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四章
47.光ちゃんの部屋
しおりを挟む俺は光ちゃんに支えられながら店を出て最近では来る事の無かった光ちゃんの住むマンションに来ていた。
俺と冬真が住むマンションよりも高いであろうその部屋の中は、綺麗な外装とは裏腹に色々な物で溢れかえっていて光ちゃんらしい男って感じの部屋だった。
「先にシャワーいいぞ。あ、浴槽はしばらく洗ってないから浸かりたいなら洗ってからな」
「……シャワーでいい」
光ちゃんに言われて廊下からそのまま浴室へ向かう。脱衣所のカゴにも選択前であろう服がこんもり溜まっていた。
光ちゃんに女がいないのが良く分かる部屋だった。きっとリビングやキッチンも似たような感じだろうな。
でも俺は、遊びに来ていた頃と変わらないその光ちゃんの部屋にホッとしていた。
シャワーを使った後、洗濯機の蓋の上に用意されていた光ちゃんのスウェットを借りてドライヤーした後、リビングへ向かう。
何も言ってないけど、状況的に話終わったら光ちゃんの家で寝ていいって事だ。
正直、体調は良く無かった。前日にろくに眠れてないのと、ちゃんとご飯を食べていない事と、光ちゃんの話を聞いたので一気に悪化した。
軽く目眩がする中、光ちゃんがいるであろうリビングへ行くと、フワッと甘いココアの匂いがした。
「サッパリしたかー?酒飲みながらって言ったけど、今のお前にはこっちのがいいだろ。これ飲んで暖まりな?」
「ホットココアって、ワタルじゃん」
「お前も好きな癖に~♪んじゃ俺も軽くシャワーしてくるからよ、適当に休んどけ」
「ん。光ちゃん、ありがと」
「おう」
何に対してのありがとうかは告げずに言うと、光ちゃんはいつものようにニカッと笑ってリビングから出て行った。
やっぱりリビングも廊下や脱衣所と同じように物で溢れかえっていた。前に来た時よりも酷くなってる気がする。俺はココアを飲みながら部屋の中を見渡してあの頃と変わった所がないか、自然と探していた。
人の部屋をチェックするとかメンヘラ彼女かよ。きっと第三者がここにいたらそんなツッコミをされてただろうな。
俺が抱く光ちゃんへの感情は完全に兄や親に対する尊敬と信頼だけだ。恋愛感情は一切無い。だから周りから夫婦だのなんだの言われても平気でいられたんだ。
だって、周りからそんな風に思われて茶化される、それが俺と光ちゃんだから。
あー、いろいろ思い出したらまた泣きたくなって来たな。
光ちゃんもいきなりあんな事言い出すなんてあんまりだよ。それに一緒にやる人って誰?俺以外にそんな相手がいたのかよ……
「うう……光ちゃん……置いてかないで……」
黒い革のソファに座って膝を抱えるように座って静かに泣いた。
頭が痛くてもう何も考えたくないのに次々と光ちゃんに対する疑問や不満が過ぎる。今のglowから光ちゃんがいなくなるなんて、俺から生きる希望が無くなるのと一緒だよ。
俺はこれからどうしたらいいの。
もう冬真達にもどんな顔して会えばいいのか分からないよ。いや、会いたくない。今は誰にも会いたくないんだ。
今はただ、光ちゃんの側にいて何とか説得して考え直してもらいたかった。
「お、起きてたか」
「光ちゃん……」
まだ濡れてる髪を拭きながらシャワーから戻って来た光ちゃんは冷蔵庫を開けて缶ビールを取り出してプシュッと音を立ててそのままグビグビ飲み始めた。
そんな光ちゃんもあの頃と何も変わらないように感じる。
そして俺の所まで来て隣にドカッと、男らしく大股開いて座る。髪は濡れてて、いつもあげてる部分が刈り上げてる部分を隠すように降りていて何だか若く見えた。
サングラスをしていない光ちゃんの目は切れ長の一重で、パッと見怖い印象だけど男っぽくて俺は好き。
そんな光ちゃんの目が俺を見て細い眉毛を下げて困ったような顔をした。
「また泣いたのかぁ?お前は本当に俺の前だと甘えん坊になるな~」
「そうだよっ俺は光ちゃんがいないとダメなんだよっだからお願い、どこにも行かないでよ。このまま俺とglowをやろう?」
光ちゃんに縋るように腕を掴みながら頼み込むと、優しく笑ってくれた。
「雪さ、勘違いしてね?俺はglowを辞める訳じゃねぇんだよ。店に顔出すのは減るけど、変わらずglowは俺の店だ。ただちと忙しくなるからその間お前に任せたいってだけだよ。何かあれば飛んでくし、思ったより時間出来てお前が来なくていいって言うぐらい顔出すかもしれねぇしな」
「じゃあ誰と2号店をやるの?二人でって事はよほど信頼出来る人なんだろ?俺よりも?」
「お前はちょいちょい俺の女みてぇな事言うよな。まぁそこも可愛いとこだけどよ。正直信頼できるかどうかは分からねぇ。でも、お前と同じぐらい大切な人だよ」
「誰!!俺と同じぐらいなんている訳ない!!」
「雪~、本当可愛いなぁお前~」
光ちゃんはヘラ~と笑って俺の頭を撫でて来た。
俺はふざけてなんかないのに、光ちゃんはいつも俺を子供にするみたいに反応する。
俺もそれが居心地が良くて、好きなんだけど、今はそんな誤魔化しさえもどかしく感じた。
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