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ケモノはシーツの上で啼く Ⅱ
6.介抱したい
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斎賀は柴尾の腕を振りほどくと、ベッドに腰かけた。
「いいから、早く出て行け」
斎賀が、普段は使うことのない命令するような口調になる。
指示をすることはあっても、命令などしたことがない。それほどに、斎賀が苛立っているのだと分かった。
「ほ、放っておけません。お手伝いします」
咄嗟に口から出た。
やましい気持ちなど一切なく、純粋に手助けをしたいと思ってのことだ。
斎賀は眉間に皺を寄せた。
「私は、他人に痴態を見せる嗜好はない……っ」
見上げる瞳が、柴尾を睨む。涼しげな目は睨めば鋭いはずなのに、目元がうっすらと熱に染まっているせいでそうは感じない。
柴尾は斎賀の膝の前にしゃがんだ。
「扉すら開けられないほど力の入らない状態で、体が落ち着くまでお一人でできるわけがありません。斎賀様をお助けしたいんです」
黒い瞳で真摯に斎賀を見つめた。
「助けなど、いらぬ……。柴尾が出て行ってくれれば、私一人でどうにでもなる」
斎賀は頑なだった。
柴尾は悲しげな瞳で斎賀を見た。
「僕は、役に立ちたいんです。そんな、要らない子みたいなこと……言わないで下さい」
「………」
見下ろす斎賀の瞳が揺れた。
「要らないなど……そんな意味ではない……」
斎賀の方が傷ついたような顔をされる。
柴尾が孤児になったのは、実の親に魔族の餌として見捨てられたことが理由だった。それを知っているから、余計に自分の言葉で傷つけたように感じたのだ。
「斎賀様。お願いです」
柴尾は返事を待たずに、斎賀のズボンの腰紐に手を掛けた。
しゅるりと紐が解かれる。斎賀の手が、それ以上することを制止した。
「……っ。だ……駄目だ」
手を押さえられるが、力が入っていない。こんな弱々しい斎賀を見るのは、高熱を出した時以来の二度目だ。
純粋に、斎賀を早く落ち着かせてあげたいと考えていたはずなのに、普段見せない表情を見せられて、心がざわざわと騒ぎ出す。
いつも落ち着き払っている斎賀が、興奮する姿を見たい。
興奮している場所を見たい。
その澄んで凛とした声音が、どのように熱っぽく変化するのかを知りたい―――。
尾がパタパタと動く。柴尾は懇願するように、斎賀を見上げた。
「やっぱり……触りたいです。触らせて下さい。もちろん、お助けしたいという気持ちでいますが、本当はそれだけじゃないんです。僕だって男です。愛しい方のこんな煽情的な姿を見て、触れないでいるなんて無理です」
少し開かれた斎賀の足の間に、柴尾は顔を埋めるようにした。ズボン越しに、斎賀の硬くなったものが額に当たる。
「……っ。擦りつけるな……っ」
斎賀は、膝の間に埋められた柴尾の頭を引きはがそうとした。
「下着が汚れないよう、脱いでしまいましょう」
柴尾は遠慮なく、斎賀のズボンに手をかけた。
この時の柴尾は冷静なつもりでいたが、よくよく考えてみれば、尊敬するボスでもある斎賀のズボンを引きずり下ろすなどという大胆な行為に出るとは、相当に脳が熱を持っていたのではないかと思う。
「やめ……っあ」
ズボンを引き下ろされた勢いで、斎賀の体はベッドに腰かけたままで仰向けに倒れ込んだ。
下着ごと脱がせたせいで、斎賀の下半身が露わになる。
「上も、脱がないと……」
興奮して、自然と息が荒くなった。
「柴尾……! 止めなさい……!」
ろくに抵抗できない斎賀の服をすべて脱がせると、綺麗な肌が現れた。
斎賀はいつも長袖を着ていて、肌を見せない。
思った通り、細身だが鍛えられた男らしく美しい体だった。
「斎賀様……綺麗です……」
シーツの上に広がる銀の髪と、全裸で横たわる斎賀を見下ろし、思わずほうっと溜め息が零れる。
想像以上だ。
いや、柴尾の貧困な想像力では、斎賀の美しい体など想像も及ばなかった。
無駄な肉が一切なく引き締まった、美しい体。
いつも布で覆われた肌は、日に焼けることなくなめらかで綺麗だった。
そしてその中心には、紅く色づいた果実。
早くそれを口いっぱいに頬張りたいと、ごくりと唾を飲み込む。
「早く、楽にしてさしあげますね」
「いいから、早く出て行け」
斎賀が、普段は使うことのない命令するような口調になる。
指示をすることはあっても、命令などしたことがない。それほどに、斎賀が苛立っているのだと分かった。
「ほ、放っておけません。お手伝いします」
咄嗟に口から出た。
やましい気持ちなど一切なく、純粋に手助けをしたいと思ってのことだ。
斎賀は眉間に皺を寄せた。
「私は、他人に痴態を見せる嗜好はない……っ」
見上げる瞳が、柴尾を睨む。涼しげな目は睨めば鋭いはずなのに、目元がうっすらと熱に染まっているせいでそうは感じない。
柴尾は斎賀の膝の前にしゃがんだ。
「扉すら開けられないほど力の入らない状態で、体が落ち着くまでお一人でできるわけがありません。斎賀様をお助けしたいんです」
黒い瞳で真摯に斎賀を見つめた。
「助けなど、いらぬ……。柴尾が出て行ってくれれば、私一人でどうにでもなる」
斎賀は頑なだった。
柴尾は悲しげな瞳で斎賀を見た。
「僕は、役に立ちたいんです。そんな、要らない子みたいなこと……言わないで下さい」
「………」
見下ろす斎賀の瞳が揺れた。
「要らないなど……そんな意味ではない……」
斎賀の方が傷ついたような顔をされる。
柴尾が孤児になったのは、実の親に魔族の餌として見捨てられたことが理由だった。それを知っているから、余計に自分の言葉で傷つけたように感じたのだ。
「斎賀様。お願いです」
柴尾は返事を待たずに、斎賀のズボンの腰紐に手を掛けた。
しゅるりと紐が解かれる。斎賀の手が、それ以上することを制止した。
「……っ。だ……駄目だ」
手を押さえられるが、力が入っていない。こんな弱々しい斎賀を見るのは、高熱を出した時以来の二度目だ。
純粋に、斎賀を早く落ち着かせてあげたいと考えていたはずなのに、普段見せない表情を見せられて、心がざわざわと騒ぎ出す。
いつも落ち着き払っている斎賀が、興奮する姿を見たい。
興奮している場所を見たい。
その澄んで凛とした声音が、どのように熱っぽく変化するのかを知りたい―――。
尾がパタパタと動く。柴尾は懇願するように、斎賀を見上げた。
「やっぱり……触りたいです。触らせて下さい。もちろん、お助けしたいという気持ちでいますが、本当はそれだけじゃないんです。僕だって男です。愛しい方のこんな煽情的な姿を見て、触れないでいるなんて無理です」
少し開かれた斎賀の足の間に、柴尾は顔を埋めるようにした。ズボン越しに、斎賀の硬くなったものが額に当たる。
「……っ。擦りつけるな……っ」
斎賀は、膝の間に埋められた柴尾の頭を引きはがそうとした。
「下着が汚れないよう、脱いでしまいましょう」
柴尾は遠慮なく、斎賀のズボンに手をかけた。
この時の柴尾は冷静なつもりでいたが、よくよく考えてみれば、尊敬するボスでもある斎賀のズボンを引きずり下ろすなどという大胆な行為に出るとは、相当に脳が熱を持っていたのではないかと思う。
「やめ……っあ」
ズボンを引き下ろされた勢いで、斎賀の体はベッドに腰かけたままで仰向けに倒れ込んだ。
下着ごと脱がせたせいで、斎賀の下半身が露わになる。
「上も、脱がないと……」
興奮して、自然と息が荒くなった。
「柴尾……! 止めなさい……!」
ろくに抵抗できない斎賀の服をすべて脱がせると、綺麗な肌が現れた。
斎賀はいつも長袖を着ていて、肌を見せない。
思った通り、細身だが鍛えられた男らしく美しい体だった。
「斎賀様……綺麗です……」
シーツの上に広がる銀の髪と、全裸で横たわる斎賀を見下ろし、思わずほうっと溜め息が零れる。
想像以上だ。
いや、柴尾の貧困な想像力では、斎賀の美しい体など想像も及ばなかった。
無駄な肉が一切なく引き締まった、美しい体。
いつも布で覆われた肌は、日に焼けることなくなめらかで綺麗だった。
そしてその中心には、紅く色づいた果実。
早くそれを口いっぱいに頬張りたいと、ごくりと唾を飲み込む。
「早く、楽にしてさしあげますね」
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