上 下
26 / 123
そしてケモノは愛される

26.朝まで斎賀と<志狼>

しおりを挟む
 少し湿った体のままで、斎賀と志狼はベッドへ乗った。
 二人分の体重でベッドがギシリと音を立てると、これからする行為をまざまざと実感させられてしまう。

「さ、斎賀様……」

 志狼が戸惑いがちに見上げると、唇に斎賀の唇が重なってくる。
 斎賀もすべての衣服を脱ぎ棄て、互いに完全な裸だった。

「そんなに耳をぺたんとしなくても大丈夫だぞ」
 緊張を悟られ、志狼は反射的に耳に手を伸ばした。斎賀と違いよく動く耳や尾のせいで、志狼は黙っていても感情が駄々漏れだ。

 斎賀の唇が、首を伝って胸へと降りていく。小さな粒を見つけると、舌先で遊ばれる。
「んっ」
 胸ないですよ、と当たり前のことを言いそうになったが、弄られてるうちにじわりと下半身へと熱が溜まり始める。

「はぁ……っ、斎……賀様」
 吐息が零れる。

 まさかそんなところが感じるなんて思わなかった。そんなことを知っているなんて、さすが斎賀だ。
 こんな状況であろうと、志狼の斎賀への崇拝は止まらない。

「あ……ッ」
 熱を持ち始めていた自身を斎賀の手に包まれた。上下に緩やかに動かされると、ぞくぞくと甘い疼きが腰に溜まり始める。

「さ……い、あっ……あ」
 自然と腰が浮き、ねだるようなことをしてしまう。志狼はシーツの上で足を泳がせた。

 今、自分がいるのは現実なのだろうか。まるで夢のように信じられない出来事に、不思議な感覚になる。

 志狼、と見下ろす斎賀に静かに呼ばれる。
 真剣な面持ちだった。

「……穂積とは、何度も寝ているのか?」

 突然思いがけないことを訊ねられ、志狼は斎賀の顔を凝視した。
 静かにまっすぐな視線が向けられる。
「言いづらければ言わなくてもいい」

「………」
 何故そんなことを訊くのかという不安が押し寄せた。

 告白されすぐに、体を重ねるような尻軽だからか。
 それとも愛撫への志狼の反応がそのように見えてしまうのか。
 そういう行為に慣れている者のように、思われてしまったのかもしれない。

 穂積とそういったことをしたのは二回だが、一回は口淫されただけなので最後までしたわけではない。

「……訊いて悪かった。ただの醜い嫉妬だ」

 考え込んでいる間に、斎賀に返事をする必要がなくなった。
 だが、黙っていることで、まるで肯定しているようにもなってしまった。

 志狼は慌てて、自分を見下ろす斎賀の腕を掴む。
「斎賀様……。俺……斎賀様が好き」

 穂積とのことは言えないが、ちゃんと気持ちを伝えなければ。
 志狼はまっすぐに斎賀を見上げた。
 こんな自分でも受け入れて欲しい、と。

 その気持ちが届いたのか、斎賀の表情が優しくなった。
「私もだよ。愛しい志狼」

 ほっとして体の緊張が解ける。
「……斎賀様。俺、こんなふうに斎賀様と触れ合えるなんて夢みたい」
 志狼に見つめられた斎賀は美しく笑んだ。

「それでは、夢じゃないと分かるように、朝まで過ごそうか? すぐに達していては、朝まで持たないぞ?」

 とんでもないこと言われ驚きの眼で斎賀を見た後、すぐに顔が赤くなった。

 獣人は精液量が多いと穂積が言っていたことが頭をよぎる。
 朝までだなんて、何度イッてしまうのか。考えただけで中心に熱が集まってしまった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです

恋愛 / 完結 24h.ポイント:16,438pt お気に入り:3,116

神よ愛を求める罪をお許しください

BL / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:15

貴方へ愛を伝え続けてきましたが、もう限界です。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:5,999pt お気に入り:3,809

最初に私を蔑ろにしたのは殿下の方でしょう?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:21,030pt お気に入り:1,965

1年後に離縁してほしいと言った旦那さまが離してくれません

恋愛 / 完結 24h.ポイント:4,380pt お気に入り:3,766

悪役令嬢になったようなので、婚約者の為に身を引きます!!!

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:1,164pt お気に入り:3,277

言いたいことはそれだけですか。では始めましょう

恋愛 / 完結 24h.ポイント:4,316pt お気に入り:3,569

処理中です...