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三章
26.いつも頼りにしていたけど
しおりを挟む次の日は三人出勤の日で、平日と言うこともあって店を二人に任せて俺は裏で事務仕事をしていた。商品や備品など在庫のチェックに、お酒や食材の仕入れの手配。売上を見て何が良く出ていて何が出ていないのかをチェックしたりと、やる事は多かった。
最近家では冬真とイチャイチャしちゃってるからな~。それにしても冬真のあの体の痣、マジで許せないんだけど。なんとか暴力クズ野郎を見付けて制裁を加えたいよなぁ。そう言えばお金をせびられたって言ってたし、慰謝料請求で手を打つか。
「おい雪~、ガムシロってもうねぇの?」
「…………」
カウンターからひょこっと顔を出して聞いてくる光ちゃん。俺は質問に答える事なくジーッと見ていた。
そんな俺に光ちゃんはゲッとした顔をしていた。
「なんだよ?怒ってんのか?」
「まぁね」
「はぁ?またかよ。今度は何?」
やれやれと言った感じで俺の側まで歩いて来る光ちゃん。俺は棚にあったまだ未開封のガムシロがたくさん入った袋を取って渡してあげる。ガムシロの在庫はこれで最後か。
「お、ガムシロまだあったんだ♪サンキュー♪」
「ねぇ光ちゃん、冬真だけどさ」
「おう」
「…………」
「なんだよっ!?言いかけてやめるなよっ!」
冬真の体の痣の事を言おうとして辞める。もし冬真が光ちゃんには知られたくなかったらマズイよな?でも暴力クズ野郎を裁くには光ちゃんの協力が必要不可欠だ。過去にも弟の空が危ないバイトをしておっさんからストーカーされた事があって、それを撃退してくれたのは紛れもない光ちゃんなんだ。詳しく言うと光ちゃんとその光ちゃんの友達のおかげだ。
光ちゃんにはいろいろな友達がいる。光ちゃんみたいに悪そうな人達の他にも、普通に真面目に働く公務員だったり、幸せな家庭を持つサラリーマンだったり、はたまたお堅い警察や弁護士なんかもいたりする。人種や職種は様々でも光ちゃんは誰に対しても変わらずにいて、まるで昔から仲が良かったかのようにしていた。
そんな光ちゃんのおおらかで誰にでもフレンドリーな性格は俺には出来ない事で凄いなと尊敬していたりもする。
みんな光ちゃんを頼り、光ちゃんが頼れば手を貸してくれる。そんな事大人になった今、本当に気を許した相手じゃなきゃ出来ないよな?
普通の大人なら自分を守るのに精一杯で、他人の事なんか見て見ぬふり。俺はそういうものだと思っている。
ずっと見ているだけの俺に光ちゃんは不思議そうな顔をして背中を向けた。
「何もねぇならホール戻るぞ~」
「うん……あ、待って」
「だから何だよっ!?」
ホール側に体を半分出した所で俺に呼び止められて、ガクッと体を大袈裟に傾けて反応する光ちゃん。まるで昔のお笑い芸人のコントみたいな光ちゃんに俺は笑ってしまった。
「光ちゃんは俺や冬真の事を家族として見てるの?それとも友達?」
「んー、雪の事は両方あるけど、しっくり来るのは相棒だな。冬真はまだ会ったばかりだからな~、そうだな、急に現れた親戚の子供って感じ?」
ニシシと笑って光ちゃんは言った。
そりゃそうか。俺と冬真じゃ付き合って来た期間が違い過ぎるもんね。
光ちゃんの答えに俺は嬉しくなって、ニッコリ笑ってやった。
「光ちゃんらしいや~。ガムシロそれで最後だから発注しておくね~」
「おう頼むわ~」
俺が満足したと分かったからか手をヒラヒラとさせて今度こそホールへ戻って行った。
きっと光ちゃんなら話を聞いてくれるだろう。でも冬真の事だから協力してくれるかは分からないか。
それなら俺が単独でやるしかなくなる。
俺には光ちゃんのように頼れる友達なんていないからな。
そう考えをまとめた後俺は仕事に戻り、ガムシロの他にも無くなりかけている在庫をチェックしたりと事務仕事をいつも通りにこなした。
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