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第2話 指先の清め
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神殿の水は、冷たい。
冬でなくても、石造りの奥に溜まった冷気が水に移り、指先から心臓へと静かに届く。彼女は洗い場で手を清めながら、ひとつ息を吐いた。墨の匂いと紙の乾きが指の腹に残っている気がする。
——今日から。
そう思った瞬間、胸の奥に小さな灯りがついた。昨日、彼の執務室の扉を閉めたあとからずっと消えない灯りだ。仕事のため。神殿のため。……そして、自分のために。
「……おはようございます」
背後から静かな声がして、彼女は反射で背筋を伸ばした。
振り返ると、そこにいたのは彼だった。神官の衣を整え、いつも通りの穏やかな表情で、しかし目の奥だけがどこか慎重に揺れている。彼女が「今日から」と思ったのと同じように、彼も何かを意識しているのだと、そんな風に見えてしまうのが厄介だった。
「おはようございます」
彼女は微笑を作り、手を拭いた。控えめに。礼儀正しく。——でも、逃さない。
「本日の予定を確認させてください。香木の出納、過去三月分の洗い直しは、午前中にひと区切りつけます。午後には、倉庫の現物確認と、祭具の点検……」
「祭具の点検は、私も立ち会います」
彼がさらりと言った。
彼女は頷いた。表情は変えずに。
「承知しました。清めの作法は、いつも通りでよろしいですね」
「はい。……あなたが把握している通りで」
彼は丁寧な言い方をする。その丁寧さが、彼の清さであり、時に距離にもなる。
けれど今日は、その距離が仕事のために縮む。
ふたりは、朝の回廊を並んで歩いた。並ぶ、といっても、ほんの半歩ほど彼が前だ。神官としての立場と、守るための癖。彼女はその半歩を、意識しないふりをしながら数えた。いつか同じ歩幅になる日は来るのだろうか、と。
祭具庫の扉を開けると、空気が変わった。
香木の匂い。乾いた布の匂い。金属の冷たい匂い。祈りのために整えられた道具は、どれも“正しく”並べられている。人の手が触れた跡さえ、清めの布で拭われている。
彼女は手袋をつけ、作業台に布を敷いた。彼は袖を軽くまくり、清め水の器を運ぶ。
「……いつも、こうしているのですか」
彼が問うたのは、器の置き方だった。角度、距離、布の折り目。
「はい。誰が見ても同じになるように。祈りの場は、気分で変えてはいけませんから」
現実的な答え。彼が好む答え。彼は小さく頷いた。
「あなたのやり方は、安心します」
その言葉が、胸の奥の灯りを少しだけ強くした。
だが、彼女は笑いすぎない。嬉しさは声に出さず、指先にだけ乗せる。
「では、まず器具の清めから。こちらをお持ちいただけますか」
彼女が差し出したのは、銀の杯だった。聖水を受けるための器。薄い銀は光を拾いやすく、少しの汚れも目立つ。
彼は杯を受け取り、清め水の上で静かに回した。作法は完璧だ。指の力加減、息の吐き方、祈りの言葉の速さ。
彼の“完璧”を見ていると、彼女はときどき怖くなる。
——この人は、どこまで自分を削って「正しい」を保っているのだろう。
その恐れを、彼女は帳簿の数字に押し戻した。今は仕事。今は、神殿のため。
次に布、香炉、灯明皿……順に清め、最後に祭礼用の小さな刃(香木を削るための道具)に差しかかったときだった。
刃は鋭い。小さく、しかし油断すると簡単に指を切る。
「その刃は、こちらで」
彼女が手を伸ばす。
「私が持ちます」
同時に、彼も手を伸ばした。
銀の刃を受け取る瞬間、指先が触れた。
——たった、それだけ。
手袋を介して肌と肌が一瞬重なる。冷たいはずの刃よりも熱いものが指の腹に移った。
彼女は、反射で指を引きそうになり、寸前で止めた。引けば、驚いたことが露骨になる。驚くべきことではない。仕事だ。道具の受け渡しだ。
彼女は平静を装って、刃を受け取った。
けれど、その瞬間。
彼の呼吸が、ほんの一拍、乱れた。
……気のせいではない。
作法も言葉も乱さない彼が、呼吸だけを乱す。その程度の小さな綻びが、彼の内側にある熱を、より確かなものとして彼女の胸に落とす。
彼女は視線を落とし、刃を布の上に置いた。淡々と、手順を続ける。
「刃は、清め水に浸してから、布で拭います。刃先に水滴を残さないように」
声はいつも通り。指先だけが、先ほどの触感を覚えたまま、微かに震えていた。
彼は「はい」と答えたが、その声が少しだけ低かった。
それが、彼の“熱”の正体ではない。まだ影だ。輪郭がない。
けれど、影は影として、確かにそこにある。
作業が進み、香炉に香木を入れる段になった。香木は軽いが高価で、神殿の権威を支える象徴でもある。だからこそ、帳簿の歪みの中心になりやすい。
彼女は香木の箱を開け、香りを確かめた。甘く、深い、少し苦い。祈りに似合う匂い。——そして、人の欲に似合う匂いでもある。
「……この香木、量が少ないですね」
彼がぽつりと言った。
彼女はすぐに頷いた。
「昨日の帳簿と一致します。巡礼用に回したと記載されていますが……現物が少ない」
「……やはり」
彼は目を伏せた。祈りの言葉を口にする前のように、短く息を吸う。
彼女は、そこに言葉を挟まなかった。慰めも、怒りも、断定も。今は、事実だけを積む。
その沈黙を破ったのは、彼の方だった。
「あなたは……怖くないのですか」
唐突な問いだった。
彼女は手を止めずに答えた。
「怖いです。神殿が崩れることが。祈りの場所が、誰かの欲で汚れることが」
それは現実的な恐れ。
しかし彼の問いは、もうひとつ別の意味を含んでいた。——自分のそばにいることが、怖くないのか、と。
彼女はそれに気づいて、気づかないふりをした。控えめを装って、積極的に。
「だから、手順を守ります。記録を残します。証拠を固めます。……あなたが、正しい判断をできるように」
彼はゆっくりと彼女を見た。
その目に、ほんの少しだけ困った色が混じる。聖人の顔の奥にある、人の顔。
「……あなたは、私を買いかぶりすぎです」
「買いかぶっていません。現実的な評価です」
彼女は淡々と言い切った。
彼は小さく笑った。笑うと、彼は少しだけ年相応に見える。その笑みが、彼女の胸の奥の灯りをさらに強くする。
作業がひと段落し、清めた祭具を布で包み直す。最後に、ふたりは清め水の器を片づけた。
彼が器を持ち上げたとき、水面が揺れて、光が揺れた。淡い光のゆらぎが、彼の指の線を柔らかく見せる。
彼女はふと、さっきの指先の触れた感触を思い出し、目を伏せた。
——落ち着いて。
彼の清さを壊したくない。
だから、見つめすぎない。求めすぎない。触れすぎない。
でも。
完全に離れるつもりも、ない。
片づけが終わり、彼が扉へ向かう前に言った。
「午後、倉庫の確認に行きましょう。……あなたと一緒に」
ただの業務指示。けれど、わざわざ付け足されたその一言が、彼の内側の熱を示しているようで、彼女は喉の奥が少しだけ痛くなった。
「はい。準備しておきます」
彼が去り、祭具庫にひとり残されると、空気が少し冷たく感じた。
彼女は手袋を外し、自分の指先を見つめた。
さっき触れた場所。冷たいはずなのに、まだ熱い。
——祈りよりも清らかなものがあるとしたら。
それはきっと、こういう瞬間に生まれる。
誰にも見えないところで、誰にも言わないまま、互いを尊ぶために一歩ずつ近づく、静かな熱。
彼女は帳簿を抱え直し、次の仕事へ向かった。
灯明は消さない。
まだ、消す理由がないのだから。
冬でなくても、石造りの奥に溜まった冷気が水に移り、指先から心臓へと静かに届く。彼女は洗い場で手を清めながら、ひとつ息を吐いた。墨の匂いと紙の乾きが指の腹に残っている気がする。
——今日から。
そう思った瞬間、胸の奥に小さな灯りがついた。昨日、彼の執務室の扉を閉めたあとからずっと消えない灯りだ。仕事のため。神殿のため。……そして、自分のために。
「……おはようございます」
背後から静かな声がして、彼女は反射で背筋を伸ばした。
振り返ると、そこにいたのは彼だった。神官の衣を整え、いつも通りの穏やかな表情で、しかし目の奥だけがどこか慎重に揺れている。彼女が「今日から」と思ったのと同じように、彼も何かを意識しているのだと、そんな風に見えてしまうのが厄介だった。
「おはようございます」
彼女は微笑を作り、手を拭いた。控えめに。礼儀正しく。——でも、逃さない。
「本日の予定を確認させてください。香木の出納、過去三月分の洗い直しは、午前中にひと区切りつけます。午後には、倉庫の現物確認と、祭具の点検……」
「祭具の点検は、私も立ち会います」
彼がさらりと言った。
彼女は頷いた。表情は変えずに。
「承知しました。清めの作法は、いつも通りでよろしいですね」
「はい。……あなたが把握している通りで」
彼は丁寧な言い方をする。その丁寧さが、彼の清さであり、時に距離にもなる。
けれど今日は、その距離が仕事のために縮む。
ふたりは、朝の回廊を並んで歩いた。並ぶ、といっても、ほんの半歩ほど彼が前だ。神官としての立場と、守るための癖。彼女はその半歩を、意識しないふりをしながら数えた。いつか同じ歩幅になる日は来るのだろうか、と。
祭具庫の扉を開けると、空気が変わった。
香木の匂い。乾いた布の匂い。金属の冷たい匂い。祈りのために整えられた道具は、どれも“正しく”並べられている。人の手が触れた跡さえ、清めの布で拭われている。
彼女は手袋をつけ、作業台に布を敷いた。彼は袖を軽くまくり、清め水の器を運ぶ。
「……いつも、こうしているのですか」
彼が問うたのは、器の置き方だった。角度、距離、布の折り目。
「はい。誰が見ても同じになるように。祈りの場は、気分で変えてはいけませんから」
現実的な答え。彼が好む答え。彼は小さく頷いた。
「あなたのやり方は、安心します」
その言葉が、胸の奥の灯りを少しだけ強くした。
だが、彼女は笑いすぎない。嬉しさは声に出さず、指先にだけ乗せる。
「では、まず器具の清めから。こちらをお持ちいただけますか」
彼女が差し出したのは、銀の杯だった。聖水を受けるための器。薄い銀は光を拾いやすく、少しの汚れも目立つ。
彼は杯を受け取り、清め水の上で静かに回した。作法は完璧だ。指の力加減、息の吐き方、祈りの言葉の速さ。
彼の“完璧”を見ていると、彼女はときどき怖くなる。
——この人は、どこまで自分を削って「正しい」を保っているのだろう。
その恐れを、彼女は帳簿の数字に押し戻した。今は仕事。今は、神殿のため。
次に布、香炉、灯明皿……順に清め、最後に祭礼用の小さな刃(香木を削るための道具)に差しかかったときだった。
刃は鋭い。小さく、しかし油断すると簡単に指を切る。
「その刃は、こちらで」
彼女が手を伸ばす。
「私が持ちます」
同時に、彼も手を伸ばした。
銀の刃を受け取る瞬間、指先が触れた。
——たった、それだけ。
手袋を介して肌と肌が一瞬重なる。冷たいはずの刃よりも熱いものが指の腹に移った。
彼女は、反射で指を引きそうになり、寸前で止めた。引けば、驚いたことが露骨になる。驚くべきことではない。仕事だ。道具の受け渡しだ。
彼女は平静を装って、刃を受け取った。
けれど、その瞬間。
彼の呼吸が、ほんの一拍、乱れた。
……気のせいではない。
作法も言葉も乱さない彼が、呼吸だけを乱す。その程度の小さな綻びが、彼の内側にある熱を、より確かなものとして彼女の胸に落とす。
彼女は視線を落とし、刃を布の上に置いた。淡々と、手順を続ける。
「刃は、清め水に浸してから、布で拭います。刃先に水滴を残さないように」
声はいつも通り。指先だけが、先ほどの触感を覚えたまま、微かに震えていた。
彼は「はい」と答えたが、その声が少しだけ低かった。
それが、彼の“熱”の正体ではない。まだ影だ。輪郭がない。
けれど、影は影として、確かにそこにある。
作業が進み、香炉に香木を入れる段になった。香木は軽いが高価で、神殿の権威を支える象徴でもある。だからこそ、帳簿の歪みの中心になりやすい。
彼女は香木の箱を開け、香りを確かめた。甘く、深い、少し苦い。祈りに似合う匂い。——そして、人の欲に似合う匂いでもある。
「……この香木、量が少ないですね」
彼がぽつりと言った。
彼女はすぐに頷いた。
「昨日の帳簿と一致します。巡礼用に回したと記載されていますが……現物が少ない」
「……やはり」
彼は目を伏せた。祈りの言葉を口にする前のように、短く息を吸う。
彼女は、そこに言葉を挟まなかった。慰めも、怒りも、断定も。今は、事実だけを積む。
その沈黙を破ったのは、彼の方だった。
「あなたは……怖くないのですか」
唐突な問いだった。
彼女は手を止めずに答えた。
「怖いです。神殿が崩れることが。祈りの場所が、誰かの欲で汚れることが」
それは現実的な恐れ。
しかし彼の問いは、もうひとつ別の意味を含んでいた。——自分のそばにいることが、怖くないのか、と。
彼女はそれに気づいて、気づかないふりをした。控えめを装って、積極的に。
「だから、手順を守ります。記録を残します。証拠を固めます。……あなたが、正しい判断をできるように」
彼はゆっくりと彼女を見た。
その目に、ほんの少しだけ困った色が混じる。聖人の顔の奥にある、人の顔。
「……あなたは、私を買いかぶりすぎです」
「買いかぶっていません。現実的な評価です」
彼女は淡々と言い切った。
彼は小さく笑った。笑うと、彼は少しだけ年相応に見える。その笑みが、彼女の胸の奥の灯りをさらに強くする。
作業がひと段落し、清めた祭具を布で包み直す。最後に、ふたりは清め水の器を片づけた。
彼が器を持ち上げたとき、水面が揺れて、光が揺れた。淡い光のゆらぎが、彼の指の線を柔らかく見せる。
彼女はふと、さっきの指先の触れた感触を思い出し、目を伏せた。
——落ち着いて。
彼の清さを壊したくない。
だから、見つめすぎない。求めすぎない。触れすぎない。
でも。
完全に離れるつもりも、ない。
片づけが終わり、彼が扉へ向かう前に言った。
「午後、倉庫の確認に行きましょう。……あなたと一緒に」
ただの業務指示。けれど、わざわざ付け足されたその一言が、彼の内側の熱を示しているようで、彼女は喉の奥が少しだけ痛くなった。
「はい。準備しておきます」
彼が去り、祭具庫にひとり残されると、空気が少し冷たく感じた。
彼女は手袋を外し、自分の指先を見つめた。
さっき触れた場所。冷たいはずなのに、まだ熱い。
——祈りよりも清らかなものがあるとしたら。
それはきっと、こういう瞬間に生まれる。
誰にも見えないところで、誰にも言わないまま、互いを尊ぶために一歩ずつ近づく、静かな熱。
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