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第7章 新たな種族

第0.2話 プロローグ2

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 私は大学に合格し、三年生の時に飛び級で大学院へと進む。

「里見准教授。私やっとここまで来ました」
「よくやったな。君の頑張りは見させてもらったよ」

 二年間で大学のカリキュラムをすべて終え、里見さんには大学院への推薦も出してもらったお陰で進学できた。

「だが研究は始まったばかりだ。これからが本番だ」
「はい、私、頑張ります」

 私が目指すのは、ドラゴンが居るというあの世界に行く事。

 でも知れば知るほど、困難さが身に染みて分かってくる。その恒星は既に番号が割り振られていて、私達の太陽と同じ部類のどこにでもある太陽。但し一千光年の彼方にある。最新の宇宙望遠鏡でも、光る点にしか写らない。

 その恒星の周りを回る里見准教授が見つけた惑星、ドラゴンの居る星。その惑星を新たな希望という意味のノウアルズと私達は呼んでいる。

「里見さん、ノウアルズの大気組成はこのスペクトルを解析すればいいんですか」
「そうだ。だが重力レンズによる歪みを考慮しないと駄目だぞ」

 ノウアルズは地球と同じ大きさで、大気組成も地球とほぼ同じ。

「太陽系外に惑星はいくつも見つかっている。大気中に酸素が多い惑星は生物がいる間接的な証拠になるんだ」

 酸素は植物による光合成でできる。大気成分のバランスで生物がいるであろうを惑星も幾つかあるけど、生物が動いている直接的な証拠のある惑星はノウアルズだけだ。
 でも、学会ではその論文が捏造だとして取り扱ってくれない。

 ここは、宇宙工学や宇宙物理学の学科が集まっている大学院。別の学科でロケットの研究をしている人に聞いた事がある。

「他の星に生物がいたとしても、そこに人類が行く事はほぼ不可能なんだ」

 現在の最高速のロケットを使って、一番近い星に行くだけで片道約五百年かかってしまう。ノウアルズまでだと百二十万年という途方もない年月となる。
 この宇宙で光速を超える事はできない。それは現在に至るまでの科学者が研究してきた結論だ。高次元の世界に跳躍することも考えられたそうだけど実現できていない。

「だから俺達人類は、この太陽系から外に出る事はできないんだよ」

 宇宙工学を専攻している学友が、あきらめの表情でつぶやく。外宇宙を研究する学者は少なくなってきている。外に出れない籠の鳥が、外を眺めるだけなのは虚しいと……。

 夢を失くした大人達と一緒ね。今の世界をただ生きているだけ……。
 でも、私は里見准教授の研究に光を見た。どんな事をしてでも、あの星に辿りついてやるわ。
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