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しおりを挟む「最後はボクか...まぁ予想は付いていると思うけど、ボクの名はフウカ。ただのノース王国出身のフウカだよ。辺境伯令嬢だったこともあるけどね」
最後に残ったノース王国側の滑り台から滑り降りて来た令嬢がそう言った。
「知ってると思うけど、辺境は常に隣国との小競り合いが絶えなくてね。ボクの家も例外じゃない。特にイースト王国との諍いが多かったね」
そう言ってフウカはシイナの方を見た。シイナは申し訳無さそうに肩を竦めた。
「そんな訳でボクも子供の時からカレンと同じように、女だてらに剣の腕を磨いていたんだよ」
フウカは次にカレンの方を見た。カレンは同士に会ったような嬉し気な表情を浮かべた。
「そんなボクの家と王家は結び付きを強くしたかったんだろうね。第3王子との婚約を提示して来たんだよ。でもボクは辺境を離れる気はなかったし、甘やかされて育った三男坊なんかゴメンだから断ろうとしたんだ」
そこでいったんフウカは言葉を切って、まだ泣いているミレイを見詰めた。
「でも王家からの打診を断る訳にはいかなくてね。ボクは嫌々婚約するハメになったんだよ。ここがみんなと違う所かも知れないね」
そう言ってフウカは全員を見渡した。
「いざ婚約した第3王子はこれがまたろくでなしでね。ちょっと良い女と見るや、すぐにだらしなく鼻の下を伸ばすような輩だったんだ。もちろんボクにも迫って来たけど、張り飛ばしてやったらそれっきり近付いて来なくなった」
フウカは何事もなかったかのようにそう言ったが、他の3人はドン引きしていた。それといつの間にやらミレイは涙が止まったようだ。
「ボクは第3王子の睦言に関しては我関せずの姿勢を貫いていたから、いつ頃から第3王子が一人の令嬢に傾倒し出したか分からないんだけど、気が付いたら男爵令嬢に第3王子は完全に骨抜きにされていたね。後は君達と同じ道を歩んでここに居るってな訳だよ」
フウカの長い話が終わって、一同は再び黙り込んでしまった。
「なんて言うか...皆それぞれに辛い思いをして来たのね...フウカ以外は...」
とシイナが言えば、
「そうだな...他人事じゃないよな...フウカ以外は...」
カレンが続き、
「本当ですよね...わたくし、涙が止まりませんわ...フウカさんの時以外...」
ミレイが締めた。
「...あのさ...ボクをオチに使うの止めて貰っていいかな...」
フウカはプンプンしながらそう言った。
「さて...これからどうしましょうか...」
みんなを纏める形でシイナが問い掛けた。
「そりゃ決まってるっしょ!」
フウカが手を挙げた。
「どうにかしてここを抜け出して、諸悪の根源である男爵令嬢をこの世から根絶やしにする! これしかないっしょ!」
自信満々にそう言い切ったフウカに、他の3人は深いため息を吐いた。
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