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第28話 ちみっこと夏休み その8
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レッドドラゴンの魔石はヒルダさんにとっても規格外だったみたいた。
魔石に慣れてるはずのヒルダさんがここまで驚くんだから、やっぱり普通じゃないんだね。ウチらの感覚がおかしかった訳じゃないんだ。
「こんなに大きい魔石を見たの初めてよ...これがドラゴンの魔石なの?」
「そうだ。でもギルドの職員ならドラゴンの魔石くらい見慣れてると思ったよ。そうじゃなかったみたいだな」
するとヒルダさんはハァッと大きなため息を一つ吐いたあと、
「あのねぇ...ドラゴンがそんなにホイホイ討伐されて堪るもんですか...少なくとも私がギルドに勤め出してからこの10年、ドラゴンの魔石が持ち込まれたことなんて一度も無かったわ」
あれ? 10年もギルドに勤めてる? じゃヒルダさん、見た目より結構歳いってる? なんて場違いなことをアタシは考えていた。いや、失敬失敬。
「そうなのか? まぁ、確かに倒すのは苦労したが」
「そりゃ当然よ。本来ならAランクの冒険者が10人集まってやっとどうにか相手になるかって代物なんだから。ものによってはSランク相当の国難規模になる程の相手なのよ?」
「ふ~ん、じゃ6人で倒した俺達ってAランク相当の実力があるってことか?」
何気に殿下が言った一言でヒルダさんが目を剝く。
「ちょっと待って! あなた達だけでドラゴンを倒したって言うの!?」
「そうだけど? 聞いてたんじゃなかったのか?」
「いや、ドラゴンを倒したって話は聞いてたけど...王族が居るのにまさかあなた達だけで戦うなんて思わないじゃない...てっきり王国の騎士団が総出で戦ったんだとばかり思ってたわよ...」
あぁ、確かにそう思われても仕方無いかもね~ アタシらだってまさかドラゴンが出てくるなんて思いもしなかったもんね~
「なんてこと...それじゃCランクでも低過ぎじゃないの...」
ヒルダさんが頭を抱えてしまった。
「おっ? それじゃもっと高ランクからのスタートってことか?」
するとヒルダさんは頭を振って、
「いえ、それは無いわ。特別扱いしないって言ったばかりだしね。まずは通常通りのルーティンに従って認定試験を受けて貰う。その間にこの魔石の鑑定含めてギルマスと相談するわ。それで良い?」
「あぁ、分かった。それで構わない」
アタシ達はミノタウロスとリザードマンの分含め、魔石をヒルダさんに一旦預けて、認定試験のダンジョンに向かうことにした。
◇◇◇
馬車に揺られること約1時間、辿り着いた認定試験のダンジョンは、大昔に廃墟となった町の地下に眠っていた古代遺跡がダンジョン化したものらしい。ヒルダさんが言った通り、ダンジョンの入口にはギルド職員らしき男の人が立っていた。
「お待ちしておりました。『精霊の愛し子隊』の皆さんですね?」
「あぁ、そうだ。ここが認定試験のダンジョンの入口か」
「はい。地下5階までの小規模ダンジョンになっています。敵の強さはDランククラスの実力があれば問題無いレベルです。トラップやモンスターハウスなどというギミックもありませんのでご安心を。ボス部屋まで辿り着いた時点でDランクが確定します。更にボスを倒すとCランクになれます。なにかご質問はございますか?」
「いや、特に無い。それじゃ早速行ってくる」
「ご武運を」
アタシ達はダンジョンに入った。さっきのギルド職員さんの話を聞く限り余裕でイケそうだと思ったが...まさかあんな苦戦することになるなんて思いもしなかったよ...
「あぁ、もう! ムカつく! 当たりゃしない!」
「あ、アリシア、落ち着いて...ゴーストに物理攻撃は効かないから」
そう、まずアタシ達の前に現れたのは、体全体が青白く光って、ヒョロヒョロと周りを飛び回るゴーストだ。エリオットの言う通り、透けた体に物理攻撃は効かない。どうやらここはアンデッド系のダンジョンらしい。ということは...
「ヒィィィッッッ!」
「ちょっとスライ! 服を引っ張んないでよ!」
怖がりシルベスターが使い物にならない。アタシの後ろに隠れてしまう。犬耳と尻尾が縮こまっているのが見えるようだよ。全くもって困ったちゃんだな...
「私も怖いですわ~」
「いやアンタ、絶対怖がってないでしょうが!」
シャロン様は態とらしくアタシに絡まってくる。アンタの我が儘ボディが色々当たってきて歩き辛いわ! それとクネクネすんなや!
「お前ら...真面目にやれよな...」
みんなが使い物にならない中、殿下だけは得意の火魔法で次々とゴーストを撃ち落としていく。まるでシューティングゲームのように。こういう時は頼りになるね。
「ハァァァッ! ヤァァァッ!」
アタシの後ろではマリーがスケルトンと戦ってる。どうしても付いてくるって言って聞かなかったんだよね。よっぽどアタシのことが心配らしい。トラウマになっちゃったかな?
ちなみに得物はレイピアだ。街で破落戸と戦った時は素手だったけど、さすがにダンジョンではそういう訳にもいかないよね。
地下に降りるにつれ、敵の種類も変わってきた。
「ウゲェ~! 殴りたくない~! ってか触りたくない~!」
「あ、アリシア、僕がやるから...」
ゾンビやグールやマミーといった腐った系が増えてきた。ここでもアリシアは使い物にならない。まぁ、気持ちは分からんでもないが、前衛ならしっかりしろ。
「ほら、スライ。ゴーストはもういなくなったから、いい加減手を離してよ!」
「無理無理無理~!」
ダメだこりゃ...
「私も無理ですわ~」
「アンタもいい加減にしろっ!」
このポンコツ二人はどうにもならん...
「お前ら...ホントにやる気あんのか? 全く...」
殿下が安定の火魔法で燃やしてくれる。よく燃えるね。
「ハァァァッ! ヤァァァッ!」
マリーも安定して敵を倒してくれる。アリシアと代えようかな?
そんなこんなでやっとこさボス部屋に辿り着いた訳だが、ボスと戦う前にまずは反省会だね。戦闘のリーダーとして、そこはしっかりやらないとね。
「いいですか皆さん、いくら緩いダンジョンだからと言って気合いが足りませんよ! まずはアリシア!」
「はいぃっ!」
「手が汚れるくらいなんですか! 戦いたくないなんて前衛として恥ずかしくないんですか! そんなに相手に触りたくないならエリオットのように武器を持ちなさい!」
「すいませんでしたっ!」
「次にシルベスター!」
「は、はいぃっ...」
「戦えないなら今すぐ帰りなさい! 臆病者は要りません! みんなの迷惑になります!」
特にアタシのね。厳しいことを言うようだけど、これもシルベスターの為だからね。心を鬼にしないとね。
「そ、そんなぁ...」
「最後にシャロン様!」
「申し訳ありませんでしたっ! 真面目にやりますっ!」
アタシはシルベスターにもう一度声を掛ける。
「それでどうするの、シルベスター? 逃げ出す? 戦う?」
「た、戦います!」
「よろしい、ではアリシアに代わって前衛に入りなさい」
「えぇっ!?」
「なにか?」
「い、いえ、なんでもありません...」
「では行きますよ?」
アタシは全員を見回しながらボス部屋の扉を開けた。
ボス部屋は約50m四方の広い部屋になっていた。部屋の奥に玉座があり、大きな椅子に座っているのは綺羅びやかな衣装に身を包んだ骸骨、スケルトンキングだった。体に比べて頭が異常に大きい。2m以上あるんではなかろうか。
スケルトンキングが立ち上がり歯をカタカタ鳴らすと、周りの土の中から手に剣や槍を持ったスケルトン兵士がわらわらと湧いてきた。
「ちょうどいい、ストレス溜まっている人もいるでしょうから、少し運動しましょうか」
アタシも含めてね。
「ウォリャァッ!」「オーッホホホッ!」
女性陣が嬉々として攻撃すれば、
「セイッ!」「ハァッ!」
男性陣が黙々と蹴散らし、
「ハァァァッ! ヤァァァッ!」
マリーが粛々と斬り刻む。
アタシも杖でスケルトン兵士を叩き回しながら、中々動こうとしないシルベスターの背中を思いっ切り押した。愛の鞭ってヤツだ。シルベスター、悪く思うなよ。
「ほらスライ、トドメを刺せ!」
シルベスターをスケルトンキングの前に押し出す。スケルトンキングが玉座から下りて近付いてきた。
「ヒィィィッッッ! く、来るなぁ~!」
腰が引けながらもシルベスターが、オーバーキルとも思える火魔法でスケルトンキングを燃やした。
ふぅ~ やっと終わったね。
魔石に慣れてるはずのヒルダさんがここまで驚くんだから、やっぱり普通じゃないんだね。ウチらの感覚がおかしかった訳じゃないんだ。
「こんなに大きい魔石を見たの初めてよ...これがドラゴンの魔石なの?」
「そうだ。でもギルドの職員ならドラゴンの魔石くらい見慣れてると思ったよ。そうじゃなかったみたいだな」
するとヒルダさんはハァッと大きなため息を一つ吐いたあと、
「あのねぇ...ドラゴンがそんなにホイホイ討伐されて堪るもんですか...少なくとも私がギルドに勤め出してからこの10年、ドラゴンの魔石が持ち込まれたことなんて一度も無かったわ」
あれ? 10年もギルドに勤めてる? じゃヒルダさん、見た目より結構歳いってる? なんて場違いなことをアタシは考えていた。いや、失敬失敬。
「そうなのか? まぁ、確かに倒すのは苦労したが」
「そりゃ当然よ。本来ならAランクの冒険者が10人集まってやっとどうにか相手になるかって代物なんだから。ものによってはSランク相当の国難規模になる程の相手なのよ?」
「ふ~ん、じゃ6人で倒した俺達ってAランク相当の実力があるってことか?」
何気に殿下が言った一言でヒルダさんが目を剝く。
「ちょっと待って! あなた達だけでドラゴンを倒したって言うの!?」
「そうだけど? 聞いてたんじゃなかったのか?」
「いや、ドラゴンを倒したって話は聞いてたけど...王族が居るのにまさかあなた達だけで戦うなんて思わないじゃない...てっきり王国の騎士団が総出で戦ったんだとばかり思ってたわよ...」
あぁ、確かにそう思われても仕方無いかもね~ アタシらだってまさかドラゴンが出てくるなんて思いもしなかったもんね~
「なんてこと...それじゃCランクでも低過ぎじゃないの...」
ヒルダさんが頭を抱えてしまった。
「おっ? それじゃもっと高ランクからのスタートってことか?」
するとヒルダさんは頭を振って、
「いえ、それは無いわ。特別扱いしないって言ったばかりだしね。まずは通常通りのルーティンに従って認定試験を受けて貰う。その間にこの魔石の鑑定含めてギルマスと相談するわ。それで良い?」
「あぁ、分かった。それで構わない」
アタシ達はミノタウロスとリザードマンの分含め、魔石をヒルダさんに一旦預けて、認定試験のダンジョンに向かうことにした。
◇◇◇
馬車に揺られること約1時間、辿り着いた認定試験のダンジョンは、大昔に廃墟となった町の地下に眠っていた古代遺跡がダンジョン化したものらしい。ヒルダさんが言った通り、ダンジョンの入口にはギルド職員らしき男の人が立っていた。
「お待ちしておりました。『精霊の愛し子隊』の皆さんですね?」
「あぁ、そうだ。ここが認定試験のダンジョンの入口か」
「はい。地下5階までの小規模ダンジョンになっています。敵の強さはDランククラスの実力があれば問題無いレベルです。トラップやモンスターハウスなどというギミックもありませんのでご安心を。ボス部屋まで辿り着いた時点でDランクが確定します。更にボスを倒すとCランクになれます。なにかご質問はございますか?」
「いや、特に無い。それじゃ早速行ってくる」
「ご武運を」
アタシ達はダンジョンに入った。さっきのギルド職員さんの話を聞く限り余裕でイケそうだと思ったが...まさかあんな苦戦することになるなんて思いもしなかったよ...
「あぁ、もう! ムカつく! 当たりゃしない!」
「あ、アリシア、落ち着いて...ゴーストに物理攻撃は効かないから」
そう、まずアタシ達の前に現れたのは、体全体が青白く光って、ヒョロヒョロと周りを飛び回るゴーストだ。エリオットの言う通り、透けた体に物理攻撃は効かない。どうやらここはアンデッド系のダンジョンらしい。ということは...
「ヒィィィッッッ!」
「ちょっとスライ! 服を引っ張んないでよ!」
怖がりシルベスターが使い物にならない。アタシの後ろに隠れてしまう。犬耳と尻尾が縮こまっているのが見えるようだよ。全くもって困ったちゃんだな...
「私も怖いですわ~」
「いやアンタ、絶対怖がってないでしょうが!」
シャロン様は態とらしくアタシに絡まってくる。アンタの我が儘ボディが色々当たってきて歩き辛いわ! それとクネクネすんなや!
「お前ら...真面目にやれよな...」
みんなが使い物にならない中、殿下だけは得意の火魔法で次々とゴーストを撃ち落としていく。まるでシューティングゲームのように。こういう時は頼りになるね。
「ハァァァッ! ヤァァァッ!」
アタシの後ろではマリーがスケルトンと戦ってる。どうしても付いてくるって言って聞かなかったんだよね。よっぽどアタシのことが心配らしい。トラウマになっちゃったかな?
ちなみに得物はレイピアだ。街で破落戸と戦った時は素手だったけど、さすがにダンジョンではそういう訳にもいかないよね。
地下に降りるにつれ、敵の種類も変わってきた。
「ウゲェ~! 殴りたくない~! ってか触りたくない~!」
「あ、アリシア、僕がやるから...」
ゾンビやグールやマミーといった腐った系が増えてきた。ここでもアリシアは使い物にならない。まぁ、気持ちは分からんでもないが、前衛ならしっかりしろ。
「ほら、スライ。ゴーストはもういなくなったから、いい加減手を離してよ!」
「無理無理無理~!」
ダメだこりゃ...
「私も無理ですわ~」
「アンタもいい加減にしろっ!」
このポンコツ二人はどうにもならん...
「お前ら...ホントにやる気あんのか? 全く...」
殿下が安定の火魔法で燃やしてくれる。よく燃えるね。
「ハァァァッ! ヤァァァッ!」
マリーも安定して敵を倒してくれる。アリシアと代えようかな?
そんなこんなでやっとこさボス部屋に辿り着いた訳だが、ボスと戦う前にまずは反省会だね。戦闘のリーダーとして、そこはしっかりやらないとね。
「いいですか皆さん、いくら緩いダンジョンだからと言って気合いが足りませんよ! まずはアリシア!」
「はいぃっ!」
「手が汚れるくらいなんですか! 戦いたくないなんて前衛として恥ずかしくないんですか! そんなに相手に触りたくないならエリオットのように武器を持ちなさい!」
「すいませんでしたっ!」
「次にシルベスター!」
「は、はいぃっ...」
「戦えないなら今すぐ帰りなさい! 臆病者は要りません! みんなの迷惑になります!」
特にアタシのね。厳しいことを言うようだけど、これもシルベスターの為だからね。心を鬼にしないとね。
「そ、そんなぁ...」
「最後にシャロン様!」
「申し訳ありませんでしたっ! 真面目にやりますっ!」
アタシはシルベスターにもう一度声を掛ける。
「それでどうするの、シルベスター? 逃げ出す? 戦う?」
「た、戦います!」
「よろしい、ではアリシアに代わって前衛に入りなさい」
「えぇっ!?」
「なにか?」
「い、いえ、なんでもありません...」
「では行きますよ?」
アタシは全員を見回しながらボス部屋の扉を開けた。
ボス部屋は約50m四方の広い部屋になっていた。部屋の奥に玉座があり、大きな椅子に座っているのは綺羅びやかな衣装に身を包んだ骸骨、スケルトンキングだった。体に比べて頭が異常に大きい。2m以上あるんではなかろうか。
スケルトンキングが立ち上がり歯をカタカタ鳴らすと、周りの土の中から手に剣や槍を持ったスケルトン兵士がわらわらと湧いてきた。
「ちょうどいい、ストレス溜まっている人もいるでしょうから、少し運動しましょうか」
アタシも含めてね。
「ウォリャァッ!」「オーッホホホッ!」
女性陣が嬉々として攻撃すれば、
「セイッ!」「ハァッ!」
男性陣が黙々と蹴散らし、
「ハァァァッ! ヤァァァッ!」
マリーが粛々と斬り刻む。
アタシも杖でスケルトン兵士を叩き回しながら、中々動こうとしないシルベスターの背中を思いっ切り押した。愛の鞭ってヤツだ。シルベスター、悪く思うなよ。
「ほらスライ、トドメを刺せ!」
シルベスターをスケルトンキングの前に押し出す。スケルトンキングが玉座から下りて近付いてきた。
「ヒィィィッッッ! く、来るなぁ~!」
腰が引けながらもシルベスターが、オーバーキルとも思える火魔法でスケルトンキングを燃やした。
ふぅ~ やっと終わったね。
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