恋に臆病なままではいられない

pino

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三章

31.思い通りにいかない

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 冬真の歓迎会も終わり、居酒屋を出た後に光ちゃんは用があるとかで一人で歩いて行った。
 結局あの後は話をはぐらかされて終わった。光ちゃんが俺に隠し事をしているみたいで何だか寂しい気持ちだよ。


「雪さん、何か買って行きません?まだ早いし飲みますよね?」

「うん……」

「光児さんの事気にしてるんですか?」

「まぁね~。何で俺に話してくれないんだろうって」


 俺が態度に表して不貞腐れてると、隣に並んでギュッと手を握ってくれた。


「きっとまだ曖昧なのかもしれません。ハッキリ好きとは言ってなかったし、ちゃんとしてから話そうとしてるのかも」

「だとしてもさ~、なんか寂しいじゃん」

「可愛い♡それじゃあその寂しさを俺が埋めてあげます♡俺じゃ足りませんか?」


 俺の顔を覗き込んでニコッと笑う冬真。
 またそんなホストが言いそうな事を~。でも、冬真に言われるなら嬉しいかも♪
 俺はグイッと顔を近付けて意地悪く笑ってやった。


「全然足りないね~!もっと他の事考えられないぐらいにしてもらわないと」
 
「言いますね。いいんですか?本当に俺以外考えられないようにしちゃいますよ♡」


 冬真は自信有り気に俺の両頬を両手で包んでそのままキスをして来た。まだ日付けが変わる前で人通りもあるのに、そんな事を気にしないかのように自然にチュッてした。
 人前でそんな事するなんて本当なら怒ってる所だけど、今はただ冬真の事が愛おしくて怒る気にならなかった。


「冬真っ」

「雪さん♡」


 居ても立っても居られなくて、俺からギューって抱き締めると当たり前のように抱き返してくれた。横を通ったサラリーマン風の男が見ていたけど、そんなの知るか。
 
 光ちゃんが俺に話してくれなかった事は寂しいなと思ったよ。でも、そこまで気にならないんだ。それは冬真がいてくれたからだろ?今の俺には冬真がいる。だから光ちゃんが光ちゃんの事を話してくれなくても、しつこくしないでいられたんだ。
 その代わりに冬真の事はしつこくなっちゃうよ。


「やっぱり会わせろ!」

「えっ?いきなり何ですか?もしかしてアヤトさんにですか?」

「ううん!暴力クズ野郎にだ!」

「はぁ!?何言ってるんですか?酔ってます?」


 俺の言う事にさすがに冬真も驚いていた。全然酔ってなんかない。今日は楽しく飲めたしちょっとだけ気持ち良くなっただけだ。
 もう先輩ホストを通してとかじゃなくて、冬真から直接暴力クズ野郎に会わせてもらおうと思った。


「正気だよ!俺ずっとモヤモヤしてたんだっ冬真にそんな事した奴の事許せない!謝らせて金も返してもらうんだ!」

「……嫌です。会わせません」

「俺に反抗するのか?」


 話が変わって来たのもあって体を離して強張った表情を浮かべて冬真が否定した。俺だって冬真にそいつの事を思い出させたくないよ。でも何もしないままなんて許せないんだ。


「今の俺には雪さんがいます。それで十分なんです」

「冬真は良くても俺はっ」

「お願いだ!もうあの話はするな!」

「っ……」


 冬真の大きな声に俺は何も言い返せなかった。いつもの敬語じゃなくて、怒ってるような口振り。
 驚く俺にハッとした顔をしてから気まずそうに目を逸らして言った。
 

「あ、すみません……でも、本当に大丈夫だから、雪さんがいてくれればもういいんです」

「分かったよ。帰ろう」

「雪さんっ」

「こんな所で話す事じゃなかったね。俺が悪かったよ」


 冬真から離れて家までの道のりを歩き始める俺に、心配そうに後ろを付いて来た。
 ただ俺は冬真を傷付けた奴が許せないだけなのに、どうして俺が冬真に怒られなきゃならないんだよ。ますますムカついて来たな暴力クズ野郎!


「雪さん、生意気な態度取ってごめんなさいっ!雪さん!」

「うるさいなぁ!今話したくないんだよ!」

「雪さん……」


 一生懸命に謝って来る冬真が鬱陶しくて俺は突き放すような事を言ってしまった。
 シュンと悲しそうな顔をしてるけど、俺はフイッと顔を逸らして歩き続けた。
 
 それから冬真は何も言わずに後ろからついて来た。
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