恋に臆病なままではいられない

pino

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一章 

1.嫌いな人種

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 午後お昼過ぎにマンションを出て、通りにある雑貨屋とスーパーで買い物をしてから働き先であるダイニングバー『glow』へ向かう。
 俺の兄代わりであり親代わりである千歳光児ちとせこうじが経営するバーは俺の生活の一部となっていた。今の俺の日常のほとんどはglowで働く事。木曜定休だけどそれ以外はglowで働いて過ごし、家ではほとんど寝るだけとなっていた。休みだったとしても店の売上や予算などの計算をしていたり、ダイニングバーとして昼の料理にも力を入れるようになってからは新メニューを考えたりと、結構あっという間に時間は過ぎていく。
 そんな俺ももう20歳だ。そんな生活だけど、何年もやっている事もあって充実していると思っていた。


「ふふ♪今日買ったグラス、絶対ミニパフェに使ったら可愛いよな~♪評判良かったら買い足そっと♪」


 店の開店時間は通常は17時から。金、土、日は15時から営業していてランチメニューも提供している。だから普通にご飯を食べに来る人も多くなった。ランチ営業を開始してから俺は毎回フードメニューの新作を考えていたんだけど、試作として出したミニパフェが受けたんだ。女性からは勿論、本来のバーとして利用するお客さんからもお酒も飲みたいけど、少しだけ甘いのが食べたいと言う男性にも評判が良かったんだ。
 お目当ての物が手に入り、俺は機嫌良くglowの入口のドアを開け中に入る。光ちゃんはもういるはず。あの人こそここに住んでるんじゃないかってぐらいの仕事人間だからね。


「光ちゃん~、可愛いグラスあっ……は?誰?」

「っ!!」


 ドアのカランカランと言う音と共に視界に入って来た光景に、俺は嫌な顔をしていたと思う。
 店に入ってすぐにカウンター席が奥まで伸びていて右手のカウンターの内側がお酒を作り提供するスペース、カウンターの後ろ側の入って左手にはテーブル席が数ヶ所、更にその奥にはソファタイプのボックス席があるんだけど、入ってすぐのカウンター席に一人見知らぬ男が座ってご飯を食べていた。食べている物はうちの皿を使っている事から光ちゃんの手料理か。いや、そんな事はどうでもいい。

 こいつは誰だ?

 客では見た事の無い顔だし、光ちゃんの友達?たまに開店前に来てたりするけど、大抵の人は俺とも顔見知りで仲良くしてくれてるから、俺の知らない人が開店前の店で光ちゃんの作ったご飯を食べている姿が居心地悪くて仕方なかった。
 

「あ、こんにちは!」

「……こんにちは」


 挨拶が出来るのは好印象。
 だけど、この男の見た目……派手なスーツに、付けられる所には一通り付けたどれも高そうなアクセサリー。派手な髪色、綺麗にセットされた襟足の長い頭髪。そして元気に挨拶するその顔はそこらの男よりも綺麗に整っていて、相手を嫌な気にさせないような甘くて優しい笑顔。
 絶対ホストじゃん!
 バーの客でホストなんてのは日常的に見ているから分かる。いや、じゃなくてもこの見た目はガッツリそうだ。じゃなかったらどんな仕事してんだって思うような見た目だけど、とにかく俺の脳は警戒モードに入っていた。
 ホストは俺の嫌いな人種の一つだったからだ。


「あ、もしかして雪さんですか?俺は……」

「あんた誰?ここで何してんの」


 男が言い終わらない内にイラッとしたから言葉を被せるように聞くと、驚いた顔して次にヘラ~っと笑った。さすがホストだな。この手の相手には慣れてるのか。
 俺は自分でも思うぐらいに初対面の相手には冷たいと思う。それも自分が嫌いだと判断した相手には特に。
 勿論客には大人の対応をするのを心掛けているけど、それでもたまに出てしまうぐらいに酷い。光ちゃんにも良く注意されるんだけど、性格だから仕方ない。

 俺が威嚇するように態度を変えずにいると、男は椅子から立ち上がり俺に向き直って軽く頭を下げながらニコッと笑った。
 背高いじゃん。俺も高い方だけど、同じぐらい?スタイルもいいし、スーツが良く似合う事。警戒したまま男を睨んでいると、気にする様子もなくやんわりと喋り出した。


「初めまして♪俺は冴木冬真さえきとうまです。お話に聞いていた通り綺麗な方で驚いちゃいました♪」

「……お世辞どーも!ちょっと光ちゃん!なんなのこの人!」


 ホスト男からのテンプレの挨拶を聞き流しながら俺は大きな声で文句を言いながら店の奥に行く。
 光ちゃんが俺の話をしただと?何勝手な事してくれてんだ。てか光ちゃんが話したのか?あの男が開店前のこの店に入ってるなんてそれしか考えられなかった。
 
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