恋に臆病なままではいられない

pino

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五章

60.隠されて腹を立てて涙を流す

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 三人で賄いを食べた後、マンションに帰ってそれぞれの時間を過ごす。
 俺は光ちゃんに店の報告と、明日の確認をしていた。
 今はワタルがお風呂に入っていて、それを待つ間冬真は洗濯物を畳んでくれていた。


「ねぇ冬真~、ワタルはバーテンダーに向いてるかな?」

「どちらかと言えば向いてるんじゃないかな?お酒が飲めなくても作り方とかを覚えちゃえば、ワタルくんは要領が良いから問題無いと思うな」

「ワタルは料理はからっきしだし、接客は問題ない。それじゃあやっぱりホールは二人に任せて俺は裏に回ろうかな」

「ワタルくんはバイトのままなの?」

「そこなんだよね~、バイトとして入ったけど、光ちゃんが2号店の方へ付きっきりになっちゃうなら社員として俺たちと同じように働いてもらうのも有りかなぁって。問題はワタルの家だよ。追い出されたとか言ってたけど、学校だってまだ在学中ってなってるだろ?そこをちゃんとするまでは週末限りのバイトかなって」

「そっか、ワタルくんは長男だもんね。親も本当は帰って来て欲しいと思ってるかも知れないよね」

「冬真は?実家に帰りたいとは思わないの?」

「今は特に思わないかな。雪と出会う前はたまに思っていたけど、今は雪と離れたくないから」

「可愛い奴~♡」

「はい、雪の洗濯物ここに置いておくね」

「ありがとー♪」


 冬真は畳終わった自分とワタルの分の洗濯物を持って部屋から出て行った。
 ワタルの事はちゃんとしてもらってから決めよう。あいつも頑張ってるし、うちとしては社員になっても問題は無いと思う。

 それと、ワタルが現れたのと光ちゃんの衝撃的な話によって無くなったようになったけど、冬真の暴力クズ野郎の事も忘れてない。
 最後に冬真は会わせてくれるって言ってたからな、そっちも店の方が落ち着いたら何とかしたいと思っているんだ。
 冬真の体にあった傷や痣は大分消えてしまったけど、何が何でもお金を取り返してやる!お金はとても大切な物なんだ!

 俺は明日の買い出しリストをまとめてお風呂に入る準備をする事に。
 久しぶりに冬真と入りたいけど、断られるかな?今日は何だか甘えたい気分なんだ。

 俺は部屋に向かった冬真の所へ行って聞いてみる事にした。


「冬真~?今日さ、一緒にお風呂入らない?」


 部屋の中を覗き込みながら声を掛けると、ベッドに座ってスマホをいじっていた冬真が慌てて顔を上げた。
 俺の言葉を聞いていなかったのか、開いていた画面を閉じるような素振りをして困ったように聞いて来た。


「……ごめん、なに?」

「何見てたのー?怪しくない?」

「明日の天気予報を見てたんだ」

「へー、明日の天気はどうだった?」

「えっと、晴れるって」

「おかしいなぁ、俺が見た時は雨だったけど?」

「っ……」

「嘘だよ、俺天気予報なんか見てないもん。ねぇ何見てたの?どうして隠すんだ?」

「それは……」


 どこまでも怪し過ぎるからカマをかけたら見事に引っ掛かったな。冬真は分かりやすいんだよ。
 俺は隠された事に腹が立ったから、部屋の中に入って冬真の前に仁王立ちして問い詰める事にした。


「浮気?」

「違う!それはない!」

「だったら教えてよ、気になるじゃん」

「実は、元彼からのメッセージを見てたんだ……返事は返してないよ」

「元彼ぇ!?って、暴力クズ野郎か!?」

「う、うん」


 気まずそうな顔をしてる冬真に、俺は怒りが沸き起こりつい強い口調になっていた。
 でもそんなの放っておける訳ないじゃん。


「何て来たの!?」

「別に大した事じゃないからっそれに、返事返してないから大丈夫だからっ」

「何が大丈夫なんだよっ!俺が大丈夫じゃないから!」

「雪、落ち着いてってば」

「見せて!」

「え?」

「スマホ見せて!」

「ゆ、雪っ」


 冬真に聞くよりも直接見た方が早いと思ったんだけど、どうやら冬真は見せたくないみたいでなかなかスマホを出そうとしないんだ。
 まるで暴力クズ野郎の事を庇っているようでムカついた。


「何で見せられないんだよっそんなやましい事が送られて来たのか?」

「違うよ!俺はシカトしてるから見なくて大丈夫だから!」

「二人共喧嘩はダメよー?近所迷惑だから大声もダメー」


 俺と冬真が言い合ってると、部屋の入口からワタルの緩い声がして我に帰り、冬真から離れて部屋から出ようとする。
 冬真が追い掛けて来るけど俺は相手にするつもりはなかった。


「雪!待って、ちゃんと話し合おう!」

「もういいよ。先にお風呂入るから」

「雪……」

「冬真くん、ゆっきーに何したの?」

「…………」


 後ろからワタルが心配するような声が聞こえて来たけど、俺はそのままお風呂に入りさっさと寝てしまおうと思った。
 何で俺に見せられないんだよ?
 俺に見せられないようなやり取りをしてるって言うのか?

 ふと冬真が元ホストだと言う事が頭をよぎる。

 頭を横に振って冬真は違うと自分に言い聞かせるけど、考えても考えても冬真が暴力クズ野郎を庇ったとしか思えなかった。
 そもそも元彼って何だよ?暴力クズ野郎と付き合ってたのかよ。
 そんな事聞いてないよ。

 冬真……お前は俺を裏切るのか?
 今までのお前は全部嘘だったのか?

 込み上げて来る涙を俺はシャワーで流して静かに泣いた。


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