ようこそ、追放村へ！～冤罪で婚約破棄され国外追放された４人の令嬢達

10

　猛獣が踊り掛かって来た。

「お二人とも、わたくしの後ろに!」

　そう叫んでミレイは二人の前に出た。

『ファイアーウォール!』

　ミレイは火の魔法を唱えた。火で出来た壁が猛獣の攻撃を防ぐ。

「ガオゥゥゥッ!」

　猛獣は咆哮を上げながら後ろに下がった。

「なるほど!　獣は火を恐れる!　ミレイ、やるな!」

　カレンが歓声を上げる。

「で、でもこれからどうするのさ!?　攻撃は防げてもボク達から攻撃できないんだよ!?」

　フウカの言う通りだ。守っているばかりじゃあ埒が明かない。

「そうですわね...このままだと私の魔力が尽きますわ...」

　ミレイが苦しそうに呟く。

「そうだな...クソッ!　剣さえあれば...」

　カレンが悔しそうに叫んだ時だった。

　ガンガンガンガン!

「ほらほら、猫ちゃん猫ちゃん!　あなたの相手はこの私よ!　こっちにいらっしゃ～い!　遊んであげるわよ～!」

　シイナが観客席から大きな音を立てて猛獣の気を引いている。

「ガオゥゥゥッ!」

　それに釣られた猛獣がシイナの方に向かった。ジャンプして観客席に飛び掛かるが、高さがあるので届くことは無い。

「みんな!　ちょっとだけ時間を稼ぐわ!　その間に態勢を整えて!」

　たが何度も繰り返している内に、次第にジャンプする高さが上がって来た。このままだと観客席に届くのは時間の問題かも知れない。

「シイナ!　済まん!」

「フゥ...シイナさん、助かりましたわ...」

「シイナ!　無理しないでね!」

　一息入れられたミレイは、まず火の魔法を解いた。次に氷の魔法を唱える。

『アイスソード!』

　すると二振りの氷の剣が出現した。

「おぉっ!　ミレイ!　凄い!」

「これがあれば百人力だよ!」

　二人は喜び勇んで剣を手に取った。

「手が冷たいのは我慢して下さいまし」

「おおよ!　やい!　このクソ猫!　アタシ達が相手だ!　こっちに来やがれ!」

　カレンが大声を上げて、今にも観客席に上がろうとしていた猛獣を煽った。

「ガオゥゥゥッ!」

　猛獣は踵を返して３人の方に向かう。

「フウカ!　行くぞ!」

「おおよ!」

　猛獣の突進をカレンが右、フウカが左に躱し様、

「セイッ!」

「ヤァッ!」

　それぞれが猛獣の脇腹を氷の剣で貫いた。

「ギャウッ!」

　猛獣は断末魔の叫びを上げた後、その場に崩れ落ちた。

「やったぞ!」

「イエ～イ!」

　二人が歓声を上げてハイタッチする。

「フゥ...お見事でした...」

「みんな、お疲れ様～」

　観客席から降りて来たシイナがミレイとハイタッチした。

　これで『力』の試練を突破したことになるだろう。