半竜皇女〜父は竜人族の皇帝でした!?〜

侑子

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第二章

南の国の王女

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 ロペス卿の発言にはどっと疲れさせられたけれど、まだまだ客人たちとの挨拶は続いていく。気を抜くわけにはいかない。

 次にやってきたのは、南国ファルナージャの王女だ。確か、十六歳だったと思う。彼女は後ろに侍女と護衛を連れて、わたしたちの前に進み出た。

 南国の正装とおぼしき衣装は、歩く度に、シャラシャラと金属の装飾品が音を立てている。帝国のドレスに比べると露出が多めだけれど、薄い布や装飾品で多少隠されているからか、下品な印象ではなかった。褐色の肌に金髪の彼女は、太陽のように明るい笑顔を見せた。

「お初にお目にかかります。偉大なる皇帝陛下と皇后陛下、ならびに皇女殿下にご挨拶いたします。ファルナージャの第一王女、サフィアナ・サラム・ファルナージャでございます」
「遠路遥々よくいらした、サフィアナ王女。貴国と比べると、ここはずいぶんと気候が異なると思うが、体調に問題はないだろうか」
「はい。お気遣いいただき、ありがとうございます。確かに帝都は我が国よりも幾分肌寒いですが、この程度であれば、問題はございません。ヴァルドゥーラ帝国を冬ではなく春に建国してくださった初代皇帝陛下には、感謝しなくてはなりませんね」

 そう言ってお茶目に笑った彼女は、とても可愛らしかった。そんな彼女が、ちらりとこちらへ視線を向けた。

「皇女殿下。わたくしたちは年齢も近いですし、もしよろしければ、是非仲良くしてくださると嬉しいですわ」

 ……えっ。それって、王女様のお友達ができるかもしれないってこと!?

 実はわたしには、対等な立場の女の子の友達というものがいない。セラはお友達だけど側近だし、帝国貴族の女の子たちも、どうしても立場はわたしより下になる。
 わたしが皇女である以上、それは仕方のないことだと思っていた。でも、帝国の方が圧倒的強国であるとはいえ、他国の王女様なら、ほとんど対等と言えるのではないだろうか。なんだか、期待で胸がワクワクしてきた。

「もちろんです。こちらこそ、仲良くしてくださいませ。ご迷惑でなければ、今度お茶会にお誘いしても構いませんか?」
「まぁ、是非! わたくし、建国祭後もしばらくは、帝国に滞在するつもりですの。建国祭中は皇女殿下がお忙しいでしょうから、その後でも大丈夫ですので、お誘いをお待ちしておりますね。楽しみにしておりますわ」

 そう言うと彼女は最後に、ちらりと一瞬だけ、頬をピンクにしながら、ノアの方を見た。

 ……あれ?

 サフィアナ様が去った後、ノアが後ろから小声で話しかけてきた。

「……キアラ、彼女は大丈夫なのか?」

 ノアが言っているのは、サフィアナ様も何か思惑があって近づいてきているのではないだろうか、ということだろう。

「あぁ、うん。大丈夫。サフィアナ様は、きっと悪い子じゃないわ」

 そう返すと、ノアは少し安心したようだった。昔から、わたしのこういう勘はよく当たるのだ。ノアも、それをよく知っている。危険なものや人は、ピリピリと嫌な感じがするけれど、彼女はむしろ、温かい日差しのような雰囲気を感じた。

 もちろん、そういう人を利用して利益を得ようとする人が裏にいる場合があることも知っているけれど、誰も彼も警戒して遠ざけていたら、友達などできないと思う。

 ……でも、なんだろう? ちょっとだけ引っ掛かるような、この感じ。サフィアナ様はノアに一瞬視線を向けただけで、何もおかしなことはない、はずよね?

「そうか。仲良くなれるといいな」
「う、うん。ありがとう」

 その後すぐに次の相手がやって来て、わたしはその違和感を、すぐに忘れてしまったのだった。



 ーーそんなこんなで、やっと挨拶が終了した。
 
「疲れただろう。舞踏会が始まるまで、しばらく休憩にしようか、サーシャ」
「ええ。ありがとう、ディオ」
「キアラはどうする?」

 父と母は、一旦控え室へ戻るらしい。わたしも正直かなり疲れているけれど、セラとトーアもここに来ているはずなので、声をかけてからにしたい。

「わたしは、少しホールに出ようと思うわ」
「そうか。気をつけるんだぞ」
「大丈夫、ノアがいるから。ね、ノア?」
「もちろん。陛下、キアラに近づく不埒な輩は必ず排除しますので、ご心配なく」
「うむ。頼んだぞ、ノアルード」

 ……何かノアって、たまにお父様とすごく息が合う時があるのよね。

 ちょっと羨ましく思いながら、私は席を立ったのだった。
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