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三章
28.雪が認めた男
しおりを挟む次の日は木曜日で店は定休日。
今日は冬真の歓迎会をやる予定で、3人で光ちゃんの知り合いの居酒屋に来ていた。夫婦で経営していて、光ちゃんの親同士が仲良くて光ちゃんとは子供の頃からの付き合いだ。たまに俺と空も連れて来てもらって、食べさせてくれた焼き鳥がとても美味しかったのを良く覚えている。
「お~!光児に雪!良く来たな!奥の席空けといたぞ!」
「あら~!久しぶりね~!雪ちゃんてばまた綺麗になっちゃって~!」
店のおじさんとおばさんが大きな声で俺達を出迎えてくれた。相変わらず元気そうでなにより。二人共昔から変わらず俺が顔を出すと、光ちゃんと同じように接してくれるんだ。
「今日は世話になるぜ~♪」
「おじゃましまーす♪焼き鳥楽しみにしてました~♪」
「おう!たくさん焼いてやっからよぉ!空は元気にやってっか?」
「おかげさまで元気にしてますよ~。もう高校2年生になります」
「こんなに小さかった小僧がもうそんなデカくなりやがったか!」
「空ちゃんも今度連れておいで♪……あら!雪ちゃんの後ろの子はだぁれ!?」
ここでおばさんが冬真に気付いた。新しい「glow」のメンバーだから、しっかり紹介しないとな♪と俺が説明しようとしたら先に光ちゃんが喋り出しちゃった。
「こいつは冬真って言ってうちの新しいバーテンダーだよ。ホストやってただけあって接客も酒の知識も豊富でさぁ~。まぁよろしく頼むわ」
「元ホストね!今はうちの立派な従業員だから!冬真、おじさんもおばさんも良い人だから今日は楽しもう♪」
「はい♪初めまして、冴木冬真です。よろしくお願いします♪」
俺が強調しながら紹介し直すと、おじさんもおばさんも唖然として見ていた。そして光ちゃんがガハハと笑い出して二人も笑った。
「って訳でよぉ!うちの新人だから、頼むわ!」
「なるほどな!雪が認めた男って訳か~」
「雪ちゃんの大切な人なのね~。さぁ3人共入って!何から飲む~?」
「なっ!?俺の大切な人って何でいきなりそうなるんだぁ!?」
「まずはビール3で頼むわ~。ほら冬真こっちだぞ~」
「はーい♪」
「ちょっと!スルーするなよ!俺が認めた男って何!?」
みんな俺の言う事には答えずに奥の席へ行ってしまった。さっきのおじさんとおばさんの言った事って、俺が冬真を好きってバレてるって事だよな!?何で知ってるんだ?まさか光ちゃんが話したのか?
俺も2人の後を追って店の奥にある座敷席に座って、席の奥に一人で座る光ちゃんを問い詰める。
「光ちゃん!何て言ったの!?」
「ん?俺は何も言ってねぇよ。お前が誰かを紹介するのが珍しいからだろ」
「だってうちの従業員なんだから当たり前だろっ」
「あー、冬真の事を空みてぇに世話してやってるからだろ。お前自分が認めねぇと口も聞かねぇからな」
「雪さん、俺嬉しいです♪雪さんの事を良く知る人があんな風に言ってくれるなんて、めちゃくちゃ俺の事を好きになってくれてるって事ですよね?」
「なっ!そ、そうだけどっ!」
「雪は素直じゃねぇなぁ~。ほれ冬真、好きなの頼め~?」
冬真まで嬉しそうにそんな恥ずかしい事を言う!俺は誰かの前で冬真を好きだと言った事がないから恥ずかしくて仕方なかった。
そうこうしてると、おばさんがビールとお通しを持って来てくれた。そして光ちゃんが適当に注文して俺達はそれぞれジョッキを手に持ち構える。
「よし、そんじゃあとりあえず冬真の歓迎会始めるぞ~。冬真!glowに良く来てくれた、これからも期待してるからよろしくな~」
「はい♪是非よろしくお願いします~」
「あ、社内恋愛は禁止してないけど、イチャイチャはほどほどにな?それじゃ乾杯!」
「かんぱ~い♪」
「おいっ!今俺の方見なかったか!?」
乾杯の音頭を取る筈の光ちゃんはチラッと俺を見た後にビールが入ったジョッキを軽く上に掲げた。それのせいで俺だけ出遅れたし!
さっきから俺の事からかい過ぎじゃないか!?
そんな雰囲気に冬真は楽しそうに笑っていた。
それを見て俺は、少しぐらいならからかわれてもいいかもとか思っていた。
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