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四章
49.全力疾走
しおりを挟む目が覚めると、隣に光ちゃんがいなかった。
のそのそとベッドから出てリビングへ行くと、コーヒーの良い匂いがした。対面キッチンのカウンターの所の椅子に座っていた光ちゃんが俺に気付いた。
「よう、起きたか」
「おはよ……俺にもコーヒーちょうだい」
「あいよ。それとオムライス食うか?」
「オムライス……」
昨日冬真が作ってくれた賄いだ。
タイミング的に食べてる場合じゃなくて、そのままだったのを思い出す。
冬真が初めて作ってくれた賄いなのに、悪い事したなと少し心が痛んだ。
「食べる。持って来てくれたんだね」
「冬真がやってくれたんだよ。味もなかなかだったぞ♪」
「…………」
しばらくしてコーヒーと温めてくれたオムライスが目の前に出て来た。出来立ての時はトロッとしてた卵も硬くなって、ケチャップで書かれたglowの文字も崩れていた。俺はスプーンを使って口に入れる。
「……美味しい」
「だろー?最近料理始めたにしちゃ上出来だよな♪」
「うん……凄く美味しい……」
きっと出来立てならもっと美味しかったんだろうな。ふと冬真の顔が浮かんで心がキュッとなる。
冬真に会いたい。きっとワタルもいるけど、自分勝手な理由で恋人である冬真を、何も言わずに一人にした事を後悔した。
俺は残りのオムライスを急いで平らげて、コーヒーを半分だけ飲み立ち上がる。
「光ちゃん!俺帰るね!」
「おう、また店でな~」
「あ!光ちゃんの好きな人にはちゃんとした時に会いたいから休みの日がいい!次の木曜日!」
「オーケー♪おめかしして来いよ~」
ニシシと笑って俺を見送る光ちゃん。
そうだ、俺には冬真がいるんだ。
光ちゃんの事も大切だけど、もっと大切にしなくちゃいけない存在なんだ。
冬真が作ったオムライスはとても美味しかったよ。具は玉ねぎだけだったけど、ちゃんと細かく刻まれていて、しっかり炒めたのかとても甘くて美味しかった。
冬真は優しいから俺に本気で怒ったりしないけど、ちゃんと伝えなくちゃ。
光ちゃんも新しい事に挑戦しようとしているんだから、俺も新しい事に挑んでみるのも悪くない。あの頑固で性格の悪い俺がこんな風に思えるのは冬真のおかげだよ。
俺はマンションまで全力で走った。
マンションのエレベーターの中で俺は息を整える。この歳になって全力疾走なんてしないからかなりキツい。さっき食べたオムライスが、口から出て来そうだ……
「はー!しんどっ!」
てか光ちゃんちからそのまま出て来ちゃったけど、俺ってば光ちゃんのスウェットのままじゃん。かなりブカブカで肩のとこなんか片方ずり降りててとても恥ずかしくなった。
スマホも財布も光ちゃんちに置いて来ちゃった……あは、俺ってばどんなけ急いでたんだよ。
エレベーターが到着して歩いて部屋まで向かう。今日は晴れているからスウェットでも暖かく感じるな。いや、走ったから体が暖まったのか。
部屋の前でインターフォンを鳴らす。本当に何も持たずに出て来たから鍵も置いて来ちゃった。
すると、すぐにドアが勢いよく開いて、会いたかった冬真が笑顔で出迎えてくれた。
「雪!おかえり♪」
「ただいま♪朝帰りしてごめんね?」
俺が首を横に倒しながら謝ると、冬真に思い切り抱き締められた。あー冬真の匂いだぁ♪
「何言ってるだよっ昼帰りだろっ」
「えっ!?昼!?」
冬真に言われて驚いた。確かに起きてから時間を見てないけど、もうお昼なのか!?
俺は時間を知りたくて冬真から離れて中に入り、リビングの時計で時間を確認する。
12時30分だと!?て事は光ちゃんちで起きたのは12時近かったって事!?めちゃくちゃ寝たじゃん俺!
「あ、ゆっきーおかえり~♪あはは何その格好~」
「ワタル……」
キッチンの方から声がして、見てみるとワタルがテーブルに座って何かを食べていた。そう言えば甘い良い匂いがするな。
ワタルに近付いてお皿の上を見ると、なんとフレンチトーストを食べていたんただ!しかも生クリームとハチミツのトッピング付き!カフェかよ!
「これどうしたの!?」
「えへへ~♪冬真くんが作ってくれたんだ~」
「雪も食べる?」
後から来た冬真にニッコリ笑顔で言われたけど、さっきオムライスを食べたばかりだからお腹は空いてなかった。むしろ走り過ぎて若干お腹痛いんだよね。凄く食べたかったけど、今回は見送る事にした。
「食べたいけど、昨日作ってくれたオムライス食べたから……絶対また作って!」
「あ、オムライス食べてくれたんだ♪嬉しい~」
「てか冬真ってばいつの間にフレンチトーストなんて覚えたの?」
「休憩の時とか結構調べたりしてるんだ♪雪に作ったら喜ぶかな~って考えながら♪」
「おまっかわっ!」
「おまかわ?」
「冬真くんー、ココアおかわり~♪生クリームもいっぱいかけて~」
「はいはい。ワタルくんは本当に甘いのが好きだな」
あれ?二人共仲良くなってる?
て言うかなんだろう、とても普通って言うか、いや、普通よりも楽しそうな雰囲気だった。
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