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三章
29.付き合ってます
しおりを挟む俺は冬真の横に座って子供の頃から好きな焼き鳥を頬張りながら楽しくお酒を飲む。んー♪やっぱりおじさんが焼く焼き鳥は美味しいな~♪大ぶりな鶏肉とネギに、少し焦げたぐらいの焼き加減♪そして自家製のタレが絡み合ってお酒に合うんだ~♪子供の頃はご飯のおかずにしてたけど、お酒を飲むようになってからはもうつまみとして楽しんでいた。
「雪さん、本当に美味しそうに食べますね」
「めちゃくちゃ美味しいんだもん♪」
「雪はガキの頃からここの焼き鳥が好きなんだよ」
「イタリアンとか洋のイメージだったから意外ですね」
「俺ワインが好きだから家ではワインに合うつまみ用意しちゃうんだよ。全然焼き鳥とかも好きだよ」
「じゃあ今度はビールに合うおつまみ作ります♪」
「そうだな♪最近料理頑張ってるし、楽しみにしてるよ♪」
俺と冬真の会話を聞いてニヤニヤしてる光ちゃん。またからかうつもりだな?もう動じないんだから!
「光ちゃんてば若者の会話聞いてニヤニヤするとかヤラシ~」
「いや~、なんだかんだ上手くやっててくれて良かったなってよ。ほら初め、冬真の事嫌がってたろ?俺だって2人の事心配してたんだからな」
「それはいきなり知らない人を雇うとか言うからだろ。しかも初日からルームシェアしろなんて誰でも嫌がるだろ」
「そうですよね。急だったのに受け入れてもらえてほんと感謝してます」
「あ、今は全然嫌じゃないからな?出て行くなよ?」
「出て行きませんよ♡ずっと一緒にいます♡」
「お前ら付き合ってんのか?」
「っ!?」
「えっとー」
とうとう光ちゃんにハッキリと聞かれてしまった。多分光ちゃんは俺と冬真の関係を分かってるんだと思う。急激に仲良くなったし、さっきもからかわれたけど、俺が冬真に対して取る態度が明らかに他の人への態度とは違うからだ。
光ちゃんの質問に、冬真は俺の顔を見て言葉を詰まらせていた。そうだよね、下手な事言えば俺が怒るもんね。
でも光ちゃんには隠す事もないと思うんだ。
「付き合ってるよ」
「雪さん♡」
「だろうな。思ったより早くくっ付いたな」
「思ったよりって何?光ちゃんは俺と冬真が付き合うと思ってたの?」
「まぁな。同い年だし、一緒に過ごしたら惹かれ合うんじゃねぇかなって思ってたんだよ。なぁ、冬真~?雪ってべっぴんさんだろ?」
「はい♡想像以上に綺麗過ぎて一目惚れしちゃいました♡」
「顔は良いのに性格がな~。気が強すぎんだ」
「自分でも自覚してるよ。直す気はないけどね」
「そんなとこも好きですよ♡美人で気が強いのってかっこいいじゃないですか」
「冬真は上手いな~。雪に脅されてんのか~?」
「え、本音ですよ~」
「光ちゃんは俺をからかい過ぎなんだよ。冬真は俺にもう嘘つかないもんね~」
俺が自身たっぷりに自慢するかのように光ちゃんに言ってみせる。すると、光ちゃんはニヤニヤしながら答えた。
「ほう?何か嘘つかれたような言い方するじゃん。冬真がどんな嘘ついたんだよ?」
「…………」
あ、これは光ちゃんは知らないんじゃないかな。まだ冬真にも光ちゃんに話していいか聞いてないし。思わず黙っちゃったけど、どうしよう。
俺が返事に困ってると、冬真がいつも通りの笑顔で光ちゃんに言った。
「光児さん、ごめんなさい。俺、雪さんちに来る前に寮に住んでたって言ったの嘘だったんです。本当は俺を世話してくれてた男性の家に住んでました。それを雪さんに打ち明けたんです」
「冬真……」
まさかこんなにすんなり光ちゃんに話すなんて思ってなかったから驚いた。光ちゃんは一瞬真顔になったけど、怒るでもなく追加で頼んだビールを飲みながら冬真の話を聞いていた。
「そうか。そんで、雪が受け入れてくれたって訳か。良かったな♪」
「はいっ♪」
「ちょっと外行って来るわ」
冬真がニコニコ笑顔で明るく返事をすると、光ちゃんはニカッと笑ってタバコを持って外へ出て行った。この店には喫煙室が無いからいつもああやって定期的に外へ行くんだ。店でも営業中だと裏で吸ったり、外へ行ったりと光ちゃんはそう言うところは真面目なんだ。
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