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VRMMOで冒険を!
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その日は最新のVRMMOのサービス開始日だった。俺は喜々としてログインした。それが過ちだったとは気づかずに。
「うっ……ここは?」
目を覚ました俺が見たものは、真っ白な空間とそこにいる二人の人物の姿だ。一人は黒髪に黒い瞳で背の高い青年。もう一人は金髪碧眼の女性。どちらも顔立ちはよく似ていて、まるで双子のようだ。
「やあ、僕は神だよ」
「私は女神ですわ」
「…………」
目の前にいる二人組から告げられた言葉の意味を脳が理解することを拒む。
いやまて、落ち着け!これはきっと夢に違いない。そうだ、そうに決まっている!! 俺は自分に言い聞かせるように心の中で叫ぶ。しかし、いくら待っても目が覚める気配はない。それどころか段々と意識が遠退いて……。
「おーい?聞こえてるかい?」
「大丈夫ですか?私の声が聞こえるなら返事をしてください」
「えっと、はい……なんとか。あの、ここってどこなんでしょうか?」
二人に声をかけられて我に帰った俺は慌てて質問をする。すると二人は顔を見合わせて同時に答えた。
「天国」「地獄です」……うん、聞き間違いじゃないみたいだね。
どうしようか。一旦、目の前の二人のことは置いておいて、ここで目を覚ます前のことを思い出す。
そうだ、最新のVRMMOにログインしたんだった。
じゃあ、目の前にいる二人はチュートリアルのNPCだろうか。
それにしては随分と人間味がある気がするけど。
そんなことを考えているうちに、俺の思考を読んだのか二人が口を開く。
「僕達は君達の言葉でいうところの神と呼ばれる存在さ!」
「そして貴方は死んだのですわ」
……死んでるという設定なのかな。ゲームの宣伝ではそんなことを言ってはいなかったはずだけど、初日の話題作りのためにあえて隠していたという可能性もあるし。
とりあえず、この場は話を合わせておくことにしよう。
「死んだんですか!?でも俺はこうして生きて……」
「はい。貴方は死にました」
「うぐっ!!」
きっぱりと言われてしまった。やっぱり本当に死んでいるという設定らしい。
「それで死因は何だったんですか?」
「死因は交通事故だよ」
「はい。トラックに轢かれて即死でした」
なるほど。つまり俺は信号無視をした車に撥ね飛ばされたというところか。転生物でよく聞く話だな。
ログイン前の最後の記憶は、自室のベッドでヘッドセットを被ったことだ、交通事故に合うなんてありえない。
ということはやはりここは死後の世界という設定なだけの、VRMMOの世界なんだろう。だとすれば今の状況にも納得できる。
「ところで君はどうしてここにいるんだい?」
「貴方も死ぬ予定ではなかったはずなのですが」
予定ではなかった? どういうことだろう。ゲーム開始は全員ここからではないんだろうか。
「実は俺もよくわからないんですよ。気がついたらここにいましたので」
「ふむ。そうなるとバグかな?」
「バグかもしれませんわね」
バグという言葉を聞いてハッとする。そういえばこのゲームの製作会社の名前って……。
「ああ、自己紹介がまだだったね。僕の名はゼウス。全知全能を司る神と呼ばれているよ」
「私の名はヘラ。愛と美の女神と呼ばれておりますわ」
「どれ、言葉では時間ばかりかかりそうだ。少し意識を繋げてみようじゃないか」
その言葉と共に大量の知識が流れ込み、俺は確信した。
これは最新型のVRMMOなんかではなく、ギリシャ神話に登場する神々が暮らす世界なんだということを。
そして俺の死因は確かに交通事故。家に突っ込んできたトラックに轢かれたのだということに。
「うっ……ここは?」
目を覚ました俺が見たものは、真っ白な空間とそこにいる二人の人物の姿だ。一人は黒髪に黒い瞳で背の高い青年。もう一人は金髪碧眼の女性。どちらも顔立ちはよく似ていて、まるで双子のようだ。
「やあ、僕は神だよ」
「私は女神ですわ」
「…………」
目の前にいる二人組から告げられた言葉の意味を脳が理解することを拒む。
いやまて、落ち着け!これはきっと夢に違いない。そうだ、そうに決まっている!! 俺は自分に言い聞かせるように心の中で叫ぶ。しかし、いくら待っても目が覚める気配はない。それどころか段々と意識が遠退いて……。
「おーい?聞こえてるかい?」
「大丈夫ですか?私の声が聞こえるなら返事をしてください」
「えっと、はい……なんとか。あの、ここってどこなんでしょうか?」
二人に声をかけられて我に帰った俺は慌てて質問をする。すると二人は顔を見合わせて同時に答えた。
「天国」「地獄です」……うん、聞き間違いじゃないみたいだね。
どうしようか。一旦、目の前の二人のことは置いておいて、ここで目を覚ます前のことを思い出す。
そうだ、最新のVRMMOにログインしたんだった。
じゃあ、目の前にいる二人はチュートリアルのNPCだろうか。
それにしては随分と人間味がある気がするけど。
そんなことを考えているうちに、俺の思考を読んだのか二人が口を開く。
「僕達は君達の言葉でいうところの神と呼ばれる存在さ!」
「そして貴方は死んだのですわ」
……死んでるという設定なのかな。ゲームの宣伝ではそんなことを言ってはいなかったはずだけど、初日の話題作りのためにあえて隠していたという可能性もあるし。
とりあえず、この場は話を合わせておくことにしよう。
「死んだんですか!?でも俺はこうして生きて……」
「はい。貴方は死にました」
「うぐっ!!」
きっぱりと言われてしまった。やっぱり本当に死んでいるという設定らしい。
「それで死因は何だったんですか?」
「死因は交通事故だよ」
「はい。トラックに轢かれて即死でした」
なるほど。つまり俺は信号無視をした車に撥ね飛ばされたというところか。転生物でよく聞く話だな。
ログイン前の最後の記憶は、自室のベッドでヘッドセットを被ったことだ、交通事故に合うなんてありえない。
ということはやはりここは死後の世界という設定なだけの、VRMMOの世界なんだろう。だとすれば今の状況にも納得できる。
「ところで君はどうしてここにいるんだい?」
「貴方も死ぬ予定ではなかったはずなのですが」
予定ではなかった? どういうことだろう。ゲーム開始は全員ここからではないんだろうか。
「実は俺もよくわからないんですよ。気がついたらここにいましたので」
「ふむ。そうなるとバグかな?」
「バグかもしれませんわね」
バグという言葉を聞いてハッとする。そういえばこのゲームの製作会社の名前って……。
「ああ、自己紹介がまだだったね。僕の名はゼウス。全知全能を司る神と呼ばれているよ」
「私の名はヘラ。愛と美の女神と呼ばれておりますわ」
「どれ、言葉では時間ばかりかかりそうだ。少し意識を繋げてみようじゃないか」
その言葉と共に大量の知識が流れ込み、俺は確信した。
これは最新型のVRMMOなんかではなく、ギリシャ神話に登場する神々が暮らす世界なんだということを。
そして俺の死因は確かに交通事故。家に突っ込んできたトラックに轢かれたのだということに。
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