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四章
48.本当の兄弟のような
しおりを挟むその後光ちゃんはビールを飲み干した後、髪を乾かすと言ってソファを立ったから、俺も後をついて行く事にした。
親に置いてかれまいと必死に後ろをついて歩く子供みたいに。
ドライヤーをしている光ちゃんにピッタリ張り付いて何も言わずにいると、今度は光ちゃんは歯を磨き始めた。俺もと真似をするように水道の下にある扉を開けて使い捨ての歯ブラシ取り出すと、クスクス笑われた。
それでも俺は気にせずに光ちゃんをチラチラ見ながら真似をしてくっ付いて歩く。
あらかた寝る準備をしていた光ちゃんは、俺が使ったマグカップを流しに置いてそのまま寝室へ入った。
もう言い飽きたけど、寝室も他の部屋同様汚かった。散らかってる服が多い。そして使用済みなのかそうじゃないのか分からないタオルもそこら辺に落ちていた。
光ちゃんは気にする事なくベッドに入るから、俺も自然と光ちゃんの隣に入った。
「ぶはっ!お前面白すぎ!冬真ともそんななの?」
「んな訳ないだろ!光ちゃんにだけだ!」
「へー、可愛いじゃん♪一回寝とくか?お前体調良くないんだろ?」
「……知ってたの?」
優しい光ちゃんの言葉にまたジワっと涙腺が緩んだ。光ちゃんはいつでもそうだ。いつも俺の事を見ていてくれて気に掛けてくれるんだ。
俺は光ちゃんにギュッと抱き付いて涙を誤魔化した。
そんな俺に光ちゃんは優しく背中を撫でてくれた。
「何年一緒にいると思ってんだ。お前の事は誰よりも分かってるつもりだぜ」
「ふふ♪本当そうだね」
嬉しい事を言ってくれるから自然と頬が緩んだ。
「やっと笑った♪このまま寝ちゃいな。起きたらまた話そうぜ」
「光ちゃんも寝るの?」
「寝る。俺も昨日あんま寝てねぇんだ」
「そうだったんだね。ねぇ光ちゃん」
「んー?」
既に目を閉じている光ちゃんの名前を呼ぶと口元は笑っていた。寝なきゃいけないんだけど、寝たくない。今はそんな気分だった。
こうして光ちゃんに甘えるのはいつ振りだろう。どんなに俺が怒ってもワガママを言ってもいつも優しく受け止めてくれる光ちゃんに俺はこれからも変わらず甘え続けるものだと思っていた。
性格の悪い俺が唯一甘えられる場所だからだ。
でも、光ちゃんが好きな人とくっ付いたり、2号店の方ばかり行っちゃったらもう出来なくなるな……
「俺寂しいよ」
「お前には冬真がいるだろ。冬真がダメならワタルもいる。それにさっきも言ったけど、俺はいなくなる訳じゃねぇんだ。少し離れる時間が増えるだけだ」
「冬真やワタルじゃダメなんだよ。俺がこうして甘えられるのは光ちゃんだけなんだから」
「それなら甘えたくなったらいつでも来いよ。いつでもこうして添い寝してやる」
「光ちゃんが好きな人と付き合ったら出来ないだろ?」
「あー、どうだろうな。俺は平気だけど」
「ねぇ、その好きな人ってどんな人なの?いくつなの?」
「俺とタメだよ。そうだな、綺麗な奴だよ。雪には負けるけどな」
「そ、そうなんだ!」
俺の方が綺麗だと言われてニヤけてしまう。
光ちゃんに好きな人より上だと言われると嬉しいなぁ。
「あ、喜んだ」
「喜んでねぇし!」
「口悪っ……てか寝ろって」
「えー、せっかくだからもう少し話してたいよ」
「若いって良いね~。俺ぁもう寝なきゃ次の日動けねぇよ」
「光ちゃんもまだ若いじゃんっ!その人の性格はどんな感じなの?」
ぐったりしている光ちゃんを揺すって更に質問してみる。
「……真面目」
「ホストなのにぃ?」
「ホストでもいろんなのいるだろ。まぁあいつにホストは向いてねぇけどな。てかお前に今度会わせてぇんだ。仕事の後でもいいし休みでもいい、お前に合わせるから」
「それよりも2号店で働く事になるかもしれない人に会わせてよ。そっちの方が気になる」
「何言ってんだ?そのホストがそうだよ」
光ちゃんはさも俺がおかしな事を言ってるかのように言った。
ちょっと待って!光ちゃんそんな事一言も言ってないよな!?
「はぁ!?何それ!光ちゃんの好きな人と2号店で一緒に働く人って同一人物だったのかよ!」
「あれ?言ってなかったか、すまんすまん。まぁそう言う事だ。時間作れそうな時あったら教えてくれよ~」
「もー!光ちゃんてば大事な事言い忘れるんだからぁ!あ!寝るなー!」
とうとう光ちゃんは限界が来たらしくグゴーと豪快な寝息をたてて眠りについた。
寝る直前に凄い大事な事を聞いたせいで気になって仕方ないけど、俺も大人しく寝る事にした。
光ちゃんが新しい店舗を開いてそっちに付きっきりになる事はまだ納得は出来ないけど、気分は大分落ち着いていた。
とりあえずその光ちゃんの好きな人に会ってみようと思った。
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