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四章
46.寂しくて涙する
しおりを挟む店のテーブル席に、窓に向かって座る俺に、その右隣に光ちゃん。俺と対面して座るのは冬真で、光ちゃんの前にはワタルが座った。
そして光ちゃんは何故急に従業員を増やそうと思ったのかを説明してくれた。
「雪にはさっきチラッと話したが、glowは2号店を展開しようとしてる。これはまだ話が出てる段階で、まだ確定した訳じゃねぇんだ。だから雪にも話せなかったんだ」
「話ぐらいならしてくれても良かったじゃんっ」
「いや、マジで実現するとは思ってなかったんだって。俺も焦ってるぐらいだ。そこで、2号店が出来たら勿論俺はそっちが軌道に乗るまでは付きっきりになっちまう。本店であるglowは副店長の雪に任せようと思っててな。冬真とワタルは雪を助けてやって欲しい」
「待ってよっ何勝手な事言ってるのっ」
「勝手なのは分かってるんだ。本当にすまない。でも俺が辞めるって訳でもねぇし、全くこっちに顔出さねぇって訳じゃねぇんだ。週に一回は顔出すようにはするつもりだ。まぁそこんとこはどうなるかは分からねぇな。本当に店を増やすって話だけで何も決まってねぇからな」
「もし2号店を立ち上げたとして、そっちは光ちゃん一人でやるの?」
「いや、一緒にやってくれる奴がいてよ。そいつと回すつもりだ」
「……っ」
言葉が出て来なかった。
今までずっと二人でやって来たのにここに来て置いてかれるかのような発言をされて、目の前が真っ暗になりそうだった。
次に光ちゃんに質問をしたのは冬真だった。
「それじゃあ全員で従業員は五人になるって事ですか?」
「そうなるな」
次はワタルが光ちゃんに質問した。
「僕は全くの新人だから何も言う事はないけどさ~、その2号店ってどこに構えるつもりなの?」
「それもまだ決まってねぇんだ。すぐに行き来出来るように遠過ぎず近過ぎずの場所が良いと思ってるんだけどよ」
何でみんな普通にしてられるの?
俺は光ちゃんの言う事がまだ信じられなくて何も考えられないよ。だって、光ちゃんがこのglowから出てっちゃうんだよ。
そんなの俺、やだよ……
何も言わずに俯いてる俺に隣にいる光ちゃんが声を掛けて来た。
「雪、突然こんな話をして悪いと思ってるよ。でも良ければ受け入れて欲しいんだ。この店を任せられるのはお前しかいねぇからな」
「……だよ」
「雪?」
「やだよ……光ちゃんがいなくなるなんてやだよ!俺一人で出来る訳ないだろっ今までずっと光ちゃんがいてくれたから俺、頑張ってこれたのにっ光ちゃんがいないglowなんてやだよっ!」
「雪、お前……」
「俺はこの先もずっと光ちゃんとやってくんだって思ってたんだっ。客からも夫婦とか相棒とか言われて、本当はそれが嬉しかったんだっ。俺にとって光ちゃんは家族なんだよっ離れたくないよっ」
俺は感極まって泣いてしまった。
冬真とワタルもいるのに、ポロポロと涙を溢しながら子供のように訴えて泣いた。
すると横にいた光ちゃんが優しく俺の肩を掴んで抱き寄せて抱きしめてくれた。それによって寂しさが増して更に涙が溢れてきた。
「泣くなよ雪~。いつもは強気な癖にこういう時に可愛いくなるのはズルいぞー?」
「ズルいのはどっちだよ!今更俺を置いていくなんて、光ちゃんのバカ!寂しいよぉ!」
「ゆっきーの気持ちも分かるな~。僕はゆっきーが光ちゃんとここを始めた頃から見てたけど、いつもゆっきー遅くまで頑張ってたもん。光ちゃん光ちゃんって、良く話してたもんね」
「あの、光児さん。一度雪さんと二人でちゃんと話して下さい。俺は光児さんも雪さんも信頼してるので、どんな結果になっても付いて行きますんで」
「あ、僕も僕も~」
冬真のお願いに、光ちゃんは俺の頭をポンポンと撫でて笑った。
「そうだな。雪、今日俺の部屋来いよ。飲みながら話そうぜ♪」
「行くっ!全部話してもらうんだからっ!」
「おう。お前が知りてぇ事全部話すわ。うし、そんじゃ解散な!あ、冬真悪ぃんだけど雪の分のオムライスにラップ掛けて持ち運び出来るようにしてくれねぇか?それと、ワタルの面倒も見てやってくれ」
「分かりました。って、ワタルくんまたうちに来るんですか!?」
「ごめんねー?今の僕、お金も家もないから行くとこなくて~。あ、日用品は今日揃えたから安心して♪」
三人が話してるけど、全く耳に入って来なかった。今はずっと光ちゃんにしがみ付いていたかったんだ。
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