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第3話 聖人の弱点は夜に出る
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夜の神殿は、昼よりも“神さま”に近い。
そう言ったのは昔の神殿長だった。昼は人が多い。願いが多い。泣き声や笑い声や足音が、祈りに混じる。けれど夜は違う。神殿そのものが呼吸をして、香が静かに降りて、灯明の火が小さな命みたいに揺れている。
——だから、夜は弱点が出る。
彼女は灯明油の小瓶を抱え、回廊を歩いた。石畳の冷たさが足裏に伝わる。吐く息は白くならないのに、胸の奥だけが妙に熱い。
今日の倉庫確認で、香木の箱が二つ足りなかった。
帳簿では「巡礼用」。伝票は整っている。署名もある。手続き上は完璧だ。完璧すぎる。神殿の“綺麗な歪み”は、こうして作られる。
その歪みを正すために、彼は動いている。
そして——動いているからこそ、彼の夜が壊れかけている。
「……灯明の点検は、あなた一人で?」
昼間、彼がそう言ったとき、彼女は首を横に振った。
「本来は私の担当です。ですが、今日は……あなたも眠れていないでしょう」
言ってから、しまったと思った。踏み込みすぎた。控えめを装うべきだった。
けれど彼は否定しなかった。
ただ一瞬、まぶたを伏せて、淡々と答えた。
「……眠れていません。祈りが、長くなる」
それが聖人の告白の仕方だった。
夜。
彼女が灯明点検に向かうと、回廊の端に彼がいた。灯りの近くで、影が薄い。神官衣の白が闇に浮いて、まるで彫像のように見える。
「お待たせしました」
「いえ。……私も、点検を確認しておきたかった」
言い訳のように聞こえた。本人は気づいていない。
彼は“聖務”を理由にする癖がある。そうすれば、自分が何を望んでいるのかを考えなくて済む。望みを持つこと自体が、彼にとって怖いのだ。
彼女はその癖を責めない。——利用する。
「ありがとうございます。では、こちらから」
言葉は淡々と。足取りは迷わず。心臓だけが少し速い。
灯明は、神殿の各所に点在している。回廊、礼拝堂、告解室、祭具庫の前、そして奥の小さな祈りの間。灯りが消えることは不吉とされ、夜の点検は欠かせない。
彼女は小瓶の栓を外し、灯明皿に油を足した。火がひゅっと息を吸うように強くなる。揺れが落ち着き、静かな光が石壁を撫でた。
彼はその横で、黙って見ていた。見守る、というより、そこにいる。半歩前の癖は夜にも残っている。守るための半歩。彼の“正しさ”の形。
点検が三つ目を終えた頃、彼女はふと気づいた。
彼の指先が、僅かに白い。
寒さのせいだけではない。握りしめている。自分の内側を閉じ込めるように。祈りを続けるとき、人はこういう手をする。
「……お茶をお持ちしましょうか」
彼女は自然に言った。言ってから、また踏み込みすぎたと気づく。だが、引けない。引けば彼の弱さを強調することになる。
「いえ……」
彼は否定しかけて、言葉を止めた。
沈黙が、夜の冷気を濃くする。
そして彼は、珍しく、短く言った。
「……いただけるなら」
胸の奥で、灯りが強くなった。
彼女は頷き、小さな調理室へ向かった。神殿の夜の茶は特別ではない。薬草を少し、乾燥果実を少し。眠りを促す配合。現実的で、実務的で、だからこそ優しい。
戻ると、彼は回廊の窓辺に立っていた。夜空は黒く、星は少ない。月明かりが彼の横顔の線を冷たく照らす。
彼女は湯気の立つカップを差し出した。
「熱いので、お気をつけて」
彼は受け取り、指先でカップの温度を確かめた。温い。熱すぎない。彼女は相手の体温と呼吸を、言葉より先に見てしまう。
「……ありがとうございます」
その声が、昼より少し低い。
彼は一口飲み、目を閉じた。祈りの時の閉じ方ではない。心を戻すための閉じ方。
彼女は、その横に立った。距離は一歩。近づきすぎない。けれど、離れない。
夜の神殿は音が少ない。だから、彼の呼吸がわかる。吸う、吐く。その間の揺れ。
しばらくして、彼がぽつりと言った。
「……あなたは、どうしてここにいるのですか」
質問の形をしているのに、答えが怖い人の声だった。
彼女はカップを両手で持ち直し、湯気を見つめた。言葉を選ぶ。
正直に言えば、「あなたに会いたいから」だ。
けれど、それは彼の清さを壊す言葉になる。彼は今、“神官”として保っている。彼女の恋心が彼を人に戻してしまったら、彼は自分を許せなくなるかもしれない。
だから、真実を薄くする。嘘ではなく、角を取る。
「現実的な理由です。神殿は、祈りだけでは回りません。帳簿を整える人がいないと、灯明油も買えません」
彼は小さく笑った。
「……あなたらしい」
笑いが出る余裕があるなら、少し安心だ。彼女は胸の奥の熱を隠したまま、続けた。
「それに。ここにいると、落ち着きます。……神殿は静かで、整っていて。好きです」
彼女は“神殿”と言った。
彼は、その言葉の裏を読もうとしない。読めないふりをする。あるいは、読んだら自分が壊れるから、読まない。
それが彼の聖人の生き方だった。
沈黙が降りる。灯明の火が小さく揺れ、影が壁を歩く。夜の神殿は、ふたりの間の言葉を増やさない代わりに、感情を濃くする。
彼がもう一口飲み、カップを下ろした。
「……最近、祈りが長くなります」
さっきと同じ告白。だが、今度は続きがあった。
「祈っていると……本来、心が清められるはずなのに。……私は、妙に“欲”が増える」
彼女は息を止めた。
夜は弱点が出る。
聖人が、聖人であることに疲れている。いや、疲れているのではない。——聖人であることが彼の「自分を守る方法」になっているのに、その方法が崩れかけている。
欲。
その言葉が彼の口から出ること自体、異常だ。
彼女は慌てて慰めない。慰めたら、彼の弱さを自分の手で掴むことになる。掴みたい。けれど、掴まない。彼の清さを壊さない。
だから、現実的な返しを選ぶ。
「祈りが長いと、眠りが浅くなります。眠りが浅いと、心は弱くなります。……欲が増えるのは、悪いことではありません。生きている証拠です」
言ってしまった。
生きている証拠。
それは、聖人ではなく人に向ける言葉だ。
彼の目が、ゆっくりと彼女を向いた。灯明の光がその瞳に映り、暗いのに明るい。
「……あなたは、怖くないのですか。私が、清くなくなることが」
その問いは、今夜の本題だった。
彼女は、少しだけ笑った。控えめに。けれど、逃げずに。
「清くない、とは思いません。あなたが誰かを傷つけるなら、私は怖い。けれど、あなたがあなたの心を持つことを……私は、汚れだとは思わない」
言葉が静かに落ちた。
夜の神殿は、どんな祈りよりも静かにそれを受け取る。
彼の喉が小さく動いた。声が出ない。代わりに、彼はカップを握り直した。指先が白い。
熱が内側で膨らんでいる。
彼女は、そこで一歩だけ引いた。
近づきすぎない。まだ、彼には逃げ道が必要だ。
「点検、続けましょう」
彼は一瞬遅れて、頷いた。
「……はい」
ふたりはまた歩き出す。回廊の灯明をひとつずつ整える。油を足し、火を守り、影を払う。
最後の灯明を点け終えたとき、彼女は振り返った。
彼は半歩前に立っていた。けれど、今夜の半歩は、守るためだけではない。
——近づきたいから、という衝動が混じっている。
彼はそれを言葉にしない。言葉にしたら、聖人の仮面が割れるから。
彼女も言葉にしない。言葉にしたら、彼が逃げるかもしれないから。
それでも、夜は弱点を残す。
灯明の火が揺れたとき、彼が小さく言った。
「……明日も、帳簿を見ていただけますか」
彼が“仕事”という言い訳を差し出した。
彼女は、その言い訳を丁寧に受け取った。
「はい。現実的に、進めます」
彼は、少しだけ息を吐いた。安堵。あるいは、敗北にも似たもの。
夜の神殿に、ふたりの祈りがひとつ増えた。
祈りよりも清らかなもの——それは、誰かを尊ぶために、自分の熱を否定しないという決意だった。
そして、その決意は今夜もまた、灯明のように小さく燃え続けていた。
そう言ったのは昔の神殿長だった。昼は人が多い。願いが多い。泣き声や笑い声や足音が、祈りに混じる。けれど夜は違う。神殿そのものが呼吸をして、香が静かに降りて、灯明の火が小さな命みたいに揺れている。
——だから、夜は弱点が出る。
彼女は灯明油の小瓶を抱え、回廊を歩いた。石畳の冷たさが足裏に伝わる。吐く息は白くならないのに、胸の奥だけが妙に熱い。
今日の倉庫確認で、香木の箱が二つ足りなかった。
帳簿では「巡礼用」。伝票は整っている。署名もある。手続き上は完璧だ。完璧すぎる。神殿の“綺麗な歪み”は、こうして作られる。
その歪みを正すために、彼は動いている。
そして——動いているからこそ、彼の夜が壊れかけている。
「……灯明の点検は、あなた一人で?」
昼間、彼がそう言ったとき、彼女は首を横に振った。
「本来は私の担当です。ですが、今日は……あなたも眠れていないでしょう」
言ってから、しまったと思った。踏み込みすぎた。控えめを装うべきだった。
けれど彼は否定しなかった。
ただ一瞬、まぶたを伏せて、淡々と答えた。
「……眠れていません。祈りが、長くなる」
それが聖人の告白の仕方だった。
夜。
彼女が灯明点検に向かうと、回廊の端に彼がいた。灯りの近くで、影が薄い。神官衣の白が闇に浮いて、まるで彫像のように見える。
「お待たせしました」
「いえ。……私も、点検を確認しておきたかった」
言い訳のように聞こえた。本人は気づいていない。
彼は“聖務”を理由にする癖がある。そうすれば、自分が何を望んでいるのかを考えなくて済む。望みを持つこと自体が、彼にとって怖いのだ。
彼女はその癖を責めない。——利用する。
「ありがとうございます。では、こちらから」
言葉は淡々と。足取りは迷わず。心臓だけが少し速い。
灯明は、神殿の各所に点在している。回廊、礼拝堂、告解室、祭具庫の前、そして奥の小さな祈りの間。灯りが消えることは不吉とされ、夜の点検は欠かせない。
彼女は小瓶の栓を外し、灯明皿に油を足した。火がひゅっと息を吸うように強くなる。揺れが落ち着き、静かな光が石壁を撫でた。
彼はその横で、黙って見ていた。見守る、というより、そこにいる。半歩前の癖は夜にも残っている。守るための半歩。彼の“正しさ”の形。
点検が三つ目を終えた頃、彼女はふと気づいた。
彼の指先が、僅かに白い。
寒さのせいだけではない。握りしめている。自分の内側を閉じ込めるように。祈りを続けるとき、人はこういう手をする。
「……お茶をお持ちしましょうか」
彼女は自然に言った。言ってから、また踏み込みすぎたと気づく。だが、引けない。引けば彼の弱さを強調することになる。
「いえ……」
彼は否定しかけて、言葉を止めた。
沈黙が、夜の冷気を濃くする。
そして彼は、珍しく、短く言った。
「……いただけるなら」
胸の奥で、灯りが強くなった。
彼女は頷き、小さな調理室へ向かった。神殿の夜の茶は特別ではない。薬草を少し、乾燥果実を少し。眠りを促す配合。現実的で、実務的で、だからこそ優しい。
戻ると、彼は回廊の窓辺に立っていた。夜空は黒く、星は少ない。月明かりが彼の横顔の線を冷たく照らす。
彼女は湯気の立つカップを差し出した。
「熱いので、お気をつけて」
彼は受け取り、指先でカップの温度を確かめた。温い。熱すぎない。彼女は相手の体温と呼吸を、言葉より先に見てしまう。
「……ありがとうございます」
その声が、昼より少し低い。
彼は一口飲み、目を閉じた。祈りの時の閉じ方ではない。心を戻すための閉じ方。
彼女は、その横に立った。距離は一歩。近づきすぎない。けれど、離れない。
夜の神殿は音が少ない。だから、彼の呼吸がわかる。吸う、吐く。その間の揺れ。
しばらくして、彼がぽつりと言った。
「……あなたは、どうしてここにいるのですか」
質問の形をしているのに、答えが怖い人の声だった。
彼女はカップを両手で持ち直し、湯気を見つめた。言葉を選ぶ。
正直に言えば、「あなたに会いたいから」だ。
けれど、それは彼の清さを壊す言葉になる。彼は今、“神官”として保っている。彼女の恋心が彼を人に戻してしまったら、彼は自分を許せなくなるかもしれない。
だから、真実を薄くする。嘘ではなく、角を取る。
「現実的な理由です。神殿は、祈りだけでは回りません。帳簿を整える人がいないと、灯明油も買えません」
彼は小さく笑った。
「……あなたらしい」
笑いが出る余裕があるなら、少し安心だ。彼女は胸の奥の熱を隠したまま、続けた。
「それに。ここにいると、落ち着きます。……神殿は静かで、整っていて。好きです」
彼女は“神殿”と言った。
彼は、その言葉の裏を読もうとしない。読めないふりをする。あるいは、読んだら自分が壊れるから、読まない。
それが彼の聖人の生き方だった。
沈黙が降りる。灯明の火が小さく揺れ、影が壁を歩く。夜の神殿は、ふたりの間の言葉を増やさない代わりに、感情を濃くする。
彼がもう一口飲み、カップを下ろした。
「……最近、祈りが長くなります」
さっきと同じ告白。だが、今度は続きがあった。
「祈っていると……本来、心が清められるはずなのに。……私は、妙に“欲”が増える」
彼女は息を止めた。
夜は弱点が出る。
聖人が、聖人であることに疲れている。いや、疲れているのではない。——聖人であることが彼の「自分を守る方法」になっているのに、その方法が崩れかけている。
欲。
その言葉が彼の口から出ること自体、異常だ。
彼女は慌てて慰めない。慰めたら、彼の弱さを自分の手で掴むことになる。掴みたい。けれど、掴まない。彼の清さを壊さない。
だから、現実的な返しを選ぶ。
「祈りが長いと、眠りが浅くなります。眠りが浅いと、心は弱くなります。……欲が増えるのは、悪いことではありません。生きている証拠です」
言ってしまった。
生きている証拠。
それは、聖人ではなく人に向ける言葉だ。
彼の目が、ゆっくりと彼女を向いた。灯明の光がその瞳に映り、暗いのに明るい。
「……あなたは、怖くないのですか。私が、清くなくなることが」
その問いは、今夜の本題だった。
彼女は、少しだけ笑った。控えめに。けれど、逃げずに。
「清くない、とは思いません。あなたが誰かを傷つけるなら、私は怖い。けれど、あなたがあなたの心を持つことを……私は、汚れだとは思わない」
言葉が静かに落ちた。
夜の神殿は、どんな祈りよりも静かにそれを受け取る。
彼の喉が小さく動いた。声が出ない。代わりに、彼はカップを握り直した。指先が白い。
熱が内側で膨らんでいる。
彼女は、そこで一歩だけ引いた。
近づきすぎない。まだ、彼には逃げ道が必要だ。
「点検、続けましょう」
彼は一瞬遅れて、頷いた。
「……はい」
ふたりはまた歩き出す。回廊の灯明をひとつずつ整える。油を足し、火を守り、影を払う。
最後の灯明を点け終えたとき、彼女は振り返った。
彼は半歩前に立っていた。けれど、今夜の半歩は、守るためだけではない。
——近づきたいから、という衝動が混じっている。
彼はそれを言葉にしない。言葉にしたら、聖人の仮面が割れるから。
彼女も言葉にしない。言葉にしたら、彼が逃げるかもしれないから。
それでも、夜は弱点を残す。
灯明の火が揺れたとき、彼が小さく言った。
「……明日も、帳簿を見ていただけますか」
彼が“仕事”という言い訳を差し出した。
彼女は、その言い訳を丁寧に受け取った。
「はい。現実的に、進めます」
彼は、少しだけ息を吐いた。安堵。あるいは、敗北にも似たもの。
夜の神殿に、ふたりの祈りがひとつ増えた。
祈りよりも清らかなもの——それは、誰かを尊ぶために、自分の熱を否定しないという決意だった。
そして、その決意は今夜もまた、灯明のように小さく燃え続けていた。
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