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「そうだったんですね...」

 ライラは心から同情した。為政者というのは大変ものなんだなってつくづく思ったりもした。

「ライラ嬢、今後ドロシー嬢のことでなにかおかしいなと思うことがあったら、なんでもいいから教えてくれないか? どんな細かいことでも構わないから」

「分かりましたが、先程もお伝えしました通り、私とドロシーさんはほとんど接点がないので、あんまりお力にはなれないと思いますよ?」

「それでもいい。とにかくよろしく頼むよ」

「分かりました」

「あ、それとくれぐれも他言無用で頼む」

「心得てます」


◇◇◇


 その夜の夕食の席のことだった。そろそろ食事が終わる頃合いになった時、

「ライラさん、この後お時間よろしいかしら?」

 突然ドロシーから話し掛けられたライラは、昼間にドロシーの話を聞いた直後だったので、余りにもタイムリーなタイミングに少し戸惑った。ちなみに今夜、忙しいのかミハエルはこの場に来ていない。

「...えぇ、構いませんが...」

 ちょっとだけ警戒しながらもライラはそう応えた。

「それじゃあ私の部屋で」

 そう言ってドロシーは歩き始める。ライラは仕方なくその後に続いた。

「どうぞお掛けになって?」

「...はい...」

 勧められたソファーにライラはおずおずと腰を下ろした。

「なにかお飲みになる?」

「...いえ、結構です...食後のお茶を飲んだばっかりなんで...」

「あぁ、それもそうね」

「...それで私にどのようなご用なんでしょうか?」

「単刀直入に聞くわ。あなた、ミハエル殿下に随分と気に入られているみたいだけど、一体どんな手を使ったのかしら?」

 ドロシーはいきなり切り込んで来た。

「...どんな手もなにも...私からは一切アプローチしてないんですが...」

「ウソおっしゃい!」

 急にドロシーの態度が急変したことに驚いたライラは言葉を失った。

「なにか汚い手を使ったんでしょ!? そうに決まってるわ! じゃなけりゃ、あんたみたいなイモ臭い女が殿下に気に入られるはずがないもの!」

 ドロシーは唾を飛ばしながら喚き散らす。

「い、いや、ちょ、ちょっと落ち着いて下さいよ!」

 今にも飛び掛からんばかりのドロシーの勢いに、気圧されたライラは思わずソファーから腰を浮かせた。

「そもそも私、合宿の初日に言った通り、王妃になる気なんて更々ないんですから! どんな手もこんな手も使うはずがないじゃありませんか!」

「騙されないわよ! それが私達を油断させる手だったんでしょ!?」

 ライラが抗議しても、聞く耳を持たないドロシーには効果なかった。



 
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