恋に臆病なままではいられない

pino

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二章

25.元ホストの真実

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 冷蔵庫からミネラルウォーターを出してその場でグビグビと飲む。俺は性格上、嘘とか許せないんだよね。今冬真の事が信じられない気持ちで怒りの感情さえ込み上げている。
 さて、どうしたものか。
 かと言って冬真に怒るのは違う気もするんだよな。そりゃ誰にでも言えない事はあるでしょ。それぐらい理解してるよ。今回冬真は俺に言うタイミングが無くてやむを得ず嘘をついたのかもしれない。でも寮に住んでたってのは光ちゃんも知ってたし、光ちゃんにも嘘をついてるって事になるよな。その嘘をついていた理由にもよるけど、光ちゃんなら俺程は細かく気にしないだろうけど、理由によっては逆鱗に触れかねないぞ。

 
「雪さん、俺全部話します。聞いてもらえますか?」


 俺が冷蔵庫の前でうーん、と頭を捻らせて悩んでいると、後ろから冬真の声がして暗い顔して立っていた。


「俺もそのつもり。まずは怒るの我慢して話聞くから座って。水でいい?」

「はい。ありがとうございます……」


 リビングのテーブルの椅子に座らせて新しいミネラルウォーターを出してあげると、一口飲んでた。俺も対面して座って、ジッと冬真を見る。


「ねぇ、ホストだったのは本当なの?」

「はい。本当です。寮に住んでいたっていうのだけ嘘でした。他は全部本当です」

「寮じゃなくてどこに住んでたの?実家は遠いんだろ?」

「知り合いの家です」

「普通じゃん。何で嘘なんてついたの?」

「その知り合いって言うのはこっちに来てから知り合った人なんですけど……その、俺はその人から逃げて来ました」

「逃げて来たぁ?」


 ここで冬真は唇を噛み締めて辛そうな表情をした。これでまた嘘でしたなんて言われたら俺は何も信じられなくなるよ。それぐらい冬真は小さく震えていて、すぐにでも優しく抱き締めてあげたい気持ちになった。
 でも俺は心を鬼にして話の続きを聞く事にした。


「俺が雪さんに肌を見せたくない理由はこれです……」

「……!」


 冬真は立ち上がって自分の服を捲り上げて腹部を見せて来た。そこには驚く程の大きな痣が2、3個あった。俺は立ち上がって思わず駆け寄ってしまった。それぐらいビックリしたんだ。


「どうしたのこれ!」

「その人に殴られたり蹴られたりして出来ました。これでも小さいのは消えたんですけど、まだこんなに濃く残っていて……背中にもあります。だから雪さんに見られたくなくて、服を脱げなかったんです」

「それって、虐待されてたって事!?」

「はい。初めはとても優しかったんです。都会の事を何も知らない俺にいろいろ教えてくれたり、でも段々お金を要求されるようになって……それですぐに稼げそうなホストを始めました」

「信じられない!どうしてそんな奴に従ったんだよ?」

「それは……初めてだったからです。男を好きだと言っても受け入れてくれのが」


 ボソッと言って薄く笑う冬真がこの時嘘を言ってるようには聞こえなかった。服を元に戻して落ち込んでるけど、俺の怒りはいつの間にか冬真じゃなくてそいつに向けられていた。
 背中にもあるとか俺の冬真にどんなけ非人道的な事してくれてんだよ。


「冬真、その話って光ちゃんは知ってるの?」

「いえ、俺からは話してません。でも、俺にglowを紹介してくれた人がいて、その人からなら聞いてるかも知れません」

「うちの店を紹介って誰?」

「俺の事を面倒見てくれてたホストの先輩です。源氏名はアヤトです」

「うーん、源氏名じゃ分からないなぁ~。光ちゃんてホストの知り合い多いからな~」


 心当たりを探すけど、なんせ光ちゃんは顔が広い。知り合いのホストなんてわんさかいるよ。俺はホストが嫌いだから全く関わらないようにしてるけど、こうなるなら少しでも知っておくべきだったな。はぁ、光ちゃんも知ってるなら明日光ちゃんに聞いてみようかな。
 とにかく今は冬真だ。今話してくれた事を完全に信じた訳じゃないけど、少なくとも俺は冬真を嫌いにはなっていない。変わらず側にいて欲しいし、側にいたいと思う。


「雪さん、俺の事追い出しますか?」


 俺が隣で腕を組んでいろいろ考えていると、不安そうに顔を覗き込んで来た。そんな冬真を見たら俺は意地悪をしたくなった。


「そうだな。追い出してみようかな?行く当てなんてあるのー?」

「……ないです」


 おい!マジで返すなよ!俺すげぇ性格悪い奴みたいじゃん!いや、性格悪いのは良く言われるし、自覚もあるけどさ~。ちょっとからかっただけじゃん。


「冗談だよ。嘘つかれてたのは許せないけど、それよりも許せないのはその暴力クズ野郎だ。冬真の事は変わらずに好きだよ」

「本当ですか!?」


 冬真はグイッと近付いて嬉しそうに目を潤ませて聞いて来た。俺はそんな冬真を優しく抱き締めてあげる。


「本当だよ。だから俺の前からいなくなるなよ」

「いなくなりませんっ!ずっと雪さんの側にいたいですっ」

「俺も冬真とずっと一緒にいたい♪」


 俺がニッコリ笑うと冬真もニッコリ笑った。
 そしてキスをして二人で仲良く手を繋ぎながら俺の寝室へ戻る。今日のところはここまで!エッチはまた今度にする事にした。冬真が気にせずに服を脱げるようにまるまでの辛抱だ。
 体の痣は時間が経てば消えるだろう。
 だけど心の傷を簡単に消すのは難しい。
 せめて少しでも和らぐまではこのままでいた方が良いと思っていた。

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