱がひとつ、ちょこんと置かれていた。
「シュガールさん宛てのお荷物、届いてますよ」
受付の女性に声をかけられて、
ミレイユは慌てて駆け寄る。
「わ、わたしに、ですか?」
「はい。“郊外第七街区・シュガール菓子工房”より。
差出人、“おとうさん&おかあさんより”」
「……っ」
胸の奥が、きゅっと縮まった。
箱の端には、見覚えのある小さなリボン結び。
親指の跡のついた、懐かしい紙質。
「ありがとうございます……。
休憩時間に、開けてもいいですか?」
「もちろん。楽しみねぇ」
受付の女性が微笑む。
ミレイユは、箱を胸に抱えて、
そっと工房へと向かった。
*
星飴調整課の休憩室は、
いつも甘い匂いがかすかに残っている。
ポルカ課長と先輩たちは、
ちょうど現場に出ている時間帯らしく、誰もいない。
(……今なら、深呼吸しても、泣いても大丈夫)
ミレイユは、自分にそう言い聞かせてから、
そっと箱のふたを開けた。
中には、
小さな焼き菓子がぎっしりと詰まっていた。
星形のクッキー、
角砂糖みたいなキューブケーキ、
そして、彼女が子どもの頃から大好きだった、
“雨上がりレモンパウンド”。
「……変わってない」
思わず、こぼれる。
その上に、一通の手紙が乗っていた。
淡い水色の封筒。
角のところが、ちょっとだけ粉砂糖で白くなっている。
封を切る手が、すこし震えた。
便箋には、見慣れた丸い字が並んでいる。
『ミレイ、
王都で元気にしていますか。
星飴測候庁で働き始めたと聞いてから、
工房のみんなで、「もう立派な飴職人さんねぇ」と話しています。』
(……お母さん)
続く行を、そっと目で追う。
『こちらは相変わらず、朝から晩までバタバタしています。
最近は、王都からの観光客も増えてきて、
“星飴っぽいお菓子はありませんか”なんて聞かれることもあります。
あなたがいたら、新しいお菓子を一緒に考えられるのになぁ、と
お父さんがぼやいていました。』
行間から、工房のざわめきが聞こえてくるようだった。
粉砂糖の舞う音、オーブンの扉の音、
父の、少し不器用な笑い声。
『でも、これは「帰ってきなさい」という意味ではありません。
いつでも帰ってきていい、
でも、帰らなくてもいい。
あなたが、自分で選んだ場所で、
自分の手を好きでいられるなら、それがいちばんです。
ただ、もし王都がつらくなったり、
星飴が苦く感じる日があったりしたら、
いつでも、この箱を思い出してください。
あなたの帰りを待っている空が、ここにもあるということを。』
最後の行は、父の字に変わっていた。
『たまには、工房の空模様も教えてくれ。
おまえの描く“空の絵”、母さんが楽しみにしている。
星飴シャワー、きっときれいだろうな。
風邪をひかないように気をつけて。』
ミレイユは、便箋を胸の前でぎゅっと抱きしめた。
(……工房の空模様)
子どもの頃、
よく父に頼まれて、
その日の空を紙に描いた。
“お客さんが少ない日は曇りマーク”
“新しいお菓子が好評だった日は晴れマーク”
“売り切れ続出の日は星マーク”。
その横に、小さく家族の顔を描いて、
それぞれの表情に合った天気をつけるのが、
密かな楽しみだった。
(最近、描いてなかったな……)
胸の奥に、
懐かしさと、ちくりとした痛みが混ざる。
便箋の端には、もう一行、小さな追伸があった。
『追伸:
跡継ぎのこと、そろそろ真面目に考えなきゃね、と
みんなで話すことが増えました。
“ミレイに全部背負わせるつもりはないよ”と
何度も言い合いながら。
これも、空模様のひとつとして、
頭の片隅に置いておいてくれると嬉しいです。』
――跡継ぎ。
その単語に、胸の中の空が、
急にざわつき始めた。
(そうだよね……
いつまでも、“どこかよその空の話”みたいにしてるわけには、いかないよね)
工房には、年配の職人たちが多い。
父と母も、もう若くはない。
自分が王都に来たのは、
“星飴を作ってみたい”という憧れと、
少しの逃避心の混ざった選択だった。
(“わたしまでここにいなくなったら、工房はどうなるんだろう”って、
本当はずっと、頭の隅にあった)
でも、その考えにちゃんと向き合うのが怖くて、
星飴のきらめきに、
庁舎の賑やかさに、
ユリウスの真剣な横顔に――
甘やかされるように、目をそらしてきたのかもしれない。
便箋を畳んで、
小さく深呼吸をした。
(……めそめそしてる場合じゃないよね)
机の引き出しから、
ミニサイズの画用紙を一枚取り出す。
鉛筆を握って、
そっと線を引き始めた。
──“シュガール菓子工房・本日の空模様”。
・工房の上空:ちょっと忙しそうな、晴れ時々くもり。
・お父さんの頭上:少し眉間に皺のある晴れマーク。
・お母さんの周り:笑顔だけど、すこしハート型の雲が多め。
・古参職人さんたちのところには、小さな雨雲と湯気マーク。
そして――。
自分の頭上の空は、
丸を描いてから、しばらくペン先が止まった。
(わたしの空は、今、何模様なんだろう)
王都の星飴測候庁。
おしゃべり席。
黄昏交差点。
ユリウスの「ありがとう」。
全部を思い浮かべて、
そっとマークを描く。
自分の頭上には、
小さな星飴マークと、
その横に、三角の“未定”マーク。
「……ずるい絵だなぁ」
苦笑しながらも、
それが精一杯の正直さだった。
*
昼休みが終わる頃。
ミレイユは、工房の隅で、
ひとつの瓶を大事そうに抱えていた。
瓶の中には、
“家族向け星飴”として試作中の、小さな星たちが入っている。
「“離れていても同じ空を見ているよ飴”……」
仮の名前を口の中で転がしてみて、
自分で照れ笑いする。
星飴シャワーに合わせて、
遠くにいる家族や友人同士が、
お互いの空模様を想い合える飴を作れたら――。
そんな企画案を、こっそりメモしていた。
(今のわたしに、一番必要な飴でもあるんだけど)
瓶から一粒だけ取り出す。
淡いオレンジ色の、小さな星。
“家族を思う気持ち”と“自分の道を願う気持ち”を、
両方そっと封じ込めたつもりの配合。
「……試食、してみようかな」
星飴測候庁の飴は、
基本的に職員によるテストを経てから世に出る。
自分で作った飴を、自分で試すことも多い。
(怖いけど……
星飴に教えてもらわないと、
わたし、多分また逃げちゃう)
ミレイユは、目を閉じて、
小さな星を舌の上に乗せた。
すーっと溶けていく甘さは、
レモンパウンドの柑橘と、
星飴工房の砂糖の匂いを足したような味。
胸の奥が、じんわり温かくなる。
やがて、指先の包み紙が、
ふわりと熱を帯びた。
ゆっくり広げると、
柔らかな文字が一行、現れていた。
『本当は、自分で選んだ空を、ちゃんと好きでいたい』
息を呑んだ。
“工房の空”でも、“王都の空”でもなく。
“誰かに決められた空”でもなく。
“自分で選んだ空”。
「……ずるいよ、星飴」
笑いながら、目の奥が熱くなる。
「そうだよね……
どっちにいても、“誰かのため”だけじゃ、きっと苦しくなる。
ちゃんと、自分で選んだって言える場所じゃないと」
家族の期待も、工房の空模様も大事だ。
でも、“自分の空”を、ちゃんと好きでいたい。
そう願っていいのだと、
星飴はそっと教えてくれた。
そのとき――。
「シュガールさん」
背後から、控えめなノックの音とともに、声がした。
「ひゃっ……!」
慌てて振り返ると、
扉のところに、ユリウスが立っていた。
「そんなに驚かなくても」
「ご、ごめんなさい……!」
包み紙を握りしめたままの手を慌てて背中に回し、
変に不自然な姿勢になってしまう。
「少々お時間をいただけますか。
星飴シャワー当日の配布リストの件で、調整課の意見を伺いたくて」
「あ、はいっ」
(落ち着け、落ち着け)
胸の中の“自分で選んだ空”の一行が、
まだじんじんと響いているのを感じながら、
ミレイユは、なんとか平静を装って立ち上がった。
*
廊下を歩きながら、
資料の説明を受ける。
「……というわけで、
“星飴シャワー記念セット”の試作配分について、
調整課の意見を反映させたいのです」
「“家族向け星飴”を入れる案も、
候補にあるんですよね?」
「ええ。“遠く離れた誰かを思うための飴”として」
ユリウスは、手元の紙をめくりながら頷いた。
「シュガールさんが出してくれたメモ、
庁長が気に入っていましたよ」
「ほ、本当ですか」
「“離れていても同じ空を見上げられる飴”――
なかなかに、星飴測候庁らしいテーマです」
嬉しさと照れくささで、胸が忙しくなる。
そうして一通りの打ち合わせを終え、
切りの良いところで、廊下の窓際に差しかかった。
窓の向こうには、
少し厚みを増した雲と、
その隙間からのぞく、淡い青空。
「……ユリウスさん」
ふと、言葉がこぼれた。
「はい?」
「家族って、“空模様”に例えるとしたら、
どんな感じだと思いますか」
自分でも、唐突な質問だと思う。
でも、聞かずにはいられなかった。
ユリウスは、ほんの少しだけ目を細め、
窓の外を見上げた。
「そうですね……」
彼が、空に向かって“観測モード”に入るときの顔だった。
「“毎日見ているのに、
つい“いつもそこにある”と勘違いして、
意識することを忘れがちな空”――でしょうか」
「……」
「晴れている日も、曇っている日も、
気づかないうちに、自分の呼吸や気分に影響を与えている。
だけど、忙しいときほど、
わざわざ窓を開けて“今日はどんな空だろう”と
見上げることを忘れてしまう。
そういう意味では、
家族も、空も、似ているかもしれません」
ミレイユは、胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じた。
「……わたし、今朝、工房から手紙が届いたんです」
自分から話し始めていた。
逃げるのは、
さっき星飴と約束したばかりだ。
「“いつでも帰ってきていい、
でも帰らなくてもいい”って書いてあって。
跡継ぎのことも、そろそろ考えなきゃねって」
ユリウスは、驚いた様子は見せず、
ただ静かに耳を傾けてくれる。
「王都の空も好きだし、星飴も好きで。
でも、工房の空も、家族のことも大事で。
どっちかを選んだら、
もう片方を裏切るみたいな気がして……
頭の中の天気図が、ぐるぐるしてます」
そこまで言って、
半ば冗談めかして付け足した。
「測候庁の広報官さんなら、
こういう時の“空模様コメント”って、
どうつけますか?」
ユリウスは、少しだけ考えた。
そして、いつもの真面目な声で言う。
「“前線がいくつも交差しており、
しばらくはぐるぐる状態が続く見込み。
ただし、地表付近の温度は十分にあたたかく、
晴れ間のポテンシャルは高い”――でしょうか」
「ポ、ポテンシャル……」
思わず笑ってしまう。
「つまり、今は“選ぶための雲”が多いだけで、
どちらの空も、
決して“悪天候”ではない、ということです」
「……」
「どちらを選んでも、誰かにとっては寂しく、
そして、誰かにとっては嬉しい。
そういうとき、
私がいつも市民に伝えるのはひとつだけです」
ユリウスは、窓ガラスに映る自分たちの姿を、
ちらりと見つめた。
「“せめて、選ぶときだけは、自分の空を見上げてください”」
その言い方は、
どこか自分自身にも言い聞かせているようだった。
「“誰かの涙の予報”だけを見て決めてしまうと、
あとから自分の中で、嵐になりますから」
「……誰かの涙の予報」
「もちろん、“誰かを悲しませたい”という意味ではありません。
ただ、
“自分はどんな空の下で、息をしたいのか”を、
最後に確認してほしいのです」
ミレイユは、胸の中の“一行”を思い出す。
『本当は、自分で選んだ空を、ちゃんと好きでいたい』
(……やっぱり、星飴って、ずるい)
ユリウスの言葉と、
包み紙の一行が、
ぴたりと重なってしまう。
「……ユリウスさんには、“帰ってきてほしい空”ってありますか?」
今度は、彼に尋ねる番だった。
「私に、ですか」
「はい。
“いつでも戻ってきていいんだよ”って言ってくれる場所とか」
ユリウスは、少しだけ視線を泳がせた。
「……難しい質問ですね」
苦笑してから、
ゆっくりと言葉を選ぶ。
「物理的な意味での“帰る場所”は、
正直、あまり明確には思い浮かびません。
ただ――」
そこで、一瞬だけ迷い、
意を決したように言った。
「星飴測候庁の、一階ロビーの一角。
星飴おしゃべり席と、その隣に立つ人たちの姿は、
“戻ってきてよかった”と思える風景のひとつです」
「……っ」
「黄昏交差点から見える街の空も、
私にとっては、そうかもしれませんね」
胸の奥が、星飴シャワーみたいにざぁっと光った。
「ですから」
ユリウスは、窓の外から、
目の前の彼女に視線を戻した。
「どんな空を選ぶにしても――
星飴測候庁のこの場所は、
シュガールさんにとって、“戻ってきてもいい空”でありたいと思います」
「……ずるいです、その言い方」
「広報官ですので」
ふたりで、くすりと笑う。
けれど、笑いの奥で――
ミレイユの胸には、
ひとつの輪郭が浮かび始めていた。
(わたし、王都の空を、
“戻ってきてよかった”って思える場所にしたいんだ)
家族の空も大事。
工房の空も、きっといつか真正面から向き合わなければならない。
でも、同じくらい、
今ここで、自分の手で作っている空を、
ちゃんと好きでいたい。
その空の中には、
星飴のきらめきと、
おしゃべり席と、
黄昏交差点と――
そして、
広報官の少し不器用な「ありがとう」が、
確かに含まれているのだ。
*
その夜。
部屋の机の上に、
レモンパウンドと便箋と、
小さな星飴の瓶が並んでいた。
ミレイユは、ペンを持って、
ゆっくりと文字を綴る。
『お父さん、お母さんへ。
お菓子とお手紙、ありがとうございました。
雨上がりレモンパウンド、
王都の窓辺でも、ちゃんと“ふるさとの味”がしました。
跡継ぎの話、読んで、
正直に言うと、胸がぎゅっとなりました。
“戻ってきてほしい”と言われてもいないのに、
勝手に、責任を押し付けられたような気持ちになっていた自分と、
“戻らない言い訳”に使ってしまいそうな自分がいて、
どちらにも、少しだけ罪悪感があります。』
一度、ペンを止めて息を吐く。
それから、
さっき星飴が教えてくれた一行を、
自分の言葉に置き換えて、書き加えた。
『でも、星飴に、
“本当は、自分で選んだ空を、ちゃんと好きでいたい”って言われました。
だから、すぐに答えを出すことはできません。
星飴シャワーが終わって、
少し心と空が落ち着いたら、
改めて、自分の望みと、
工房の空模様を、一緒に天気図に描いてみたいです。
そのとき、
ちゃんと自分の足で、“帰る”か“残る”かを決めたいと思います。』
最後に、
少しだけ照れくさいけれど、
どうしても書きたかった一行を足した。
『ひとつだけ、今言えるのは、
王都の空も、星飴測候庁も、
わたしはとても好きだということです。
そこで出会った人たちにも、もう少し、
「ただいま」と「おかえり」を重ねてみたいです。』
書き終えて、便箋をぐっと抱きしめた。
窓の外の空は、
少し雲が多いけれど、
ところどころ、星の予感がにじんでいる。
「……さて」
机の端に置いてある、小さな瓶に目をやる。
ピンクの恋加速飴は、
まだそこで静かに光っていた。
「星飴シャワーの夜までには、
“空のこと”と同じくらい、
ちゃんと自分の気持ちも見つめられますように」
誰にともなくお願いしてから、
ミレイユは、そっと瓶の蓋を撫でた。
遠く離れた工房の空と、
王都の空。
そして、
星飴測候庁のロビーの一角と、
黄昏交差点の空。
――二日後、星飴シャワーが降る夜、
それらの空は、きっと同じ星を見上げている。
そのとき、自分はどの空の下で、
誰の隣で息をしているのか。
まだわからないけれど――
少なくとも今は、
“自分で選んだ空を、ちゃんと好きでいたい”という本音を、
胸の真ん中にそっと掲げておくことにしたのだった。
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